穴空けや貼り付けなどで素材を固定する際は動かないようしっかり保持することが重要ですが、ホースや配線などは力一杯掴むと傷つきや切断などでダメージを与えてしまうことがあります。軽く押さえたい、短時間だけ止めておきたい時にに重宝するのが「そこそこの力」で保持できる工具です。ラジオペンチやプライヤー、ロッキングプライヤーとはちょっと違う便利工具があると、メンテナンスがはかどること間違いありません。

プライヤーにとって掴む能力は重要だが相手を傷つけてしまうこともある

ラジオペンチやプライヤーなどの掴み工具は、ボルトやナットや板材や丸棒など掴んだ相手をしっかり保持することが求められます。スプリングを引っ張ったり部品同士を重ね合わせたり、時には掴んだボルトやナットを回すこともあるので、簡単に外れないことが重要です。
しかし作業の内容によっては、掴む力が強すぎない方が良い場合もあります。そんな場面の代表的なものといえば、キャブレター車の燃料ホースを掴む作業です。
ガソリンタンクに取り付けられた燃料コックとキャブレターをつなぐ燃料ホースには、ガス欠にならないかぎりいくらかのガソリンが入っています。その状態でメンテンナンスを行う際にガソリンタンクを外す、またはキャブレターを外すと、ホースの中のガソリンが流れ出してしまいます。
また、車種によってはガソリンタンクと燃料コックが別の場所にあることもあります。その代表例がキャブレター時代のホンダスーパーカブです。
スーパーカブはシート下のガソリンタンクとキャブレターの間にオンとリザーブの2本のホースがありますが、燃料コックはキャブレター本体に付いています。タンクから燃料コックまでの間に弁はないので、燃料コックからホースを抜くとタンク内のガソリンがすべて流れ出してしまいます。
そのためエンジンからキャブレターを取り外す際はガソリンホースをつまんで流れを止めなければなりません。
しかしこの時に一般的はバイスプライヤーを使うと、掴み部分(ジョー)の滑り止めの刻みやギザギザがホースに食い込み、傷を付けてしまうことがあります。

掴み部分の刻みをなくすことで食いつき力を緩和する特殊なプライヤー

そんな場面で活躍するのが、掴む相手に傷を付けづらいアルミ製ジョーを持つロッキングプライヤーです。全体的なフォルムは口幅が調整できる通常のロッキングプライヤー(バイスプライヤー)と同様ですが、ジョーの部分に刻みのないフラットなアルミ素材で、ジョー自体も左右非対称で凸と凹が組み合わさるようになっています。
ホースを掴む工具としては樹脂製のホースクランプがポピュラーですが、こちらは金属製なのでたわまずしっかり掴めるのが特徴です。また樹脂製のホースクランプに比べて当たり面の幅が広いためゴムホースに食い込みづらく、圧迫痕や傷が残りづらいという面もあります。さらに全長が短いため狭い場所でも使い勝手が良いのが魅力です。
ホースクランプとして優秀な上に、アルミジョーならではの利用価値もあります。
シフトチェンジリンクやブレーキロッドの長さ調整でアジャストナットを回す際、ロッド自体の固定方法を迷うことがあります。ロックナットを緩めるのはほんの一瞬のことなので、傷つく懸念はありながらジョーに刻みが入ったプライヤーで掴むことも多いかもしれません。
しかしジョーに刻みがなく素材自体も鉄より柔らかいアルミであれば、相手部品を傷つけるリスクは少なくなります。それでいてロック機構があるので滑らず固定することができます。
バイクとは異なりますが、経年劣化で内部のガスが抜けてリアハッチを支えられなくなった自動車用のガスダンパーのシャフトを固定する際にも、柔らかいアルミがロッドを傷つけないメリットがあります。

構造がシンプルで狭い場所でも使えるホースクランプにも注目したい

目的が燃料ホースを摘まむだけなら、もっと単純でリーズナブルな工具もあります。PLOT(プロト)のホースクランパーはコの字型に折り曲げられた丸棒とプレス成型された金属製プレートを組み合わせた工具です。丸棒の端部にはネジが切ってあり、滑り止め加工が施された長ナットが付いています。
丸棒と金具の間にホースをセットしてナットを締め込むとホースが潰れて流れが遮断されるシンプルな仕組みで、ロッキングプライヤーよりもさらにコンパクトなので狭い場所でも便利で、スーパーカブのように2本のホースを同時に遮断しなければならない車種でも工具同士が干渉することはありません。
また本体サイズが小さいので、負圧式燃料コックの負圧ホースを抜いて遮断することも容易です。負圧ホースはインテークマニホールドやキャブレターのインシュレーターにつながっていて、抜いた状態でエンジンを始動すると二次空気を吸ってしまうためアイドリング不整の原因となります。
そのため燃料タンクを外してキャブレターの同調を合わせる作業では、負圧ホースをしっかり潰しておくことが必要です。その際にホースクランパーがあれば、傷つけることなく二次空気の吸入を防止できます。

「掴む工具」は一度掴んだ相手を離さない0か100の製品が多いのは確かです。ただ、中には0~100の間にグラデーションがあり、相手によって掴む力を変えられるものもあります。
燃料ホースやエアーホース、さらにブレーキホースや冷却水ホースなどはそれぞれ中を流れる液体や空気のの流れを遮断しながら、ホース自体にダメージを与えないことが重要です。そうした作業ではここで紹介したような工具が有効であることを知っておくと良いでしょう。

POINT

  • ポイント1・ガソリンタンクと燃調コックの位置関係によっては、燃料ホースを外すとタンク内のガソリンが流れ出す車種があり、ホースを摘まんでから引き抜くことが必要
  • ポイント2・鉄より柔らかいアルミ素材で掴み部分に刻みのないジョーを使用することで、ゴムホースやメッキ仕上げのロッドを傷つけず保持できるロッキングプライヤーがある
  • ポイント3・狭いスペースでも使い勝手の良いコンパクトさと手頃な価格を両立するホースクランパーはキャブレター車のガソリンタンク着脱時に重宝する
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