1984年に登場したヤマハRZV500R。筆者は30年ほど前、ひょんなことから走行500kmほどのものを手に入れ、7万kmほどを走破してきました。特段トラブルなく乗ってきたものの、始動性が著しく悪化。そろそろシリンダーのボーリングが必要かと考え腰上を分解したのですが、この先を考えればクランクシャフトもオーバーホールしたいと考えました。なぜトラブルがあったわけでもないのにそう考えたかといえば、以前RZV500Rの開発者からクランクシャフトの劣化がピストンの焼き付きに関連していると聞いたことがあったからです。2サイクルエンジンのクランクシャフトは、ベアリングを構成部品として含んだ組み立て式となっています。このベアリングは使うほどに劣化していきますが、特にコンロッドの大端部に使われているベアリングとその周囲が傷むとコンロッドにガタが生まれピストンが正規の動きができなくなり、その結果焼き付いてしまうのです。しかしクランクシャフトアッシーはとうの昔に販売終了。分解オーバーホール用の交換部品も設定されており最初に調べた当時は入手可能だったのですが、資金の問題からいつかやろうと思っているうちに絶版に。途方に暮れていたところネットオークションで奇跡的に入手!。後でわかりましたが、これら交換部品は海外で作っているショップがあります。クランクシャフトのオーバーホールは交換部品がないとまずお手上げなので、RZVに限らず国内で見つからなければ海外も探してみるのをおすすめします。前置きが長くなりましたが、ここではかつてホンダの2サイクル車用純正部品製造にも携わり、高い技術と豊富な経験を持つ井上ボーリングにてクランクシャフトの分解組み立てをする工程を、その意義とともに紹介していきます。
オーバーホール前のクランクシャフト

RZV500RのエンジンはV型4気筒形式で、前バンク用、後バンク用それぞれにクランクシャフトを備えた2軸式となっています(モデルと言えるワークスレーサーYZR500も2軸です)。ただそれぞれ役割が異なるので、写真の通り、全く同じものが2本付いているわけではありません。取り出したクランクは汚れがあるものの特段の不具合は認められませんでした。ただクランクシャフト本体を支えるボールベアリング、コンロッド大端部に使われるニードルベアリングが劣化しているのは間違いないでしょう。
交換部品
今回入手したのは、左右コンロッド取付部の内側、左右気筒間で混合気が行き来しないようにする金属製のラビリンスシール、センターベアリング、コンロッドを取り付けるクランクピンが付いたセンターウェブが1つになったクランクサブアッセンブリー(写真上)、コンロッド、大端ベアリング、コンロッドのサイドに入れるスラストワッシャ、クランクシャフトの両端にあるサイドウェブに取り付けるサイドベアリングです。
組み立て式クランクで傷むのはベアリングだけでなく、コンロッドやそれが差し込まれているクランクピンもダメージを受けます。ここにはローラーベアリングが使われていますが、回転体たるローラーがコンロッドおよびクランクピンに直接触れながら作動しています。いうなればコンロッドとクランクピンもベアリングの一部となっているのです。


いずれも丈夫な部品ですが長い間使うと摩耗し、ガタが出てしまいます。そのためクランクピンを含む部品の交換が必要になり、RZVではクランクサブアッセンブリーにそれにあたります。このクランクピン、ざっくりいうと水冷化されたモデルはクランクウェブと一体製造されていますが、それ以前のモデル、例えばカワサキのマッハシリーズやヤマハの空冷RDシリーズであれば別体構造でピンのみの交換が可能で、修理の難易度(部品入手難度)は大きく下がります。クランクピンとコンロッド大端部は通常状態では目視できず、状態の確認はガタの有無で判断します。横方向はそもそもクリアランスが設定され正常でもある程度ガタがあるのが普通なので、チェックすべきは縦方向のガタになります。手で動かしてガタが分かるようならNGといえます。
クランクシャフトの分解
クランクシャフトを分解していきます。
まずサイドベアリングをギロチン式のベアリングセパレーターを使い取り外します。作業を担当していただいた井上ボーリングの小林さんによると、ここの嵌め合いは比較的緩いそうであっけなく抜けました。ただベアリングが焼き付いていたり錆びていると外れにくくなるそうです。
続いてサイドウェブを外します。クランクピンやベアリングに負荷をかけないようサイドウェブで支持する治具を使いつつ、クランクピンを油圧プレスで押し込むとサイドウェブが分離できます。
これでコンロッドと大端ベアリング、スラストワッシャを取り外すことが可能となります。同じ工程を逆側でも行えば1本目の分解は完了。同じ手順でもう1本も分解します。
クランクシャフト中央部は丸ごと入れ替え、再使用するのはサイドウェブだけなので、分解は以上で終了です。再使用するサイドウェブはそのまま組むのではなく、磨いて汚れを落とします。
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