しばらく動かしていなかったエンジンの始動までは無事に辿り着いたとしても、喜んで試運転へ出掛けてはいけない。試運転前には、まだまだやらなくてはいけない点検やメンテナンス項目が数多くあるはずだ。ここでは、上限まで入っているから「はいOKです!!」では無い、エンジンオイルとオイルフィルター交換作業を実践してみよう。


オイル交換前の前に購入しておくべき「必須部品」が必ずある

オイル交換時にはオイルエレメントや各種ガスケット、Oリングなどを用意しなくてはいけないが、V-MAXの純正パーツリストを見ると、初代シリーズは「ろ紙式エレメント」だったのに対し、後期モデルではネジ込みの「カートリッジフィルター」を採用していた。

V-MAXに限らずサンメカオーナーなら、所有モデルの型式や年式に合致したパーツリストやサービスマニュアルを所有しておきたいものである。原本ではなくコピー版でも間違いなく参考になるはずだ。エンジンオイルには、シンセティックゾイルを利用した。


ドレンプラグ洗浄時には「エンジン内部状況」を察することができる  

エンジン真下のオイルパンにドレンプラグが締め付けられている。エンジン始動後、エンジンが冷えてしまう前にオイルを抜き取るのが良い。オイルが温かければ流動性が良く、スムーズに抜き取ることができる。車載工具のような簡易ツールは使わず、ボックスレンチを利用した。

ドレンボルトを緩めている途中にガスケットワッシャーがエンジン側に残っているのを確認できたら、ガスケットをエンジン側から剥がしてドレンプラグ側に寄せよう。気にせずオイルを抜いてしまい、抜き取り途中にガスケットが落ちてしまうこともある。

マグネットが組み込まれたドレンボルトが使われていて、少なからず鉄粉が吸い寄せられていた。ミッションや駆動系にトラブルが発生すると、鉄粉や落下した金属バリがマグネットへ吸い寄せられる。ひとつの目安になるのでマグネットドレンは便利だ。

ろ紙式大型フィルターを使う初代V-MAXシリーズ 

オイルフィルターはクランクケース前方下に取り付けられている。この車両にはオイルクーラーバイパスが組み込まれているため、長いボルトで締め付けられていた。ボルトが長くエレメントケースとフレームブレースのクリアランスがギリギリだった。

締め付けボルトの一部が長かったので、想像以上にフィルターケースの取り外しが大変だった。脱着が大変だったからだと思うが、フィルターケースの冷却フィンを削った上で、取り付けられていた。熱対策が重要なモデルなのだろう。


スペース的にギリギリな上、長い締め付けボルトの精度が悪くフィルターケースの脱着が大変だった。ボルトの一部にはバリが発生していたため、ヤスリで削って修正した。

フィルターケース内が汚れていたのでパーツクリーナーでしっかり洗浄した。Oリング溝部分も洗浄し、セット座面が歪んでいないか目視で状況を確認した。


ガスケットのOリングは交換必須部品。オイルフィルターのセットも正しくかつ確実に

Oリングをセットする際には、締め付け時に噛み込んでしまわないように、グリスを若干塗布しておくのが良い。カートリッジ式オイルフィルターの場合は、ガスケットへのグリス塗布が必須だ。

フィルターケースの下にオイルクーラー用アダプターを組み込むためのスペースを残し、ボルトが長くなっている。ネジ山にバリが出ていたときはボルトの脱着が渋かったが、バリ除去後は至極スムーズ。


オイル注入時には、一気に上限まで入れないのが基本  

オイルクーラーレスならフィルターケースの脱着は容易なのだが……。エンジンオイルはオイルジョッキで給油しよう。オイルレベルの覗き窓があるときには、レベル範囲の半分程度まで注入しよう。

エンジン始動後、しばらくアイドリングさせた後にエンジン停止し、エンジンオイルが落下した頃合いにオイルレベルを確認しよう。Fullレベル手前まで注入して約3.8リットル入った。レベル調整時は車体を直立にしよう。


POINT
  • ポイント1・オイル交換時にはエンジンオイルの事前購入だけではなく、関連部品の購入も忘れずに行おう。 
  • ポイント2・ドレンボルトのガスケットは複数種類のサイズを常時在庫しておくとイザというときに便利
  • ポイント3・エンジンオイルの注入時には、一気にオイル注入せず、最初は8割程度注入してエンジン始動。最後にレベル合わせを行おう 

実走行距離が短いから「オイル交換はまだまだ先で大丈夫!!」なんて考えてしまうことがあるが、仮に、オイル交換後、ほぼ未走行だったとしても、一定期間を経過している場合は、エンジンオイルを交換するように心掛けよう。湿気が少ない場所に保管していたつもりでも、想像以上に水分を寄せてしまうのがエンジンなのだ。保管場所のコンディションが悪いと、エンジン始動直後にマフラーから水蒸気が噴き出し、オイルフィラーを開けてみたら、乳化したオイル=エマルジョンがべっとり付着している例も多い。このV‐MAXでは、メンテナンス前にオイルレベルのみ確認し、エンジン始動&若干の暖気後にエンジンオイルを抜き取った。オイルエレメントも交換したが、オイルクーラー対応のロングボルトのコンディションが悪く、エレメントケースの脱着が想定外に大変な作業だった。原因は、ボルトに発生していたバリだった。今回は、バリ取りのみで問題解決できたが、締め付けトルクが強過ぎるとボルトが歪んで抜けなくなってしまうケースも考えられるので、今後は注意すべき部分だろう。

エンジンオイル交換には、スーパーゾイル成分が添加されている100%化学合成「シンセティックゾイル10W-40」を利用した。金属表面改質効果によってフリクションロスを低減し、金属同士の擦れ合いを滑らかにすることで、メカニカルノイズを低減するのが特徴のエンジンオイルである。しばらく乗り込んだエンジンに初めてスーパーゾイルを添加すると、エンジンオイルの汚れ方がいつもより早く感じられるが、これは金属摩擦によって金属表面が改質されつつある証拠でもある。次のオイル交換時期を若干早めることで、エンジンコンディションはさらに改善されるようだ。メカノイズが気になり始めたエンジンには高性能エンジンオイルを利用し、その違いを体感してみるのも経験である。

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