ホンダ旧横型エンジンのカスタムやチューニングといえば、2次クラッチ仕様のハイパフォーマンスパーツが定番アイテムだが、純正クラッチ(1次クラッチ)が好きで愛用し続けているファンも実は数多い。クラッチ滑りが始まった時のために、メンテナンス・シミュレーションで、交換作業をイメージしてみよう。
目次
マニュアル式も遠心式も分解手順はほぼ同じ
マニュアルクラッチ、自動遠心クラッチともに、ユニット分解すると様々なパーツで構成されていることがよくわかる。遠心クラッチの場合は、内部にウエイトローラーや振り子プレートが組み込まれ、それがエンジン回転による遠心力で作動し、クラッチ板を強く押し付けて、クラッチの滑りを防止している。
分解専用工具が無ければ大型万力で代用可能
クラッチを分解するにはスプリングを押し込む専用ホールディングツールが必要不可欠だが、手元に専用工具が無い場合は「大型万力」を利用することで、クラッチユニットは分解することができる。クラッチユニットのセンター凸部分をソケットレンチ越しに万力でゆっくり締め込んでいくと(適当なサイズのソケットを利用する)、クラッチスプリングが圧縮されてハウジング内側にセットされる抜け止めリングを取り外すことができる。
滑りの原因はクラッチディスクとクラッチスプリング
抜け止めリングを抜き取ったら万力をゆっくり弛めてパーツを分解しよう。クラッチスプリングの「使用限度」は、12ボルトのAB27E系の50ccで17.4mm。この数値より潰れていたら(短かったら)スプリングは要交換になる。クラッチハウジングを抜き取る際は、外側面にセットされた小型スプリングを飛ばして紛失しないように注意しよう。不慣れな作業者なら、やや大き目の透明ビニール袋の中で分解すると部品は紛失しにくい。AB27E系エンジンのクラッチディスクは、使用限度3.15mmで、プレートの歪み限度は0.2mm以内だ。
各部の摩耗や段差やガタに要注意
クラッチディスクによって叩かれた打痕がクラッチアウター内側外周の凸凹溝部分に残っていないか指先で確認しよう。ノーメンテナンスで乗り込まれていた車両は、ガタガタに摩耗しているケースが多い。ドライブギヤのシャフト部分にセットされているブッシュがかじって作動不良を起こしていたり、逆に、磨耗によってガタガタになっていないか、スムーズに摺動するか指先でしっかり確認してみよう。潤滑不良によってブッシュエッジにバリ発生することもある。マニュアルクラッチモデルは、プライマリードライブギヤとクラッチセンターが一体化されている。クラッチセンター部分とフリクションディスクが不自然な状態ではなく、確実に噛み合っているか確認しよう。
組み立て時にも大型万力を代用できる
各部の点検を終えて不安要素がある場合は、メカニズムに詳しい仲間に相談するのが良い。状況によっては、新品部品と交換しなくてはいけないケースもあるはずだ。復元時は、逆の手順で組み立てていこう。クラッチスプリングを万力で押し込んだら、抜け止めリングはラジオペンチでセットするのが良い。ドライブギヤセンターとクラッチユニットのセンターが合致しているか目視点検し、ズレがある場合は、プラスチックハンマーを利用して軽く叩いておおよそのセンターリングをしておくことで、後々の組み立て作業がスムーズに進む。クラッチアウターの外側にセットする4本の小型スプリングを復元する。組み込み時には、飛ばさないように押し込み、クラッチアウター側の突起部に固定しよう。レバー操作によってクラッチレリーズアームが作動し、クラッチスプリングを圧縮してクラッチを断続されるのがマニュアルクラッチの構造だ。組み立て復元前に遠心ろ過式フィルター内をパーツクリーナーで洗浄し、クラッチリフトの作動部にスプレーオイルを吹き付けておこう。
プライマリードリブンダンパーのガタをチェック
プライマリードリブンギヤにはインナーダンパーが組み込まれているが、このダンパーが劣化するとクラッチ断続時にショックや異音が出てしまい乗り心地が悪くなる。スプライン溝にダメージを与えないようにソケット越しにダンパー部分を万力で固定し、外周のギヤを手で動かしガタが出ていないか確認しよう。
見落としがちなクラッチレリーズのグリスアップ
クラッチカバーのレリーズアーム分解時は、抜け止めピンをマグネットで抜き取ることから始めよう。レリーズ部分の円形カバーを締め付けることで、このピンを抜け止めしている。ピンを抜くことでレリーズアームを引き抜くことができ、洗浄やグリスアップなどのメンテナンスが可能になる。このレリーズアームの摺動部が作動不良を起こすと、クラッチレバー操作が重くなってしまう。AB27型レリーズアームの摺動部には、焼き付き防止のメタルが組み込まれていた。アーム側にはOリングがセットされていて、グリス抜けの防止と同時にダストシールの役割を果たしている。
オイル通路のフランジャ紛失は焼き付きの原因になる
クラッチセンター部にはクランクシャフトを潤滑するためのオイル通路用ピース(プランジャ)が組み込まれる。このピースには、スプリングがセットされていて、カバー側に押し付けることでオイル逃げを防止する役割を果たしている。エンジン稼動中はこのピースがオイル通路となりクランクシャフトへエンジンオイルを供給する仕組みとなるため、組み付け時に部品を紛失してしまうと、クランクシャフトが潤滑できずに焼き付いてしまう。
- ポイント1・クラッチ滑りが気になったらフリクションディスクとスプリングを疑おう
- ポイント2・クラッチカバーを取り外す時には、カバーガスケットも同時に注文しよう
- ポイント3・遠心式オイルフィルター(ろ過装置)の重要性を理解しよう
- ポイント4・クラッチ操作の重さはワイヤーケーブルだけではなく、レリーズアームの作動性低下もある
ユニット分解したエンジンパーツをそのまま組み立てれば、復元時間は確実に短縮することができる。しかし、それでは単なる部品の脱着作業になってしまう。クラッチユニット内部を分解することで、各パーツのコンディションを確認しておこう。分解したエンジンパーツは、各部をしっかり、徹底的に点検してこそ意味があるのだ。そんな点検作業時に、思いも寄らなかったトラブルに遭遇することもある。
例えば、クラッチの切れが悪いとか、クラッチが滑り気味なケース、また、ギヤチェンジの際に不快な振動や異音が出るなどなど、そういった事象とクラッチユニットには、関連性があるケースが多い。クラッチユニットを分解メンテナンスしなかったことで、あのときに「分解しておけば……」となるケースも少なくない。ホンダの旧横型4ストエンジンは、シンプルかつメンテナンス性がたいへん良いので、例えば、オイル漏れ修理でクラッチカバーを取り外した際などでも、せっかくのチャンス=ついでのメンテナンスで、各内部パーツのコンディションを確認しておこう。
クラッチユニットを例にすると、ノーメンテナンスで乗り続けていたり、ボアアップなどによってパフォーマンスアップされたエンジンの場合は、クラッチユニットに何らかの変化があることも多い。例えば、潤滑不良が起こると各部の作動性が著しく低下し、本来の性能や乗り心地の良さを発揮できていないこともある。ボアアップなどでエンジンパワーが向上していると、プライマリードリブンダンパーにガタが発生し、クラッチの断続時にギヤ内部から異音が発生するケースもある。クラッチユニット本体に関しても、パワーに対する容量不足で滑りが発生し、パワーアップしたのに気持ち良く走れなくなってしまうことも珍しくない。クラッチユニットは、エンジン内部における「ショック緩衝機能」を果たす重要なパーツなので、カバーを外すなどの点検チャンスがある時には、積極的に確認するように心掛けよう。
中古車購入後、クラッチカバーを取り外すようなメンテナンスを実践する際には、クラッチカパー裏側の汚れを確認してみよう。過去にオイル交換せず、乗り続けられていたようなモデルの場合は、エンジンカバー内が真っ黒に汚れ、油垢で黒ずんでいることもある。そんなコンディションに気が付いたときには、尚更、内部パーツのコンディションを確認したいものだ。長期間乗り続けられていたモデルでも、定期的なオイル交換を行っていたエンジンでは、内部の汚れは激しくなく、各部品のコンディションも走行距離の割りには良いケースも多い。このようにエンジン内部を覗き見できる時には、様々な角度からコンディション判断してみよう。
ギャラリーへ (17枚)この記事にいいねする






























