
HONDA Trail CT110(型式CT110B)1981年型のセミレストア物語 Vol.08
CT110の時代は、一部のファンに愛されるモデルに過ぎなかったが、CT125の登場によって、その人気は不動のものとなり、街中で見かけない日は無いと言っても過言ではなくなっている。ここでは、CT125ハンターカブの人気によって再び注目を浴びている、先代CT110の1981年型国内モデルをベースに、セミレストアを楽しむ企画を展開している。バラバラだった車体は、ようやくカタチになり始めた!!
前回
目次
作動部分には確実に注油&グリスアップしよう
国内モデルのCT110にはメインスタンドが装備されていなかった。後に登場した輸出モデル用メインスタンドが入手可能だったので、スタンド本体とスプリングなどの周辺部品をオーダー。メインスタンドのピボットシャフトは、取り付けられていた部品をワイヤーバフでしっかり磨いてから再ユニクロメッキ処理へ依頼した。後々分解するのが大変な個所なので、本組のつもりで摺動部にはしっかりグリスを塗布してから組み付けた。
ステアリングコーンは洗浄点検。組み立て時はグリスが接着剤に!?
ステアリング操作の要となるステムコーン=スチールボールは中古部品を再利用した。分解時に紛失しないようにマグネットを使って吸着。洗浄後はチャック付きビニール袋でしっかり保管した。明らかにダメージがあるときには新品スチールボールへ交換しよう。CT110のスチールボール個数は、上下レースとも同数。組み立て時には、ボールが落下しないように「グリスを接着剤代わりに利用」して保持する。ベアリングレースは新品部品に交換したが、このクラスはダメージを受けやすいようだ。ボール摺動面に打痕がある際には、必ず新品部品に交換しよう。
ヘッドパイプの締め付けは「一度に決めない」
鋼球をセットしたステアリングステム(メーカーによってはアンダーブラケットと呼ばれる)を、フレームのステアリングヘッドパイプへ差し込みナットを仮締めする。締め付けの際には必ずフックレンチを利用しよう。マイナスドライバー+ハンマーなどで叩いて組み立てないこと。まずは軽く締め付け、ステアリングの操作感が重くなるのを確認してから、トップナットを僅かに緩めて、ガタ無くスムーズに動く場所で仮組しよう。最終的には、足周り部品をすべて組み込んでから、作動性を再確認しよう。
総組み時にフロントフォークオイルを注入
フロントフォークを差し込んで前輪を取り付けたら、この段階でフロントフォークオイルを規定量注入した。フォークオイルにはモトレックス製の10番を使用した。ユーザーの好みによる硬さ調整は、油面高さで後々微調整が可能だ。先が細くなっているジョウゴを利用して、簡易メスシリンダーで容量測定したフォークオイルをゆっくり注入する。国内CT110のフロントフォークオイル量は、分解時で130~140cc注入である。
サビの進行はケミカルでストップ
めっきには輝きがあり、程度が良かったマフラープロテクターは国内モデル用。後のモデルは小ナベねじ6本締め仕様だが、CT90や国内CT110用プロテクターの締め付けは4本ねじタイプだった。裏側の赤サビは花咲かGラストリムーバーで酸化被膜処理を行い、これ以上の赤サビの発生を抑えることにした。よく振った花咲かGラストリムーバーをハケで塗り、しばらく放置すると赤サビが灰色に変化していく。
- スーパーカブ×メンテの世界・しばらく冬眠状態だった不動車両を公道復帰させる際には、スーパーカブに限らず、車体はバラバラに分解して、部品単位でしっかり磨き込んだ後に組み立て直すのが良い。その際には、各作動部に注油やグリスアップを行うことで、間違いなく気持ち良く走れるバイクに仕上がる。分解することによって、各部コンディションを把握することもできるので、何らかのトラブルが発生しても、的確な対処ができるようになる。
事務用長机の上でフレーム周りの磨き込み作業や諸作業を進行してきた数か月間だったが、ようやくトータル的な組み立て作業を始められる段取りになった。フロントフォークのオーバーホールを終えてからは「あっという間劇場」の如く、スムーズに組み立てられる。プラモデル作りでも、細部にこだわると長時間作業を強いられてしまうそうだが(モデラーの方から伺いました)、それと比べれば、1/1スケールのCT110は、ずいぶん楽である。ここからは、メンテナンスリフターの上に毛布を敷き、フレーム本体に仕上げ済みの前後サスペンションやホイールを順序良く組み付けていく作業だ。
ここから先は、本格的な組み立て復元になるので、各摺動部には注油やグリスアップをしっかり行わなくてはいけない。仮組のつもりで作業を急ぐと、後々、作動性が良くないことに気が付き「あっ、グリスを塗り忘れた!?」なんてことにもなりかねない。特に、要注意なのが、CT110やスーパーカブの場合は、メインスタンドのピボットシャフトへのグリスアップだろう。この部分はできる限りグリスをしっかり塗布し、しかも水に強い高性能グリスを利用したい。過去にメンテナンスしたスーパーカブの中には、このメインスタンドのピボットシャフトが抜けないことで、てこずってしまった経験が何度かある。その原因の多くが「グリス切れによるサビ固着」なのだ。最悪のケースでは、シャフトがサビでスタンドと一体化して抜けないため、隙間から金ノコを入れて切断したこともあった。そんなことにならないためにも、水分に強い高性能グリスをたっぷり塗布し、組み付けるのが良いだろう。
ステアリングステムを組み付ける際には、注意すべきペイントがいくつもある。メインフレームのステアリングヘッドパイプに圧入するステアリングレース(ドーナツ状のスチールボール受け)を凝視し、ボールが摺動する面にボール打痕が無いか、作業ランプや虫メガネを使って確実に凝視しよう。打痕があるボールレースのままでは、ステアリングのスムーズな作動が得られず、ハンドルを取られてしまう症状が起こる。今回は、フレーム側ヘッドパイプに圧入する上下ステアリングボールレース、ステムシャフト側へ圧入するアンダーコーンレース、そしてアッパーコーンレースの4部品をすべて新品部品に交換した。スチールボールは洗浄後に確認点検したが、再利用できると判断。エンジン搭載状態のフレームからボールレースを抜き取り、圧入し直すのはかなり面倒で苦労する作業だが、今回はフレーム単品での圧入作業だったので、スムーズに進行することができた(ベアリングドライバーや寸法が合致した鉄パイプを当金にハンマーで叩いて圧入した)。
バラバラのスチールボールは組み立てるのが大変だが、このようなタイプのステムベアリングの場合は、ボールレース側に多めのグリスをあらかじめ塗布し「グリスを接着剤代わり」にスチールボールを並べて組み付けるのが良い。このCT110は、上下に各21個、合計42個のスチールボールが組み込まれていたが、後期モデルでは、必要個数のスチールボールがケージ(リテーナー)に組み込まれた一体式ベアリングがあり、前期モデルとの互換性もあるので、ベアリング交換の際には一体式部品へ交換も一考だろう。
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