あの地味で色気が無いオリジナルスタイルにもファンがいるとは思いますが、眩しいばかりに明るく輝くBMWの「M」ラインにも、興味を抱いてくださる方が、いるのではないかと思いますが、いかがでしょう……?。スタート地点に辿り着いた直後には、早速エンジン始動にトライしました。スムーズにエンジン始動できたものの、アイドリング中のエンジン下には、2タイプの液体がポトッ、ポトッと……。オイル漏れと冷却水漏れ、いきなり始まりました。しっかり修理していきましょう。

前回

アイドリング中のエンジン内からポトッと滴る液体

エンジン始動後、メインスタンドで直立させ、アイドリングのまま10分程度放置してみた。その後、バイクに近寄りエンジン下の地面を覗き込むと、エンジン前方の穴から緑色の液体が出ている……。当初は冷却水だけかと思ったが……

オイルポンプとウォーターポンプは同一軸上にあり、それぞれのシール部分にはブリーザー通路と言うか、ダメージの様子を窺い知るための通路があり(おそらくエンジン開発者はそう考えたと思います)、そこから緑色の冷却水がポタポタと滴ります。

Kシリーズのメンテナ経験はゼロ。妄想しながら分解開始

エンジン前方、前輪のすぐ後ろにある「出っ張った部品」が、オイルポンプとウォーターポンプのボディ本体のようだ。内部には、メカニカルシールやオイルシールが組み込まれていると思うが、これらのシール不良が水漏れやオイル漏れの原因だろう。

ポンプボディ本体を取り外したら、オイルポンプ室側のシャフトエンドに六角レンチを差し込んで固定し、冷却水インペラ締め付けボルトを取り外す。このインペラシャフト(メインスピンドル)の奥に、冷却水用のメカニカルシールが組み込まれている。

インペラシャフトはサビで凸凹になっている?

インペラを取り外したらポディを万力に挟んで固定し、インペラ側からシャフトを叩いてオイルポンプ側へ抜き取った。駆動ギヤの先端部には小さなOリングがセットされているので、これも交換した。メカニカルシール不良が長かったのか!? シャフトはサビ始めていた。

ボディから抜き取ったポンプギヤシャフトは、メカニカルシール不良が原因で(おそらく)、そのメカニカルシール周辺がサビ始めていた。シャフトギヤを旋盤にチャッキングして、耐水ペーパーの400番でサビ部分を磨き落としてみた。

外国のクライマー製マニュアルを見ながら作業進行したが、2連のポンプボディはおそらく30分もあれば取り外すことができそうな構造である。この整備性は素晴らしいと思うが、冷却水はよく漏れると聞いてます。

初代KシリーズモデルはK1100用にアップデートされていた

対策されたインペラ(冷却水をエンジン内へ巡らせるプロペラの名称)は、鋳物から鈑金プレス部品へと変わり、その変更に合わせて寸法調整を行うカラーが入るようになっている。

分解する前にネット通販で購入しておいた、ひと通りの交換部品。メカニカルシールとオイルシール、Oリングは大小2個入り、これら部品をセットにした個人販売品もあった。メカニカルシールはスペアを持っていたいところだ。

アルミ部品で形成されている冷却水(LLC)をシールするメカニカルシール。肝心のシール部分は、減りにくいカーボングラファイトなどが利用されている様子だ。専用工具が無いのでソケットレンチを利用し、押し込もうと思う。

初めての作業かつ専用工具が無いので慎重に進行

ポンプボディからパーツを取り外したら各部を洗浄しよう。シールが収まる部分に液状ガスケットを薄く塗布して、オイルシール、メカニカルシールの順に、万力+ソケットレンチのコマで低圧入した。

オイルシール(リップ向きに注意)とメカニカルシールを圧入したら、ポンプギヤをオイルポンプ室側から差し込み復元した。メカニカルシールは、低圧入式なので、ソケットなどで飛び出しを押さえよう。

共通部品化された鉄板プレス構造のインペラは、このカラーがセットにならないと物理的に寸法がアンマッチになってしまう。シャフトへカラーをセットしてからインペラをセットする。

インペラを固定するフランジボルトは、ネジ山をクリーニングしてからネジロック剤を塗布して緩みを防止しよう。ここでは、ロックタイトの固形タイプの赤色を利用した。固形タイプは使い勝手が良い。

六角レンチを万力に固定した状態でポンプシャフトに差し込み、その状態を保ちながらインペラ固定ボルトをしっかり締め付ける。この部分はガッチリ固定しよう。締め付けトルク指示は35Nmとなっている。

大きなオレンジ色のOリングは冷却水通路用だ。小さなOリングは、ピニオンギヤシャフト端末に組み込み、オイルリークを遮断する部品である。これらのOリングも新品部品に必ず交換しよう。

LLCとエンジンオイルを注入して、いよいよエンジン始動!

ポンプボディを復元する際には、締め付け座をクリーニングしてから液状ガスケットを塗布しよう。冷却水用のOリングも忘れずに交換し、すべてを復元したらLLCを投入。まずは口切一杯まで注入。

レベル窓中央までオイル注入したらエンジン始動。オイル漏れや水漏れを確認し、暖機完了後にエンジンを止めて冷却水量は再確認。エアー嚙みで完全に流れていないことがあるので、不足時は必ず追加注入しよう。

POINT

  • バイクを美しく仕上げるポイント・通称「まっくろくろ助」と呼ばれ、地味かつ薄汚い印象しか無かった不人気中古車のBMW K75Sだったが、主要部品を交換することなく外装や足周り部品をリペインしたことで、以前の印象とは様変わりすることができた。現在の通称名はBMW K75S type〝M″といったところだろう。ここから先は、まともに走らせるためのメンテナンスにいよいよ取り掛かります。

ホイールペイントの仕上がり時には、タイヤ交換を実践したKナナゴー。そのタイヤ交換時に気になったのは「Kシリーズ用のタイヤサイズ」に合わせた製品が、しっかりラインナップされていることだった。BMWの故郷、ヨーロッパでも、同モデル用タイヤサイズは需要があるようで、ミシュランがロードクラシックシリーズに、Kシリーズの適合サイズをラインナップしている。フロントには110/80B-18(58V)、リヤには130/90B-17(63V)を採用する。Vレンジなのが嬉しかった。それにも増して、同社タイヤ比較で、ウエットグリップ性能が以前のシリーズと比べて50%も向上しているらしい。
ツーリングファンなら誰もが嬉しいタイヤである。自分はまだツーリングに出掛ける余裕がないが、先日は、type〝M″仕様になってから、近所を10数キロ走った中で、様々な印象を得ることができた。ステアリング操作時に、低速域でも切れ込みなどのクセが無く、ハンドリングは極めてニュートラル。ブレーキング時の安心感も高かった。今後は、高速走行やのんびりツーリングで、気持ち良さを味わいたいと思っている。

さて、ここでは試運転を前に発生した、冷却水漏れとオイル漏れを「元から断った」、メンテナンスの様子をリポートした。Kシリーズを所有する先輩ライダーなら、すでに経験済みのトラブルだと思いますが、ウォーターポンプとオイルポンプが背中合わせにレイアウトされているため、メカニカルシールの分解メンテナンスは、想像していた以上に楽であり簡単でもあった。オイルシールには向きがあるので、そのあたりだけは要注意だと思います。

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