
愛車を美しい状態に保ちたいというのは、多くのバイク乗りにとって共通する思いでしょう。一口に汚れといっても原因やその成分が異なり、適切な方法を用いて洗浄しないと効果が薄くコスパ・タイパが悪いばかりか部品破損という最悪な事態を招きかねません。ここでは代表的な洗浄剤の特徴と使い方を解説します。うまく使い分けることで、効果的・効率的に汚れを落としていきましょう。
中性洗剤
一般的な食器用洗剤や洗車用シャンプーの多くがこれに該当します。
そもそも洗剤には酸性、アルカリ性、中性があり、酸性は水垢系の汚れに、アルカリ性は油系の汚れに効果的です。中性はそのどちらにも使え、人体や部品への攻撃性が低く安心して様々な部分に使えるというメリットがあり、価格も安いので洗浄のファーストチョイスとしておすすめです。汚れを落とすメカニズムとしては界面活性剤により部品から汚れを浮かすというもの。通常の洗車やブレーキキャリパーの洗浄が主要な用途で、砂やホコリを水洗いで落としてから、水に溶き十分泡立た洗剤でブラシ等でこすり洗いし、水でしっかり汚れと洗剤をすすぐのが使い方となります。
サビや水垢残りを避けるため、水分はしっかり拭き取ることを忘れずに。タオルでもいいですが、吸水に特化したものをおすすめします。
パーツクリーナー
油汚れを落とすとなればまず思い浮かぶのがパーツクリーナーでしょう。
中性洗剤では落としづらいオイルやグリスといった油脂類の洗浄に効果的で、有機溶剤等により油を溶かして落とします。パーツクリーナーは手軽に使え、近年は安価な製品が広く出回っていて身近な存在と言えますが、製品選びや使う対象には注意が必要です。強い洗浄力を持つパーツクリーナーは塗料への攻撃性があるので塗装された部品への使用は避けるのが基本です。経験上、車両メーカーによる純正塗装は強く、影響を受けるケースは稀です。ただ耐薬品性のない塗装の場合、わずかに掛かっただけで溶けてしまうこともあります。塗られた塗料の耐薬品性は見た目では分からないので避けるのが安全なのです。また樹脂製パーツもダメージを与える可能性があるので、使用可能とある製品以外は使わないことが基本となります。ゴム部品に関しては使用可能な製品が多いですが、すべてがそうとは限らないので使用前に缶に書かれた注意書きを必ず確認しましょう。
パーツクリーナーは吹き付けて汚れを洗い流すが一番手軽な使い方となりますが、フロントスプロケット周辺に代表される油分に泥や砂が混ざった固形状のしつこい汚れの場合、そのような使い方をするとあっという間に使い切ってしまいます。クリーナーの洗浄力に頼るだけでなく、汚れの塊をヘラ等でこそぎ落としてから洗ったり、ブラシを併用すると無駄遣いを減らせます。
また広範囲の油汚れはパーツクリーナーを染み込ませたペーパーウエスで拭き取るようにすると効率的です。
一般的なパーツクリーナーは速乾性ですが、しつこい汚れを洗浄する場合は、より揮発するのが遅い中乾性や遅乾性のパーツクリーナーとブラシを併用すると少ない使用量で汚れを落とせます。
パーツクリーナーは人体に有害な成分が含まれるので、しっかり換気しつつ防護用のメガネや手袋を装着して使いましょう。また可燃性物質でもあるので火気に気をつけ高温の部品に使用しないことを徹底します。
キャブレタークリーナー・エンジンコンディショナー
パーツクリーナーでは効果が薄い、キャブレターやスロットルボディといった吸気系に発生するガソリン由来の汚れに特化したものがこれです。
洗浄力は強力で他の部品洗浄にも使えますが、塗料やゴムへの攻撃性はより高く、一般に匂いもきついので洗浄のファーストチョイスとはしにくいです。部品を分解せずに使える製品もありますが、その場合でも必ず使用方法を確認し正しく使うことが重要で、分解して洗浄する場合はすべてのゴム部品を外してから作業するのが必須です。
キャブレタークリーナーはスプレー式が主流で、スプレー後、汚れが浮いてくるのを待ってからブラシ洗うのが基本的な使い方です。キャブレターの隅々まで吹き付けることになると思いますが、吹き返しが顔にかかる可能性が結構あり、目に入ると有害な上に非常に痛いので保護メガネをしておきましょう。
キャブレタークリーナーには長年放置したキャブレターのようなしつこい汚れ落としに有効な、漬け置き洗いに適した液体タイプも販売されています。
スプレー式でもジェット類のような小さな部品であれば小さなケースに溜めることで漬け置き洗いもできますが、キャブレター本体のような大物部品を洗いたい場合、こちらの使用を検討してみましょう。
洗浄後はパーツクリーナーで薬剤を洗い流し、高圧空気(一般ユーザーならスプレー式OAクリーナーがおすすめ)をキャブレター各部にある穴(通路)に吹きます。キャブレター各部にある穴はほぼすべてが対となる穴(出口)がある空気またはガソリンの通路になっていて、この作業は細い通路内の汚れ等を完全に吹き飛ばしつつ、通路が詰まっていないことを確認することが目的です。これは洗浄の目的である正常稼働を目指す上でとても重要です。
液体洗浄剤
分解したエンジンまるごとといったように、大きな部品を洗う時に使いたいのが液体洗浄剤で、灯油や軽油、それらに混ぜて使う洗浄剤、水に溶かして使うもの等様々なものがあります。
灯油や軽油は安価かつ入手しやすく油汚れがよく落ちるため洗浄用として昔から使われていますが、匂いや火災の懸念から気軽に使えるとは言えないので、一般的なユーザーであれば水に溶かす洗浄剤が主な選択肢になります。
液体洗浄剤は軽微な汚れをさっと落とすというよりも、大きな部品を洗う、燃焼室のカーボンや泥と油が混じったようなしつこい汚れが広範囲に付いた部品、複雑な形状の部品を時間をかけて洗浄する用途に向いています。
洗浄作業は洗浄液と部品を入れるそれなりの大きさでしっかりとした容器に入れ、漬け置きしたり耐薬品性のゴム手袋装着の上で柔らかいブラシで洗ったのち、水ですすぐのが基本の使い方となります。
洗浄液の準備と処理にも手間がかかりますが、部品点数が多かったり部品が大きい場合には結果として効率、コスト的に有利となることが多いです。つまり日常的に部品洗浄をするプロにうってつけであるためプロ向け製品が多く、プロの様々な用途に適合できるよう特性の異なる製品が多数あります。洗浄後の防錆処理が必須、アルミ部品不可、素手での作業不可等、使用上の注意が製品により異なるので、それらを十分調べた上で購入、使用するようにしましょう。
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