BMWといえば「Mライン」がスポーツイメージの象徴である。不人気中古車で極めて地味な存在だった1987年モデルのK75Sをベースに、磨き込みとペイント仕上げで、どれほどまで美しく仕上がるのか!?そんなテーマにチャレンジしているのがこの企画である。徐々に仕上がってきた様子や、どれほど地味なベース車両だったのかは、この企画のバックナンバーを振り返ってご確認いただければ幸いだ。そんな美しいモデルへの仕上がりに欠かせない存在と言えるのが、ダブルシートの仕上がりだ。「M」イメージで仕上げるのなら、赤や青、もしくはシックな黒のダブルシートに貼り換えれば!? と悩みましたが……

完成形はこのようなイメージ。いろいろありました……

単純な表皮の張り替えだけではなく、ぼくの大柄な体格に合わせたシート高とシート幅、シートの前方形状を見直し、アンコ抜きではなく「アンコ形状作り」と「アンコ増し」を済ませてからプロショップへ張り替え依頼したダブルシート。もちろん、一筋縄では終わりませんでした。

シート前方の「隙間」は明らかにデザインミス!?

パールホワイトベースにMラインで仕上げた外装に純正シートを組み合わせると、薄汚さがとにかく目立ってしまった。この段階でシートの貼り換えは必須だと判断。さらに、シート前方のガソリンタンクへせり上がる部分が、オフロードモデルのように長い設計となっているため、使い込みによる経年劣化でシートボトムを含めたシート本体とタンクスキンとの間に、指先が入ってしまう……。シート張り替え時には、このようなカッコ悪さも修正したいと思う。このようなデザインでなければ、変形しないと思うが。

シート張り替えの依頼前にDIYで形状変更【その1】

↑↑↑ ハンダナイフでは思い通りにカットできないFRPボトム。結局はカンナを利用した ↑↑↑

まずはシートボトム形状を変更しようと作業を開始した。当初は、PPもしくはPE樹脂による成型ボトムかと思ったが、どうやら80年代のイタリアンバイク用外装部品にも多かった、インジェクション成型による「FRP製ボトム」を採用していた。したがって、ボトム硬度は想像以上だった。ポリ系樹脂ならハンダナイフで出っ張り部分をカットできると思っていたが、思い通りにはできなかった。そこで、大工道具のカンナでスムーズかつ美しくカット後に、ベルトサンダーで形状修正。それからアンコスポンジ先端の成形を行った。

シート張り替えの依頼前にDIYで形状変更【その2】

大柄なドイツの人がデザインしたとは思えないライディングポジション。最初から大きくアンコ抜きされているのがノーマルシートデザインだ。必要十分以上の足つき性なので、アンコを削って平面にしてから硬いウレタンスポンジでアンコ増しすることにした。ステン製の大根おろし金をベースにフチをカットして、当たり面にRを付けると、シートのあんこ加工をスムーズに行うことができる。

追加アンコでクッション性を高めてみたが……

改造おろし金で標準シート座を平面にしてから、硬めのウレタンゴムスポンジを、ゴム系接着剤G17を利用し接着してからカッターで粗削り後、さらにおろし金で形状を成型した。タンクとのつなぎを埋めるエクステンションを追加してみたが、形状通りにシート表皮を貼り込んでいただけなかった。指示書の申し送りが十分ではなく、ご理解頂けなかったのか……。

張り替え完了で納品されたシートを追加変更

プロショップに依頼した赤シートが完成してきたが、タンクとの隙間を埋める部分が思い通りの貼り込み形状で仕上がってこなかった。もう少しわかりやすい申し送りをするべきだった。なかなか思い通りには行きませんね…… 

追加アンコ+再張り込みで完成

仕上がったはずのシートをモデルクリエイトマキシへ持ち込み、状況を説明した。まずは先端に貼り込まれた表皮を剥がしてから、アンコ形状を再度修正し、剥がした表皮を貼り込み直してみた。しかし、貼り込み寸法が合わずに当然ながら苦戦した。これは致し方ないことだ。それでもマキシ板橋さんの踏ん張りで、現状最善の仕上がりを得ることができた。

取材協力/モデルクリエイトマキシ

POINT

  • バイクを美しく仕上げるポイント・バイクの美しさを決定づける部品と言えば、美しく磨かれ、仕上げられている外装パーツになるが、そんな外装部品のひとつにシートがある。今回は、アンコ形状の変更や表皮張り替えを行ったが、程度が良く見えるノーマルシートでも、実は、想像以上に汚れていることが多いので、まずはしっかりクリーニングすることから始めてみよう。

ガソリンタンクを始め、各種カウル類のオールペン仕上げによって、シートも張り換えないと決まらない感じになってきた。Kナナゴーの純正シート形状は、ライディングポジションがぼくにとっては今ひとつな印象だった。せっかく張り替えるのなら、ライポジの変更と、タンクとのつながり部分をスムーズにする「デザインの変更」は実現したいと思っていた。前方にやや長くタンク後方にせり上がったシートボトムはカットする。この作業は、モデルクリエイトマキシにお願いした。シートアンコの成形は、ガレージに戻ってから現車合わせでDIY作業。何とか思い通りの形状を具現化することができた。

ところが、シートの張り替え依頼で予定が狂ってしまった。何度かお願いしていて実績があるプロショップへ連絡すると、FRP製のシートボトムが硬く、ステープラー(タッカー)の爪が刺さらないため、BMWのKシリーズは引き受けていないらしい。では「接着固定のシート張り替えなら……」と相談したものの、引き受けて頂けなかった。ならば異なるプロショップへ相談してみた。すると、接着による張り替えも請け負っているそうなので、作業仕様書に依頼内容を書き込み、シートとともに発送した。

数週間後には、完成したシートが納品された。しかし、シート前方の張り込みが今ひとつで、シートを閉じても相変わらず隙間が空いてしまう……。仕方ないので、再びモデルクリエイトマキに相談し、問題解決することができた。接着張り込みされた先端部分の赤色表皮を剥がし、スポンジアンコの形状を変更。FRP製ボトムをさらに数ミリ削り込み、隙間になる部分にスポンジアンコを追加して、接着にて前方を張り込むことができた。シート先端がやや短くなっても(最終的には15ミリ前後短く仕上がった)、ぼくの体系やポジションに何ら影響は無く、バッチグーな仕上がりを得ることができた。真っ赤なダブルシートになったことで、「M」ライングラフィックが一層際立つ印象になったような気がしている。その一方で、この赤シートは、どうも「目立ちそうな感じ」に思えた。

ギャラリーへ (17枚)

この記事にいいねする


コメントを残す