4ストエンジンいじりの入門的モデルで知られるホンダの横型エンジン搭載モデル。スーパーカブに始まり、ダックス、モンキー、シャリィ、モトラ、ジョルカブなどなど、その他にも様々なモデルに搭載されてきたが、ここでは12ボルト仕様になってからのAB27モンキー用シリンダーヘッドの組み立ててみた。部品仕様に違いはあるが、他のモデルでも構造はほぼ同じなので、組み立て作業時の参考にして頂ければと思う。

カーボン除去洗浄とオイル汚れ落とし後の仕上げ洗い

カーボン除去や分解時のオイル汚れを洗い流したら、ロングノズルのパーツクリーナーを利用して、燃焼室内、バルブガイド内はもちろん、オイル通路内などなども徹底的に洗い流し、小さなゴミが残らない状態で組み立て作業に入ろう。作業者の手もしっかり洗うように心掛けよう。

新品部品へ必ず交換したいステムシール

吸排気バルブガイドにはステムシールをセットするが、バルブを抜き取る分解作業を行った時には、新品ステムシールに交換するのが基本である。シールリップが痛むとオイル下がりの原因になるからだ。プライヤーなどでステムシールを摘んでセットすると、シールリップにダメージを与えてしまう恐れがあるため、ステムシールをセットする際には「指先の腹」部分で確実に押し込もう。カチッとはまる感触が伝わってくるはずだ。吸排気バルブをセットする際には、脱脂洗浄状態でそのまま組み込むのではなく、ガイド内部やステム部分に組み立てオイルを塗布して組み込むのが基本中の基本である。こんな際にスプレーオイルは使い勝手が良好だ。バルブスプリング端面の片側にペイントがある場合は、ペイント側を上(リテーナー側)にして組み込もう。AB27系のモンキーエンジンは、シングルバルブスプリングだが、6V時代はダブルスプリング仕様だった。

バルブスプリングリテーナーのセットは慎重に

吸排気バルブのセットアップは、シリンダーヘッドの組み立て作業における、ある意味「ハイライト」でもある。今回は横型エンジン専用のセットアップツールを利用するため、まずは洗浄したリテーナーに、洗浄したコッターを仮組みする。仮組みしたリテーナーをバルブスプリングの上に載せ、その状態を保ちながら専用セットアップツール「バルブコッター装着ツール」を利用する。この専用工具は使い勝手が良好だ。具体的には、組み込むバルブの傘を指先で押し(燃焼室側)、専用ツールをリテーナーに当てながら真っ直ぐにグイッと押し込む。するとスプリングが縮みコッターが食い込むと、カチッと音が聴こえる。

ステムエンドを軽く叩いて落ち着かせる

カチッとハマった感触があったからと言って、100%信用しない方が良い。ここではM8のボルトをステムエンドに押し付け、ハンマーで軽く叩いて衝撃を与え、コッターがしっかり組み込まれていることを確認する。この確認は重要な作業だ。この確認時には、リテーナーに触れたり衝撃を与えず、あくまでステムエンドらみに衝撃を与えるようにしよう。ボルト利用ではなくステム径とほぼ同じサイズ平ポンチで叩くのがベストだ。

カム山摺動部へはモリブデングリスを塗布

吸排気バルブを組み込み、セット状況の確認を終えたら、カムシャフトを組み込む。左右のジャーナルベアリングにオイルを塗布し、指先でベアリングがスムーズに回るか確認しよう。カムホルダーにカムシャフトをセットしたら、カム山部分に二硫化モリブデングリスを薄く塗ろう。モリブデングリスは少量で効果を得られるので、無駄に多く塗らないこと。ロッカーアームをセットしつつ、ロッカーシャフトを押し込む。シャフト片側の内側にはM8サイズのネジ山があるので、組み込み時はM8ボルトでシャフトを保持しながら押し込むのが良い。反対側にはネジが無いので、セット時には向きを間違えないようにしよう。ロッカーシャフトを組み込む際にもモリブデングリスを薄く塗布する。吸排気ロッカーアームがセットできたらサブASSY完了である。エンジンへ組み込むまで、カムやロッカーシャフトが抜けないように保管するが、梱包用ラップを巻き付けておくのも良い。

POINT

  • ポイント1・組み立て前には部品の洗浄と同時に手や指先も洗おう 
  • ポイント2・吸排気バルブの組み立て時にはステムシャフトへのオイル塗布を忘れない
  • ポイント3・ バルブコッターのセットは慎重に行おう。組み込み後はステムエンドを軽く叩き、コッターを落ち着かせよう

排気ガスと一緒に白い煙が噴き出す際は、バルブステムシールの摩耗やピストンリングの摩耗、または、ガスケットの潤滑通路から漏れたエンジンオイルが、燃焼室内へ流れ込んでいる、などなどが考えられる。エンジン組み立て直後から白煙が噴き出すような場合は、ガスケットやOリングのズレや潰れなども考えられるが、ある程度の距離を走っているエンジンの場合は、ピストンリングの摩耗やステムシールリップの摩耗が主な原因だと考えられる。

1980年代中頃以降に登場したホンダ横型エンジン車で、12ボルトバッテリーを搭載したモデルの場合は、吸排気バルブにキャップ型ステムシールを持つが、それ以前のモデルの多くが、排気バルブだけにOリングタイプのステムシールが組み込まれている。いずれにしても、分解メンテナンスを行う際には、燃焼室内に堆積したカーボンをしっかり除去し、各部品を洗浄してから組み立て復元しよう。写真解説のエンジンは、走行距離が浅く各パーツのコンディションが良好だったので、通常洗浄で組み立て復元したが、何らかのトラブルが原因でシリンダーヘッドを分解した際には、以下の内容に注意し、組み立て復元するように心掛けよう。

■バルブシートの当たり確認■
分解洗浄したバルブの傘と燃焼室側シートリング、それぞれの当たる箇所が摩耗していないか?バルブシートの当たり幅が広がっているときには、内燃機加工でバルブフェース研磨とシートカットを行い、すり合わせ加工を行うことで本来の性能を回復することができる。

■バルブステムやバルブガイドの摩耗確認■
さらに過走行なエンジンは、摺動するバルブステムとバルブガイドの内径が摩耗し、ガタが発生していることがある。そうなるとバルブシートの当たりも不規則になってしまうため、摩耗コンディションによっては、新品バルブへの交換と同時に、バルブガイドの交換も必要になる。この内燃機加工を依頼する際には、バルブシートカットと擦り合わせ加工も同時に必要になる。

ピストンリングやステムシールを新品部品へ単純交換したところで、上記の問題が発生しているようでは、その場凌ぎの部品交換になってしまう可能性が大きいので、せっかくシリンダーヘッドを分解したときには、吸排気バルブ周りのコンディションを必ず点検し、必要に応じて対処するように心掛けよう。

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