
加速と減速で引っ張られるうちに、ドライブチェーンのたわみは徐々に増えていきます。スイングアームの下あたりでたわみをチェックして、規定範囲を超えていたら調整を行いますが、リアブレーキがディスクブレーキかドラムブレーキかによって、手順が若干異なります。旧車や小型車に多いドラムブレーキ車オーナーは、チェーン調整と同時にリアブレーキの確認も必要です。
乗り方とメンテがチェーンの寿命を決める?
ドライブチェーンメーカーのホームページには、走行500kmごとに洗浄と注油を行うよう推奨されている。チェーンルブを塗布する際は、汚れた上にスプレーしても効果が低いばかりか、砂ぼこりなどを摩耗の原因になる要素を塗り込めてしまう可能性もあるので、先にチェーンクリーナーで洗浄を行う。この時、装着されているチェーンがシールタイプなら、シールチェーン対応のクリーナーを使用すること。
原付から大型車まで、多くのバイクが駆動力の伝達手段としてドライブチェーンを採用しています。このドライブチェーン、ピンとブッシュの組み合わせによって自由に屈曲できるわけですが、このピンとブッシュの隙間にグリスが封入されているか否かでシールチェーンとノンシールチェーンに分類されます。
チェーンの遊びが増える=たわみ量が増えるというのは、ピンとブッシュが摩擦してすり減ることでピン同士の間隔が広がり、結果としてチェーン全体の長さが長くなることを指しています。
さらに金属同士が接触した状態にあるチェーンのローラーと、ローラーが接触するスプロケット間の潤滑や、チェーン側のローラーとブッシュ間の潤滑も、チェーンとスプロケットを長持ちさせるためには重要です。
ドライブスプロケットとドリブンスプロケットとスイングアームピボットの3点の位置関係と、リアサスペンションのストローク量により、機種ごとにチェーンのたわみ量の適正範囲が決められています。ここで紹介する2016年式ヤマハドラッグスター250の場合、サイドスタンドでバイクを止めて前後スプロケットの中央部を約15Nの荷重で上下に動かした時、たわみ量が20~30mmの範囲にあれば正常です。
一般的に走行距離が伸びるほどチェーンのたわみは増えていきますが、ゴーストップが多い、習慣的に加減速を激しく行う、雨天走行後もメンテナンスをせず乗りっぱなしなど、チェーンとの接し方によって伸び方は大きく左右されます。
雨ざらしで真っ赤に錆びたチェーンをシャラシャラと鳴らしながら走っているバイクは、日常的にメンテナンスを行っているバイクより早く、多くたるむのは避けられません。チェーンのたわみが増える=ローラーのピッチが広がることなので、チェーンのピッチに合わせて加工されているスプロケットの摩耗も早く進行します。
チェーンやスプロケットはタイヤやブレーキパッドと同じく消耗部品なので、適切な手入れを行ってもいつかは交換時期がやってきます。ただ、メンテナンスの頻度によって交換までの期間を長くすることはできるので、定期的にチェックした方が良いのは確かです。
- ポイント1・ドライブチェーンには適正なたわみが必要
- ポイント2・メンテナンス次第でチェーンの寿命は延びる
ドラムブレーキ車は何が違う?
ドラッグスターのチェーンアジャスターは、角断面スイングアームでは最も一般的なタイプで、ダブルナットの上側のロックナットを緩めて下側のアジャストナットを回転させる。アクスルシャフトとアジャスターの遊び、アジャスターのプレートとスイングアーム端面の遊びをなくすために、アクスルナット締め付け前にチェーンとスプロケットの間にウエスやドライバーを挟んで引くのも有効。
スイングアームの開口部の端部とチェーンアジャスターの刻み目盛りを左右同じ位置に合わせれば、アクスルシャフトとスイングアームピボットシャフトが平行=リアタイヤが車体中心で真っ直ぐ前を向いた状態にあると判断できる。とはいえスイングアームの開口部や刻み目盛りが本当に左右均等なのか? という疑問も沸いてくる。スイングアームピボットとアクスルシャフトの距離を測定して合わせる方法もある。
汚れたら洗浄して専用のオイルを注油し、規定範囲を超えるたわみ量になったら調整を行います。チェーンのたわみ量の調整とは、簡単にいえばリアタイヤを後ろに引っ張るということです。リアタイヤの中心を貫通するアクスルシャフトは、チェーンアジャスターを介して左右のスイングアームにセットされています(片持ちスイングアームの場合は別)。
チェーンアジャスターにはスイングアームの内側に収まる中子構造のものや、スイングアーム外側にあるもの、カワサキ車に多い丸型のエキセントリックタイプ、トレールモデルに見られるスネイルカムタイプなどいくつかの形式があります。しかしどのタイプも、アクスルシャフト端部のナットを緩めて、スイングアームに対してリアタイヤが前後に自由に動かせる状態を作り、アジャスターを後方に引いてチェーンのたわみを減らし、規定の範囲に収めるという動作は同じです。
そしてこの作業を行う際に重要なのが、リアブレーキの形式です。チェーン調整でリアブレーキ? と思われるかもしれませんが、リアブレーキがドラム式なら忘れてはならない調整があります。
- ポイント1・チェーンの調整機構にはいくつもの種類がある
- ポイント2・ドラムブレーキ車にはディスクブレーキとは異なる作業がある
ブレーキロッドの調整がカギ
ロッド式のドラムブレーキでチェーンのたわみ調整を行ったら、必ずブレーキペダルの遊び調整を行う。アクスルシャフトを後ろに引くと、ブレーキアームはブレーキを掛ける方向に動くので、ロッド後端のアジャストナットを反時計回りに回して緩めてから、ブレーキペダルの遊びが適正になるように調整する。
チェーンのたわみを減らす場合、アクスルシャフトを現状より後方にずらします。この時、当然ですがドラムブレーキのブレーキパネルも後方に移動します。ドラムブレーキのほとんどはブレーキペダルとブレーキアーム間が金属製のロッドでつながっているため、ブレーキパネルが後退するとアームが引かれた状態、つまりリアブレーキが掛かる方向に動いてしまうのです。
ブレーキペダル自体に効き始めまでの遊びがあるので、チェーン調整によってリアブレーキがロックすることは少ないかもしれません。しかしそもそもブレーキペダルの遊びが少ない、チェーンのたわみが大きくアクスルシャフトを多めに後退させるという条件が重なると、場合によってはリアブレーキや引きずったりロックする可能性もないとは言い切れません。少なくとも、調整した分だけペダルの遊びは確実に減少します。
そこで、ドラムブレーキ車でチェーンのたわみを調整した場合、ブレーキペダルの遊び調整も必ず行います。遊びを増やすにはブレーキロッド後端のアジャストナットを反時計回りに回します。逆に遊びを減らしたい時にはナットを時計回りに回します。アジャストナットはブレーキアームピンと噛み合う形状になっているので、ずれないように調整します。
このドラッグスター250の場合、ペダルの遊びは20~30mmです。
たわみ量のチェックと洗浄給油はドライチェーンメンテの必須項目ですが、ドラムブレーキ車のたわみ量調整を行う際は、ブレーキペダルの遊び調整も忘れずに行いましょう。
- ポイント1・ドラムブレーキでチェーンのたわみを減らすとブレーキの遊びも減る
- ポイント2・ブレーキロッドのアジャストナットでペダルの遊びを調整する
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