4ストロークエンジン(昔は4サイクルエンジンと呼ばれた)と2ストロークエンジンを比較すると、その構造は大きく異なっている。最大の違いは、4ストエンジンには、シリンダーから上(通称「腰上」)に、吸排気バルブが存在する。過走行によって吸排気バルブのアタリが悪くなるとエンジンコンディションは著しく低下してしまう。

ここでは、悩む前に知っておきたい4ストロークエンジンの調子の善し悪しを判断できる「ヒント」に注目してみよう。

吸排気バルブのシート面は過走行で「減る」

吸排気バルブシートやバルブ側の当たり部分(バルブフェース)が摩耗すると、作動時の密着密閉が悪くなり、混合気や排気ガスの漏れ=リークが発生する。それが原点で圧縮圧力が低下しエンジン不調に陥る。バルブシートの減りが著しいときには、燃焼室側のシートリングの加工製作&入れ換えが必要だ。こんな加工作業を請け負う専門店が、内燃機加工のプロショップだ。

純正サイズより僅かに太いオーバーサイズガイド

70年代以前はメーカー純正部品でオーバーサイズ(外径が太い)バルブガイドを補修部品として扱っている例が多かったが、現在は絶版扱いだったり、高年式エンジンでは補修部品が用意されていない例もある。部品の調達に困ることも実は多い。

そんなときには、内燃機加工のプロショップに相談することで、削り出し製作してくれる。このブロンズガイドは内燃機ショップで削り出し製作された、リン青銅製吸排気バルブガイドだ。

「シートカット」でアタリ形状を修正

分解したシリンダーヘッドを点検し、バルブシートの「アタリ幅」の拡大や段付き摩耗が発生しているような際には、内燃機のプロショップへシートカットを依頼しよう。あまりに減りや変形が酷いときには、シートリングも加工製作&入れ換えが必要不可欠だ。内燃機加工中のシリンダーヘッドはカワサキZ1用。

シリンダーヘッドの燃焼室内に圧入してある吸排気バルブシートが摩耗していたので、バルブシートの入れ換えを内燃機ショップへ依頼した。チューニングエンジンなら、熱伝導や耐摩耗性を考え、好みの材質をチョイスすることができる。

吸排気いずれも鋳鉄製バルブシートに入れ換え、右のインテイク側を先行してシートカットを行った様子。左の排気側は、シートリングを入れ換え(新規圧入)ただけでシートカットは行っていない。このシートカットも、エンジンチューナーからプロショップへ仕様を伝えることで、好みのエンジン仕様に仕上げられる。

長年走らせてきたエンジンは、吸排気バルブのフェース(アタリ面)が摩耗し段差が発生している。このバルブはアタリ部分=フェースを研磨平滑にしてから、このバルブ寸法に合せてシートカット。アタリ幅は依頼者から1.0mmで指定されたため、寸法通り均一に仕上げられている様子が理解できる。

POINT

  • ポイント1・4ストエンジンを分解した時には、必ずバルブとシートのアタリ具合を確認しよう。
  • ポイント2・通常レベルの摩耗や偏りアタリなら、シートカットとバルブフェース研磨で対応できる。
  • ポイント3・シートカットを依頼する際にはバルブフェースの研磨も同時に依頼する。
  • ポイント4・バルブステム(シャフト軸部分)の摺動によってバルブガイド孔にガタが出ているときにはバルブガイド交換も同時に依頼。
  • ポイント5・車両の使用状況によって交換部品の材質を選ぶこともできる。熱伝導性や自己潤滑性を高められる素材のチョイスも可能だ。

4ストエンジンを分解する機会があったら、必ず確認点検しておきたいのが「吸排気バルブのコンディション」である。これらのバルブ=弁の開閉によって、混合気を吸入。爆発燃焼ガスを排気するのが4ストロークエンジンの特徴である。2ストロークエンジンの場合は、ピストンの作動=往復運動が、バルブの代わりとなって機能が成立している。

4ストロークエンジンの場合は、この吸排気バルブのコンディションが何よりも重要だ。例えば、長年走らせ、走行距離が伸びてくると、硬い金属部品とは言え、各部は摩耗してしまう。高性能エンジンオイルを利用することで、この摩耗は減らすこともできる。しかし、すべてのエンジンがそのような環境下で稼働しているとは限らない。

金属同士が擦れ合う部分=摺動部に注目してみよう。吸排気バルブ周辺の場合は、バルブステムとバルブガイド、バルブフェースとバルブシート、さらにバルブを押し込むタペットと摺動するバルブステムの頂上平面だ。バルブステムとガイドの内径には、そもそもクリアランス(僅かなガタ)がある。確認するときには洗浄液でパーツを脱脂し、乾燥状態で点検することで、減り具合を指先に感じることができる。ベテランメカニックになれば、指先に感じるガタによって「まだ大丈夫!!」だとか「もう限界……」などなど、判断できるようになる。

バルブガイドの摩耗が進むと内径が拡大し、バルブステムが「すりこぎ状態」になって作動する。こうなるとバルブの傘のアタリ面=バルブフェースのアタリに影響が出て、アタリ幅が拡がり、アタリの偏りによって摩耗も始まる。つまり、バルブシートのアタリが悪いときには、ガイドのコンディションも疑い、逆に、バルブガイドのガタが大きいと感じた時には、バルブシートのアタリも確認するように心掛けるとよい。

パーツコンディションの悪化を修理再生することで、エンジンコンディションは確実に良くなる。そんな修理の際に、力強い味方となるのが内燃機加工のプロショップである。「内燃機加工とは?」、エンジンパーツの修理再生を生業にしているエンジン加工や修理のプロフェッショナルである。レーシングエンジンに限らす、バルブガイドやバルブシートもマテリアル=素材にこだわることで、その違いを走りの中から得ることができる。

市販車の場合は、コストやライフを最優先して素材をチョイスするケースが多いが、金属素材には特徴があり、バイクの使い方や走り方によってマテリアルは変更しても良いものだ。将来的にエンジン修理を実践する際には、このような部分にも気を使い、快調エンジンを目指してみよう。

【撮影協力:井上ボーリング

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