しばらく乗らなかったバイクの車体周りを覗き込むと、フロントフォーク(インナーチューブ)の汚れの下には、ブツブツの点サビが発生していた。ウエスで拭き取っただけでは、ツブツブはそのままで……。そんなときには、現状最善を目指し、クリーニング実践してみよう。

カウル付きのバイクは「見えない部分の汚れ」に要注意

雨天走行数日後にフロントフォークを見ると、インナーチューブが汚れている例が多い。そんな汚れやほこりの堆積が「湿気」を呼び込んでしまい、気が付いた時にはインナーチューブに点サビが発生していることが多い。特に、フロントカウルを装着したモデルの場合は、カウルの内側や陰になってしまう部分に、汚れが付着したままのことが多い。そんな汚れが水分や湿気を維持することで、インナーチューブに限らず金属部品にとって大敵のサビが発生してしまう。洗車うんぬんではなく、気が付いた時にウエスで乾拭きしたり、汚れを拭き取ることはサビの予防にとって実に効果的だ。

ウエスで拭き取ってもブツブツが消えないので……

薄汚れたインナーチューブには部分的に赤いサビが発生していた。軽度な赤サビなら、ウエスで拭き取り、さらにメタルポリッシュで磨いたり、防錆浸透スプレーを軽く吹き付けてから拭き上げることで、赤サビ汚れを除去することができる。しかし、サビの進行が進んでしまうと、拭き取った部分に点サビが残って隆起していることがある。外部から見.える(露出部分)オイルシールとの摺動部分はピカピカに輝き、点ザビなど一切無かった。そのあたりをオーナーさんに訊ねると、外装パーツをワックス掛けしたときに、拭き取り後のウエスでオイルシール周辺の汚れを拭き取っていたそうだ。オイルシールとの摺動部分に点サビが無かったのはラッキーだが、その他の部分に点サビがあるのは残念なので、2000番の耐水ペーパーを平らなゴムブロックに当て、防錆浸透オイルスプレーを吹き付けながらインナーチューブの点サビを磨き落とすことにした。

メタルポリッシュで表面を磨いて現状最善を目指す

耐水ペーパー+ゴムブロック+防錆浸透オイルスプレーで点サビを磨いたことで、指先や爪先で触れても、点サビによる引っ掛かりは確認できなくなった。さらなる磨き込みとして、メタルポリッシュを塗布してウエスで擦ってみた。短冊状に長く切ったウエスを利用し、靴磨きの要領で磨いたら、インナーチューブ表面は明らかに輝きを増した!!

オイルシールリップ部分には摺動抵抗低減ケミカルを利用しよう

乾燥したゴム部品を乾いた金属表面で滑らせると、靴底と同じようにグリップしてしまい、滑りが悪くなってしまうことに気が付く。フロントフォークに限らずオイルシールと回転摺動軸の間でも同じような状況が発生する。それを放置するとゴム部品=オイルシールリップが早々に摩耗し、ダメージを受けてしまう。そうならないためにも、汚れ落とし後に潤滑ケミカルを塗布しておくのがお勧めだ。フロントフォークやリヤショックユニットのダストシールやオイルシールリップ部分をケアすることで、作動性が高まるケミカルにCCI製メタルラバーがある。このケミカルを摺動部に吹き付けることで、ゴムによる摩擦抵抗が減り、作動性が明らかに高まる。吹き付け過ぎて溢れたケミカルをそのままにしておくとゴミを寄せてしまうことになるので、そんな溢れケミカルは汚れていないウエスやティッシュで拭き取ろう。

POINT

  • ポイント1・カウル付きバイクはインナーチューブの汚れが見えにくいので、外装吹き取り後のウエスでインナーチューブ全体を拭き取ろう
  • ポイント2・極細目のサンドペーパーを利用する時にはバックプレート(ゴムや硬質スポンジやコルク)を利用しよう
  • ポイント3・オイルシールの摺動抵抗を高めるスプレーケミカルはサビの抑制にも効果がある 

フロントフォークのオイルシールを交換したばかりなのに、早々にオイル滲みやオイル漏れが発生してしまうことがある。それには大きく2つの原因がある。そのひとつが、オイルシールの交換ミス。新品オイルシールを組み込む際には、インナーチューブ端部にオイルシールを通すが、その時に、オイルシールリップにダメージを与えてしまうことがある。インナーチューブ端部にシールリップを擦ってしまい、シールリップが切れてしまうことでオイル漏れが発生するのだ。対策としては、インナーチューブ端部にラップを被せたり、カットしたビニール袋を被せることで、オイルシールリップへのダメージを回避できる。また、この作業時にオイルシールの滑りを良くするため、ゴム部品と金属部品の滑りを良くするラバーグリスを塗布するのも効果的だ。

もうひとつの理由は、オイルシール交換に問題が無くても、オイルシールとインナーチューブの摺動面に点サビがあることで、繰り返し作動によってシールリップが部分的に摩耗してしまうことがあるのだ(点サビ部は常に同じ場所を作動する)。

インナーチューブのような硬質クロームメッキでも、装飾メッキでも、メッキ表面には無数の小さな孔があり、実は、その孔から金属地肌に水分が浸透し、サビが発生してしまうのだ。普段からウエスで拭き上げたり、防錆処理をしていれば、そうは簡単に点サビが発生することは無いが、このニンジャのようなカウリング付きモデルの場合は、知らず知らずのうちに点サビが発生してしまうこともある。まずは普段からクリーニングするクセをつけるのが良いだろう。今回は、オイルシール摺動面以外への点サビ発生だったので、オイル漏れが発生することは無いが、仮に、オイルシール摺動面に点サビが発生してしまった場合は、インナーチューブ交換もしくは再生ハードクロームメッキ処理へ依頼しないと完治できないだろう。

オフロード車のように蛇腹状のフォークブーツ付きモデルやキャップ型ダストシール付きモデルの場合は、蛇腹ブーツやキャップ型ダストシールをボトムケースから外して、オイルシールを目視しながら周囲のクリーニングや防錆処理を行うのも良い。こうすることで末永く点サビとはオサラバできることを知っておこう。

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