
気が付けば放置プレーが続いてしまい、いつしか不動車状態に……。特に、近年の日本は、冬場ばかりではなく、夏場にも乗れない、走れないケースが多いですよね。あまりにもクソ暑過ぎて、乗りたくても「乗れない!!」ことが多い!! 放置状況がしばらく続いたバイクを再び走らせたいときや、放置されていたバイクを購入したときなどは、何より重要なのが復活へ向けたメンテナンスである。軽整備で復活できるコンディションならラッキーだが、実際のところ、簡単ではないケースが多かったりする。ここでは、車検切れから数年、エンジン始動することも無くガレージ内で放置されていたヤマハV-MAXの復活へ向けた具体的メンテナンスの様子をリポートしよう。まずは現状把握とオーナーさんへの聞き込み調査から開始した。
目次
走行距離うんぬんではなく、まずは車両現物を確認しよう
メーター文字盤にキロ表示があるものの、メイン表示が「マイル」のスピードメーターは、積算計の表示も当然ながらマイル表示なので、22255.5×1.6、つまり、メーター表示を信じた走行距離は35608.96キロメートルに換算することができる。果たして、3.5万キロの走行距離で、しっかりメンテナンスなされてきたのか!? V-MAXのようなパワーマシンには、持病のような箇所もあると思うが、果たして、スムーズに公道復帰できるレベルになるのだろうか?肝心のバッテリーは、液が干上がることなく残っていたが、充電器を接続しても今ひとつのコンディションだった。昔ながらの比重計でバッテリー液を確認したが、完全にレッドエリアだった。
油圧ブレーキや油圧クラッチ周りも要メンテナンス
放置状況が良くなかったバイクを移動させた際に、ブレーキレバーを握ったとたんに、車体がピクリとも動かなくなってしまうことがある。これはブレーキレバーでマスターシリンダーを押し込んだことによるブレーキパーツの固着が原因である。例えば、キャリパーピストンの汚れやサビがピストンシールに食い込み作動不良。マスターピストンの押し込みによるゴミの噛み込み=固着なども考えられる。今回は、前後ブレーキとも固着に至らず、ローターの引き摺り程度の症状なので、分解洗浄とブレーキフルードの入れ替えで復帰できそうな気配だ。実践メンテナンスしてみないと明確な判定ははできないし、スムーズに動くようになったとしても、フルード漏れが発生する可能性はある。
整備書SMやパーツリストPLがあれば安心できる
様々なメンテナンスデータが明記されているメーカー純正サービスマニュアルがあるのはありがたい。大切な愛車と末永く付き合っていきたいと考える時には、カスカタムパーツやドレスアップパーツを購入する以前に、メーカー純正サービスマニュアルとパーツリストは手元に持っていたい。適合年式や型式なら尚良いだろう。特に、旧車と末永く付き合っていこうと考えた時には、なによりもパーツリスト(PL)とサービスマニュアル(SM)は重要アイテムとなる。
最低限交換しておきたいパーツをオーダー。さらに……
オーナーさんにお話しを伺うと、車検切れ寸前まで普通に走行していたが、中古車購入してから「特に部品交換していません……」とのことだったので、交換しておきたいエアーフィルター、オイルフィルター、ガソリンフィルターの3フィルターはあらかじめ購入しておいた。そして、メンテナンスを進めていくうちにスタータークラッチの滑りがひどく、エンジン始動に難ありと判断できた。スターターワンウェイ機能を分解すると……。補修部品を通常購入できて良かった!! 詳細は追ってリポート致します。
- ポイント1・走行距離も大切だが、現車現実に目を向けて不具合箇所が無いか目視確認しよう
- ポイント2・ 同じモデルに長年乗っている知り合いがいるときには、これまでの所有期間中の出来事などなど、お話しを聞いてみよう
- ポイント3・逆輸入車や外車の場合は、部品の入手方法や段取りを明確にしておこう。手元にPL/SMがあると大変便利だ。WEB版で閲覧可能なケースもある
バイク仲間からの相談で、ヤマハV-MAXの初代シリーズを預かり、車検取得できるコンディションまでのメンテナンスを依頼された。車検切れのままガレージ内に放置され、その後1年以上が経過しているそうだ。オーナーさんにお話しを伺うと、車検切れまでは好調に走っていたそうだが、ある日、セルモーターが空回りするような症状が出始め、エンジンの始動性が悪くなったそうだ。そうこうしているうちに車検切れになってしまい、そのまま現状に至ってしまったそうだ。露天保管や軒下保管+車体カバーなどではなく、ガレージ空間で毛布を掛けられ仕舞われていたのはラッキーだった。仮に、保管環境が悪い中で1年以上経過してしまうと、ブレーキの作動性が低下し、ブレーキレバーを握ったとたんにホイールロック……と言ったことも起こる。小型車ならともかく、大型車の中でも、特に重量車であるV-MAXなので、ガレージから引っ張り出す時には、恐る恐るブレーキレバーを握ってみた。幸運にも、前輪はロックしなかったので、次にリヤブレーキペダルを踏み込んでみた。ブレーキの引き摺り感は否めないが、それでも車体は押し歩くことができた。保管環境によってはブレーキに悪影響を及ぼしているケースもあるので、長期不動車を移動するような際には、このような心遣いも必要になることを覚えておこう。
以前に経験したことになりますが、ブレーキレバーを軽く握っただけで前輪がロック……。どうにも動かず仕方なかったので、ボトムケースに締め付けられるキャリパー固定ボルトを抜き取り、ディスクローターから無理やりキャリパーを引き抜いて、ブレーキレスの状態で押し歩いた思い出がある。そうなってしまうと、トランポへの積載はもちろん、トランポから降ろすのにも、一人だけのチカラではどうにもならないことが多い。特に、大型車でそのような状況になってしまうと万事休す。運んだバイクをトランポから降ろすためだけに、近所のバイク仲間を呼び出し手伝っていただいたこともあった。
バイクオーナーさんへの事情聴取で気になったのが「始動性が悪化してきた……」といった内容だった。エンジンコンディションの良し悪し以前に、エンジン始動ができないと、様々なコンディション検証ができないからである。そこでまずはバッテリーコンディションだが、放置期間中に放電が進み、補充電しても状況改善されなかった。また、ある程度充電後にバッテリー液の比重を計測しても、コンディションに改善は見られなかった。そこで自動車からブースターケーブルを引き込み、セルスターターボタンを押すと、元気良くセルモーターは回転するものの、ワンウェイクラッチから異音を発するだけでクランキングしないので、フライホイールを分解すると……。残念ながら、部品交換が必要不可欠なダメージを発見した。大変なメンテナンスになりそうです……(つづく)。
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