消費しながらも充電を繰り返すバッテリーは、満充電に近い状態を如何に保つかが「長寿命へのカギを握っている」様子だ。逆説的には、大きな放電でバッテリーの体力を低下させてから充電を行うようなサイクルを繰り返すと、バッテリー寿命を著しく低下させてしまうのが、昔ながらの開放型バッテリーらしい。そんなバッテリー特有の症状や特性を理解することで、何故、新品バッテリーに交換しても「短命に終わってしまうのか……」などなど、薄っすらと見えてくるかのようでもあります。

復元時を考えながらバッテリーを取り外そう

V-MAXに限ったことではなく、バッテリー周辺には様々な部品や配線が寄り添っている。V-MAXではシート下の各種配線の下にバッテリーがマウントされている。バッテリーを取り外すことばかり考えるのではなく、バッテリー周辺の配線取り回しを復元できるように記憶しながら作業進行しよう。元通りに復元したつもりなのに、配線が挟まり トラブルを誘発することも考えられる。

ブリーザーチューブの溶着や焼けつぶれは「トラブルの源」

このV-MAXのバッテリーはブリーザーチューブの取り回しが悪く、大気開放側がマフラーに触れて熱で溶けてしまい、プリーザー通路が閉じかけていた。つまりガス化したバッテリー液が大気開放しにくい状況だったのだ。仮に、バッテリーとホースの接続部が抜けなくなってしまうと、行き場を失ったガスによりバッテリーが膨張し、最悪で破裂させてしまうトラブルもある。それが引火原因となって、バイクが燃えてしまっという例もある。

交換直後から体力低下が激しかった新品バッテリー 

始動性が悪くなった頃に新品バッテリーへ交換していたが、想定外の短命に終わってしまったようだ。なかなかエンジン始動できないので、セルを回す時間が長くなり、バッテリーが大きく放電してしまった。仕方ないのでバッテリーチャージャーで充電……。その繰り返しによって、バッテリー寿命が大きく低下してしまったようだ。取り外したバッテリーをしっかり充電した後に、比重計でコンディションを測定しても、黄色⇔赤色エリアに液面があった。満充電で気温20℃における比重は1.280というデータだが、まったく及ばない状況だった。

開放型新品バッテリーへの液入れ時は「取説」をしっかり読もう

開放型バッテリーをセットアップする時には(最近はセットアップ済みバッテリーの販売が圧倒的に多いが、自身でセットアップする商品もある)、まずはブリーザーキャップを取り外してから各セルのキャップを外して、電解液をロアレベルまで注入する。すべてロアレベルまで注入したら、少しずつ液を追加注入し、各セルともにアッパーレベルまで注入する。アッパーレベルになったらセルキャップをしない完全開放状態で20~30分間放置し、その後、規定の電流で補充電を行おう。バッテリーターミナルナットの下に細いビニールチューブをカットして差し込むことで、ターミナルボルトが締め付けやすくなり作業性が高まる。

POINT

  • ポイント1・車体からバッテリーを取り外す時には「周囲の配線取り回しやレイアウトを携帯撮影」しておくと忘れにくい 
  • ポイント2・開放型バッテリーは、無負荷時の電圧測定だけではなく、バッテリー液の比重も確認してみよう
  • ポイント3・バッテリーの脱着を容易にするターミナルボルト&ナットの取り付けにも気を配ってみよう 

大型モデルの不動車エンジンを始動するためには、健康かつ元気なバッテリーを搭載しなくてはいけない。特に、大型モデルの場合は、大きなピストンや重いクランクシャフトを元気良く回すセルモーターか重要な役割を果たしている。力強くモーターを回すためには安定した電圧を確保するのと同時に、始動時の負荷=電圧降下に耐えるバッテリー性能でなくてはいけない。仮に、セルモーターやバッテリーに異常が無かったとしても、クランクシャフトを回すワンウェイクラッチ機能にダメージがあると、セルモーターが元気良く回ったとしても、ワンウェイクラッチが効率良く動力伝達できず=滑ってしまうことで、クランクシャフトは力強く回らず、エンジン始動が困難になってしまう。

後々判明したが、このV-MAXエンジンは、スタータークラッチにダメージがあった。そのため、新品バッテリーへ交換しても、始動時にセルモーターを回し続けてしまうことが多く(それでもタイミングが噛み合うとエンジン始動できてしまった)、結果的にはバッテリー体力を著しく低下させてしまっていた。搭載されていたバッテリーを確認すると、充電後の端子電圧は確かに回復していた(見かけ上では)。しかし、車載後にヘッドライトを点灯すると、力強い明るさを得られず、端子電圧もあっという間に低下していると判明。自動車用の大型バッテリーからブースターケーブルで引き込みセル始動すると、明らかにスタータークラッチから異音が発生し、空滑りしている様子を伺い知ることができた。その段階で、スタータークラッチに異常があると判断し、ワンウェイメカニズムの分解点検に取り掛かった。新品バッテリーを搭載しても、始動系メカニズムに不調箇所があっては、まともな始動性を得られずはずがない。逆に、スターターワンウェイのメカニズムが正常でも、元気がないバッテリーを使い続けてエンジン始動しようとすると、知らず知らずのあいだに今度はスターターワンウェイクラッチへ、ダメージをあたえてしまうこともあるので要注意である。

また今回のメンテナンスでは、ブリーザーパイプの開放側が、マフラー熱で溶着して溶け、ブリーザー機能を果たしきれていないこともわかった。ブリーザーパイプを持つ開放型バッテリーは、充電中に発生するガスをスムーズに大気開放しなくてはいけないが、ブリーザー回路が遮断されてしまうと、ガスの抜け先が無くなり、最悪でバッテリーが破裂する可能性もある。バッテリー用のブリーザーパイプは、このような事態になってもガスが抜けるように、ホースの途中にカッターナイフの刃を突き刺したような切り込みがある。今回のようにホース途中で通路が閉じてしまうと、この切れ目をバルブ代わりにガスを大気開放する仕組みになっている。したがって、一般のビニールチューブをブリーザーパイプとして利用する時には、カッターナイフの刃を突き刺し、バルブ機能を必ず設けなくてはいけない。また、バッテリー側のブリーザー通路に差し込んだホースは、結束バンドなどで抜け防止固定するのは絶対にやめよう。ガスの抜けが悪いときに、バンド固定されているとホースそのものが吹き抜けず、バッテリー内圧が高まってしまう原因になるからだ。

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