プラスビスに比べるとナメづらいと言われている六角穴付きボルト(キャップボルト、ヘキサゴンボルト)ですが、どんな作業でも「絶対」はありません。何かの拍子に六角穴をなめてしまうと、かえって面倒になることもあります。そんな時に重宝するのがボルトツイスター(エキストラクター)です。失敗しないよう作業するのが前提ですが、まさかの事態に備えておくのは有効です。

「普通に作業したのにナメた……」そんなことが本当にあるの!?

油断していたせいで「ズルッ」となめてしまった六角穴。そもそも穴が浅めだったのに、六角レンチを奥まで差し込まずに回そうとしたため、角がなめてしまったようだ。

私たちがさまざまなトラブルやアクシデントに遭遇する場合、“突然”や“予期せず”という前置詞を付けがちです。「フロントブレーキを握ったら突然スリップダウンした」とか「いつも通りボルトを緩めようとしたら予期せず折れた」など、こちら側には何の非もないのに災難が降り掛かったと表現するのではないでしょうか。
しかしそこには多くの場合、路面がウェット状態だったりボルトが錆びているなど危険を知らせる予兆があるものです。そのアラートに気付かず、あるいは強行に進んだ結果が重大な結果につながることは少なくありません。
キャップボルト、ヘキサゴンボルトとも呼ばれる六角穴付きボルトは、プラスビスのようにドライバーを回すと工具自体が浮き上がろうとするカムアウトは発生せず、ナメづらいとされています。
しかし六角穴に対する工具の掛かりが浅かったり、斜めに挿入した状態で回そうとすると六角穴の内壁を損傷して工具が空回りしてしまうトラブルが発生することがあります。L字型の六角レンチには軸が傾いた状態でも回せるボールポイントタイプの製品があり、これも過信すると六角穴を潰す要因となります。
なめづらい六角穴付きボルトでもレンチやソケットビットを深く差し込み、軸を傾けないように力を加えることが重要です。

低頭タイプやボタンヘッドタイプの六角穴付きボルトは要注意

L字型やビットなど、六角穴付きボルトを回すための工具をいくつか集めてみたが、一度なめてしまった六角穴には食いつかず滑るばかり。

L字型やビットなど、六角穴付きボルトを回すための工具をいくつか集めてみたが、一度なめてしまった六角穴には食いつかず滑るばかり。

六角穴付きボルトで取り扱いに注意が必要なのは、低頭タイプやボタンヘッドタイプと呼ばれるボルトです。
六角頭ボルトやプラスビスは工具で回す頭部分が出っ張っているため、スパナやドライバーがナメてもロッキングプライヤーで掴んで回せる可能性がありますが、低頭タイプやボタンヘッドはプライヤーで掴みづらくうまく回せません。
また頭部分がある程度大きければタガネを食い込ませて回すきっかけを作ることもできますが、ボルトのサイズや取り付け場所によってはタガネやハンマーを使えないこともあります。
最悪なのはボルトの取り付け面がフラットになってしまう皿ボルトの場合です。ブレーキマスターシリンダーキャップの固定に使われることが多いプラスの皿ビスも同様ですが、つかみどころがまったくないためプライヤー類は歯が立ちません。

ナメた六角穴に食い込むボルトツイスターがあれば窮地を挽回できる

ソケット工具専門メーカーであるコーケンのボルトツイスターセットRS3129/6-L60。サイズは2(適合ネジ径M5)、3(M6)、4(M8)、6(M10~M12)、8(M14~M16)、10(M18~M20)の6本セット。各サイズ単品購入も可能。

こうした場面で重宝するのがボルトツイスターです。ボルトツイスターという製品名はソケットツール専門メーカーである山下工業研究所(コーケン)の登録商標で、エキストラクターと呼ばれることが多い工具で、ネジ穴の中で折れてしまったボルトや、折れていなくても工具で回せなくなったボルトを除去するための工具です。
ボルトツイスターは反時計回りで進む左ネジで、外したいボルトに開けた下穴に食い込ませて左回しに回すと、ボルトツイスターが食い込んだボルトが緩むという仕組みです。
頭が飛んでしまい軸部しか残っていないボルトに使用する際は、ボルトの中心に下穴を開けるのが難しい場合もあります。しかしナメた六角穴付きボルトの場合は六角穴自体がガイド代わりになるため、比較的容易に下穴を開けることができます。
ラチェットハンドルなどで回すボルトツイスターを機能させるには、ツイスターの先端部分を下穴に食い込ませることが重要です。比較的柔らかいアルミやスチール製ボルトなら、ツイスターを押しつけながら左回しに回せばスクリュー部分が食い込む場合が多いですが、ラチェットハンドルを取り付ける前にハンマーで軽く叩き込むことでよりガッチリ食いつきます。
一方、硬いステンレス製ボルトは下穴に食い込みづらい上に、無理に回すとボルトツイスターが折れてしまうこともあります。純正でステンレスボルトを使用する例はまれですが、アクセサリーの取り付けなどでホームセンターで購入したステンレスボルトを使用する際は注意が必要です。
しかしながら、ボルトツイスターが手元にあるだけで六角穴付きボルトのトラブルへの対処能力が一気に高まるので、工具箱に入れておくことをオススメします。

①ボルトツイスター用の下穴を開けるためセンターポンチでマーキングする。頭が取れて軸だけになったボルトよりもよほど気楽だ。

②抜き取るボルトがM6なのでボルトツイスターは3を使用する。その場合、推奨下穴径はφ3.2~3.5mmとなる。

③ボルトツイスターは先に行くほど細いテーパー形状なので、強度を考慮すれば下穴はなるべく大きい方が良い。だがドリルが太すぎるとボルトを貫通してメネジを傷つけてしまうので要注意。

④下穴にボルトツイスターを挿入して左回りに回すと、スクリュー状の刃が下穴に食い込み緩め方向のトルクが伝わり、ボルトが緩み始める。締め付けトルクが強いわけではないが、一度なめた六角穴は手強い。

⑤ボルトが外れたらボルトツイスターを右回りに回して取り外す。ソケット形状のナットツイスターも便利だが、いざという時にはボルトツイスターも頼りになる。

⑥4個のボタンヘッドボルトのうち、六角穴がなめたのは1箇所だけ。だがその1個を外さないとカバーとステーを分解できないから厄介なのだ。塗装仕上げのカバーに傷をつけることなくボルトが外せたので良かった。

POINT

  • ポイント1・六角穴付きボルトは本来プラスビスよりなめづらい
  • ポイント2・低頭やボタンヘッドの六角穴付きボルトはロッキングプライヤーで掴みづらく六角穴が潰れると取り外しが面倒
  • ポイント3・ボルトツイスターはネジの軸部に食い込ませるため六角穴が潰れたボルトの除去に適している
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