ハンドドリルでもボール盤でも、金属素材に穴を開ける際の目印になるとともにドリルの先端が逃げないように行うのがポンチです。先端が尖ったセンターポンチにはハンマーで叩くオーソドックスなタイプや、本体を押しつけるだけで自動で打てるオートマチックタイプがありますが、それとは別にハンマー不要で押しつけることなくマーキングできるバネ式もあり、複数のポンチを持っておくとさまざまな作業場所や作業内容に対応できます。

「穴開けなんて簡単」とナメずにセンターポンチを打つことが重要

パーツを加工したり一品モノを製作したり汎用のアクセサリーを取り付ける際など、バイクいじりの中で部品や素材に穴を開ける機会があります。
手持ちタイプのドリルや作業台に設置する据え置きタイプのボール盤など、穴開け作業では電動工具を使用することが多く、それらを使用する際にはいくつかの注意点もあります。
ハンドドリルの場合は素材に対してドリルを垂直に構え、ハンドドリルでもボール盤でもモーターの回転に吊られて素材が振り回されないようしっかり固定しておくことが重要です。
またそれ以上に重要なのは、決まった場所に正確に穴を開けたい時はもちろん、「だいたいこの辺りで」という大まかな場合でも、狙った位置からドリルの先端が逃げないようにポンチを打っておくことです。
ドリルのサイズが細く、穴を開ける相手がアルミのような柔らかい素材なら、ケガキ針や油性マーカーで描いたバツ印を狙ってドリルを回しながら刃先を何度か当てることできっかけが作れるかもしれません。
しかし鉄のように硬い材料だと、ケガキ針程度の素材表面の傷ではドリルの刃先が滑って狙った位置から外れてしまうこともあります。
そこで重要なのはポンチによる位置決めです。ポンチには先端が平らなピンポンチと、鋭く尖ったセンターポンチがあり、穴開け位置を決める際に使用するのはセンターポンチです。
さらにセンターポンチには、ポンチ本体の後端をハンマーで打撃してマーキングする一般的なマニュアルタイプと、マーカーで印を付けた部分に手で押しつけることで内部のスプリングの働きでマーキングするオートマチックタイプがあります。
穴を開けたい部分の周辺に充分なスペースがあれば、片手でポンチを位置決めしながら、もう一方の手でハンマーを振り下ろすことができます。その一方で作業部分にハンマーを振るだけの余裕がない場面では、ポンチ自体を押しつけることでマーキングできるオートマチックタイプが重宝します。
どちらを使用する場合も、ケガキやマーカーによる照準を外さないようにするため「素材に対してポンチを垂直に保持しながら」「マーキングは一度で決める」ことが重要です。マニュアルタイプの場合、こうした作業に慣れていない人はハンマーを振りかぶる際にポンチ自体が傾いたり的からズレるリスクがあります。押しつけるだけなので簡単そうに思えるオートマチックタイプも、スプリングを押し縮める際に的から滑ってズレてしまうことがあります。
ドリルによる穴開けがメインの作業ですが、ポンチによるマーキングも意外と奥が深く難易度が高いのです。

玉突きの要領でマーキングするハンマーレスポンチが想像以上に使える


穴を開ける部分を示すケガキ線にセンターポンチの先端を当てる。これは従来型のマニュアルタイプでもオートマチックポンチでも同様だ。この際にケガキ線とポンチの先端が見えるように保持することも重要だ。画像は見やすいようにポンチを傾けているが、実際に作業する際は素材に対して垂直を保つよう心がける。


ハンマーで叩く一般的なセンターポンチは、ハンマーを振りかぶってポンチ後部を叩く際に先端がズレてしまうことがままあるが、ハンマーレスタイプは終始挙動が乱れず小さいままなので的を外しづらい利点がある。

ドリルによる穴開け作業の必須アイテムであるセンターポンチには、「ハンマーレス」や「バネ式」と呼ばれるタイプもあります。これはハンマーで打撃したりポンチ自体に体重を掛けてマーキングするオートマチックタイプとは作動原理がまったく異なります。
構造的には2つの金属棒を長い引きスプリングで繋いだような形状で、ここで紹介する製品は両端にセンターポンチを供えた物と、タガネ(チゼル)のような先端を備えた物です。
使い方はケガキやマーカーで印を付けた場所に先端を当てて、もう一方の端を引っ張ってスプリング伸ばして、充分に伸びたところで手を離します。
するとスプリングが縮むと同時にスプリングの内部で2つの金属棒が玉突き状態になり、その衝撃がケガキや油性マーカー部分に当てたポンチの先端に伝わってマーキングされます。
ハンマーを振りかぶって打撃したり、強い押しスプリングの反力で打撃するオートマチックポンチと比べて、僅か数十mmのストロークで金属棒を衝突させるだけのハンマーレスポンチで充分なマーキングができるのか? と疑問に感じるかもしれません。
しかしポンチの先端をケガキ部分に合わせて保持した状態で、スプリングの反対側を引っ張った手を離すと、軽いショックと共に素材にしっかりとマーキングできます。
ハンマーレスセンターポンチの大きな特長は、その名の通り打撃用のハンマーが不要なことです。
穴開け部分の周辺にハンマーを振りかぶって振り下ろせるだけのスペースがあったとしても、叩く瞬間はポンチの後端とハンマーに意識が集中するためポンチが狙いから外れたり、傾いてしまうことがあります。
オートマチックポンチでも、内部のスプリングを押し縮める途中で先端が滑ることがあり、そうした僅かなズレが穴開け作業の正確性を低下させる原因となります。
ハンマーレスセンターポンチの場合、マニュアルタイプのセンターポンチにおけるハンマーはスプリングを介して同一軌道上にあるため叩き損じは絶対になく、その分作業者はケガキや油性マーカーなどによる「的」に集中することができます。
またハンマーレスセンターポンチは引きスプリングのため、押しタイプのスプリングを使用するオートマチックポンチに対して、張力を発生させる過程で的からズレにくいという利点もあります。
もちろん、ハンマーを振りかぶることができないような作業スペースに制約がある場面でも、パチンコのように引っ張って離すだけでしっかりマーキングできるハンマーレスタイプの強みが発揮されます。
メガネレンチやソケットレンチに比べれば、センターポンチを使用する機会はそれほど多くはありません。しかし穴開け作業にとってマーキングはきわめて重要で、センターポンチは必須工具となります。
マニュアルタイプ、オートマチックタイプ、ハンマーレスタイプのセンターポンチには、それぞれに適した作業シーンがあります。どんな状況でも的確にマーキングできるようアイテムを揃えておくと良いでしょう。

POINT

  • ポイント1・ドリルによる穴開け作業では、センターポンチによる事前のマーキングが不可欠
  • ポイント2・センターポンチにはマニュアルタイプ、オートマチックタイプ、ハンマーレスタイプがある
  • ポイント3・ハンマーレスセンターポンチはケガキ線の的を外しにくく正確にマーキングできる
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