旧車はもちろん高年式バイクでも、保管状況が良くないとエンジンカバーにはアルミ特有の腐食が始まり、クリア塗装が剥がれで美しくない状況になってしまうことが多い。また、クリア塗装が黄ばんでしまい、パリパリ剥がれてしまうこともある。そんなときには、アルミ地肌の再生とポリッシュによって、美しさを保つことができる。

「磨き魔」の多くはアルミ地肌露出派が多い

ペイント仕上げのエンジンカバーなら、再ペイントすることで美しく仕上げることができる。しかし、ポリッシュ仕上げの場合は、汚れ具合や腐食のコンディションによっては、再ペイントと比べて美しく仕上げるのが大変だ。バイクメーカーによる量産ポリッシュ仕上げは、輝きを維持するためのクリアペイントが施される例が多い。しかし、このクリアペイントが経年劣化によって剥がれはじめ、美しさを維持できないことが多い。磨き魔と呼ばれるバイク好きの多くは、このクリアコートを剥がし、アルミ地肌を磨き出して美しさを維持する者が多い。ペーパー掛けする際には、耐水ペーパーをゴムブロックや硬質スポンジブロックにセットし、水分を含ませながら磨くことでムラなく仕上げられる。水を使わずに研磨してしまうと、削り粉が流れず逆に深いキズを付けてしまうこともあるので、必ず水を併用しよう。

耐水ペーパーは徐々に数字を大きく=粒度を細かくしよう

ある程度の磨き込み完了後なら、ブロック無しでも磨きやすくなる。耐水ペーパーを準備する際には(磨き箇所のコンティションによって異なる)、一番粗い番手で320番前後から始め、次に400番→600番→800番→1000番→1200番→1500番と進めていこう。磨き込み目安としては、ひとつ前に磨いた耐水ペーパーのキズを、次の番手の耐水ペーパーで消すように作業進行すれば良い。地味な作業なので全部品を一気に仕上げようなどと思わず、今日はこの部品、次はこの部品……というように、徐々に仕上げていくのが良い。

メタルポリッシュでケミカル磨き仕上げ 

順序良く耐水ペーパーで磨いて部品表面が平滑になったら、メタルポリッシュを磨きたい面へ指先で塗り伸ばし(一気に広範囲を磨かないのが成功の近道)、ケミカルをウエスで強く何度も擦りつけてみよう。一気に広い範囲を擦るのではなく、50ミリ幅ぐらいでウエスを往復させ、アルミが擦れてウエスが黒くなったら、きれいなウエスで汚れを拭き取ろう。指先磨きの繰り返しによって、想像以上に輝くものだ。

文明の利器「ポリッシャー」併用で鏡面を目指す?

電動ドリルのチャックに軸状バフを取り付けて磨くことでも、指先磨きより輝きは増す。しかし、磨きムラができてしまうこともあるので、電動ドリルを利用する際には、状況確認しながら腰を落ち着け、作業進行しなくてはいけない。圧倒的に美しい仕上がりを得られるのが、ポリッシャーを利用した磨き作業だ。電動式でもエアー式でも、ウールバフを押し付けて磨くことで、指先磨きよりも圧倒的な輝きを得ることができる。ポリッシャー利用なら、ケミカル粘度が低いペイント磨き用コンバウントを利用するのも良い。また、手磨きなら単品部品の方が磨きやすいが、ポリッシャー利用時は、コンプリートエンジンに締め付けられているカバーの方が磨きやすいケースもある。溝などに溜まってしまったメタルポリッシュやコンパウンドは、綿棒にパーツクリーナーを浸して拭き取ることで、簡単に除去することができる。

POINT

  • ポイント1・耐水ペーパー研磨時にはゴムや硬質スポンジのバックブロックがあると作業性が良い 
  • ポイント2・アルミ地肌のポリッシュ仕上げは、ピュア輝きを得られる半面、輝きの維持も大変
  • ポイント3・一度でも美しく仕上げれば、後々の維持磨きは意外と容易なことが多い 

ポリッシュ仕上げのエンジンカバーを磨こうと思っても、保護用として塗られているクリアコーティングが邪魔をして、思い通りに磨けないことがある。完全に劣化し、黄ばんでいるクリアコーティングなら、スクレパーでパリパリ剥がすことができるが、保護膜としての役割を果たしている部分は、クリア層をきれいに剥がすのが難しい。そんなときには、ペイント剥がし剤や剥離剤を準備して、幅広のハケで剥離剤を塗り伸ばしてクリア層を剥がすのが良いだろう(ペットボトルの底をカッターでカットして容器に利用するのが良い)。作業時は、周囲に剥離剤が付着すると悪影響を及ぼすので、古新聞やコロナマスカーを利用して、マスキング養生してから作業に取り掛かろう。

ボロボロになった保護膜=クリアコーティングを除去したら、想像以上にポリッシュ仕上げのコンディションが良く、ピカピカ輝いていて驚いてしまうこともある。クリア層を剥がしたら、アルミ地肌のコンディションによって耐水ペーパーの粒度を決定しよう。耐水ペーパーは霧吹きを使って水道水を吹き付けながら作業進行したり、パケツの水に耐水ペーパーを浸しながら磨き作業を進めても良い。この際に、霧吹きの水やバケツの水に少量の中性洗剤を混ぜることで、汚れ落ちが良く磨きやすい特徴もある。

仕上げ磨き時には、綿や不織布ウエスを使った手磨きでも部品は輝く。その一方で、ポリッシャーを使うことで、手磨きとはひと味もふた味も違った輝きとムラが無い美しい仕上がりを得ることもできる。無理に強く押し付けるのではなく、磨き箇所の輝き具合を確認しながら、押し付け強さや動かす速度を調整しながら磨くのがコツのようだ。

再びクリアコーティングで仕上げたいのなら、部品を取り外してからしっかり脱脂作業を行い、ウレタンクリアや耐熱クリアなど、好みに応じて仕上げれば良い。ちなみに、アルミ地肌仕上げをしっかり行っていれば、後々の磨き直しも楽々行えるので、磨き魔バイクユーザーの多くは「アルミ地肌を露出したリアルな輝き」で、美しさを魅せ続けている例が多いようだ。

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