
ボルトやナットの早回しに便利なラチェットハンドルは、メンテナンスの必需品と言っても過言ではないハンドツールです。そのラチェット機構だけを切り離してひとつの工具としたラチェットアダプターは、ソケット工具のどんなハンドルと組み合わせても使えるのが特長で、ラチェットハンドルと合わせて持っておくと作業効率アップに役立ちます。
ラチェットハンドルは1本より2本、2本より3本あった方が便利
スパナやメガネレンチでボルトやナットを回す場合、一定角度を回したら必ず工具を一度外して差し替えなくてはなりません。ボルトやナットの周辺に干渉する物が何もなければ、工具を外さずグルグル回すこともできますが、そのためにはグリップ(ハンドル)の長さを半径とする円が描けるだけのスペースがなくてはなりません。
ラチェットハンドルがあれば、一方向だけに回転を伝えられるラチェットギアのおかげで一定角度まで回したハンドルを元の位置に戻して振ることで、差し込んだソケットを介して連続的にボルトやナットを回すことができ、その結果として作業効率をアップできます。
スパナや6ポイントのメガネレンチは、ボルトやナットは最低でも60°回さなければ工具を掛け替えることができませんが、例えばラチェット機構が36歯ギヤであればハンドルを10°振ればギヤが送られるのでソケットが回ります。これが72歯ギヤになれば5°ハンドルを振るだけで済むので、ボルトやナットの周辺にスペース的な余裕がなくても作業を続けることが可能です。
ソケットレンチを使い慣れている人はそんなことをいちいち考えながら作業することはないかもしれませんが、メガネレンチやスパナとラチェットハンドルはまったく異なる工具と言っても大げさではありません。
そんなラチェットハンドルも1本あれば充分とは言えません。狭い隙間に差し込もうとすればラチェットヘッドがよりコンパクトなハンドルが欲しくなり、ボルト周辺に他の部品が取り付けられていればハンドルが干渉しないようディー
プソケットやエクステンションバーを取り付けるか、首振りタイプのラチェットハンドルが欲しくなります。
さらにはヘッドに対してハンドルが180°自在に動くスイベルタイプのラチェットハンドルなら、ソケットとハンドルを直線状にしてドライバーのように使うことも可能です。
ボルトやナットの位置や周辺の状況によってラチェットハンドルの使い勝手も変わってきます。そのためラチェットハンドルは1本あれば充分というわけではなく、使い分けができるよう何本か持っておくのが理想です。
ハンドルとソケットの間に取り付ければどんな工具もラチェットハンドルになる便利なアダプター
複数のラチェットハンドルがあれば対応できる作業内容も増えるのは確実ですが、ヘッドとハンドルが一体化したラチェットハンドルを複数持つとかさばるし相応の費用も掛かります。
そこでおすすめしたいのが「ラチェットアダプター」です。これはラチェットハンドルからラチェット機構だけを取り出したような工具で、ラチェットギヤの両端にソケットレンチ差込角の四角凸と四角凹が付いています。
画像を見れば一目瞭然ですが、ラチェットアダプターは手持ちのどんな工具を差し込んでもラチェットハンドルとして使えるのが最大の特長です。
T型レンチやスライドハンドル、スピンナーハンドルやドライバーハンドルなど、ソケット工具ユーザーの中にはラチェットハンドル以外に複数の駆動工具を所有している人もいるでしょう。それらの工具の四角凸部にカチッと差し込めば便利なラチェットハンドルとして機能します。
ラチェットアダプターがあれば対応力の引き出しが確実に増える
ドライバーハンドルと組み合わせた例。グリップを10°回せばギヤを1コマずつ送れるので、少ないひねり角でスムーズに緩め作業や締め作業ができる。
T型レンチに取り付けることで、ハンドルを握って手首を返すだけで連続的にボルトやナットを回すことができる。ラチェットハンドルにエクステンションバーを追加したような状態と考えると分かりやすいだろう。
例えばT型レンチと組み合わせれば、奥深い場所のボルトを回したい時にエクステンションバーのように使えます。またスピンナーハンドルにセットすれば、ハンドルを傾けて干渉物を避けることも容易です。さらにドライバーハンドルを使用すれば文字通りドライバーのように手首の返しだけでソケットを回すことができます。
ラチェットアダプターはさまざまな工具メーカーから発売されており、ここで紹介するアストロプロダクツ製はソケット差込角1/4インチ、3/8インチ、1/2インチそれぞれが36歯ギヤを内蔵しています。
ラチェットギヤの切り替えは、本体中央部分の滑り止めのギザギザが付いたリングで行い、このリングには回転方向を示すL/Rと矢印が表記されています。
また各種ハンドルの四角凸を差し込む四角凹部は二面幅17mm(差込角1/4と3/8インチの場合)六角頭となっているので、メガネレンチをセットしてギヤレンチのようにして使うこともできます。
昨今、ラチェットハンドルは狭いスペースでの使い勝手を重視した多ギヤ化が進んでおり、ハンドル振り角5°の72歯ギヤもそれほど珍しくありません。それらと比べると36歯ギヤは物足りないように感じるかもしれませんが、T型レンチやドライバーハンドルと組み合わせる場合はラチェットギヤの送り角度よりも手首のスナップを使って連続的に回すことができる方がより実感できるメリットとなります。
ラチェットハンドルにはラチェットハンドルの存在理由と意義があります。その一方でラチェットハンドルだけでは作業が滞ることもあります。そんな時にラチェットアダプターがあれば、不便な思いをせずスムーズに作業できるかもしれません。
同じような機能、同じような形状の工具であっても、僅かな違いによって作業性が左右されることは珍しくありません。作業が行き詰まって土壇場に立たされるのか、まだ別の手段を選択できるかでは、精神的なゆとりに差が出ます。
ラチェットアダプターは対応力の引き出しを増やすハンドツールと言えるでしょう。
- ポイント1・ラチェットハンドルはボルトやナットを回す作業効率アップに有効だが、すべての場面で使えるわけではない
- ポイント2・ラチェットアダプターはラチェットハンドルからハンドルを切り離してラチェットヘッド機能だけを持たせたハンドルツールである
- ポイント3・スピンナーハンドルたT型レンチなどさまざまなハンドルと組み合わせ可能で作業の幅が広がる
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