
屋外保管で長期間を過ごしたバイクのガソリンタンクは、程度の差こそあれ劣化したガソリンや空気中の水分でサビが発生します。
風通しのわるい駐車場などでは、屋根があっても錆びることも珍しくありません。そんなタンクのレストアでは、タンク本体のサビ取りだけでなく付属する部品のケアも必要です。
燃料コックはもちろん、燃料計付きの機種ではゲージの腐食も要チェックです。
タンクのサビはどうやって防ぐ?
ガソリンタンクが錆びれば、エンジンを掛けていなくてもサビや汚れは燃料コックに流れ込んでいる。この状態でエンジンを掛けることはないだろうが、コックレバーを操作すれば汚れが研磨剤代わりになってガスケットを摩耗させる。
長期間バイクに乗らない(乗れない)時に、「ガソリンタンク内のガソリンをどうするか」は難しい問題です。中途半端にガソリンが残っていると、気温の差や湿度による結露によって露出した内面が錆びるので、給油口ギリギリまで満たしておいた方が良いとか、空っぽにして防錆潤滑剤をスプレーしておくと良いなど、いくつかの意見があります。
ガソリンを入れておく派の中にも、普及が進んでいるバイオフューエルは水分と結合しやすいため満タンにしない方が良いという見解もあります。そんな場合でも、燃料劣化防止剤というケミカルを入れておけばガソリンが腐らずサビを予防できます。そうしたケアをまったくしないまま、長く放置した先には強烈な臭いを発生するガソリン劣化と、容赦ないサビが発生します。
サビを防ぎたいなら、タンクからガソリンを完全に抜いて、燃料コックを外してタンクキャップを開けた状態で乾燥した場所に保管しておけば、ガソリンを入れておくより安心できるかもしれません。
燃料コックをガソリンタンクから外したら、分解してキャブクリーナーに漬け込んで汚れを取り除く。パイプ内に詰まった汚れはブラシやピックツールで完全に除去しておく。
コック本体左のゴムパーツは新品に交換した部品。負圧コックのダイヤフラムは燃料コックアッセンブリーと一体で販売されており、単品では購入できないので流用した。
- ポイント1・長期保管時のガソリンタンクの中身はどうするか
- ポイント2・燃料劣化防止剤を注入するか完全に抜くか
燃料ゲージの腐食はタンク本体のサビより面倒?
基板に銅線が巻き付けられた摺動抵抗のカバーを外すと、内側もヘドロ状の汚れが大量に堆積していた。ここまで分解できるから良かったが、非分解式だとかなり厳しい状態である。ガソリンや灯油に浸しながら、ブラシで地道に汚れを落とす。
ガソリンタンク内がサビに覆われてしまうと、タンクに取り付けられた燃料コックも当然サビにまみれます。また燃料計付きのバイクの場合、タンク内のガソリン残量を量る燃料ゲージユニットの対処も必要です。さらに燃料ポンプがタンク内にあるインジェクション車では、ポンプがダメージを負う可能性も高いです。
ここで紹介するタンクはキャブレター車のものですが、燃料計が装備されているためひどいサビに覆われています。フロートと摺動式抵抗(スライドボリューム)を組み合わせた燃料ゲージはベーシックなタイプで、フロート共に動く接点が接する位置によって抵抗に流れる電流が変化して、その電流の大きさによって燃料計の指針が動きます。
劣化したガソリンとタンク内壁のサビが混ざったペースト状の汚れがまとわりついた燃料ゲージはドロドロで、パーツクリーナーをスプレーする程度では汚れはまったく落ちません。
ゲージには電流が流れるため、抵抗部分にサビが混ざった状態で使うことはできませんし、グリスのような汚れが付着したゲージをガソリンタンク内で使えば、いつまでたっても汚れが染み出してしまい、ガソリンタンク本体のサビを除去しても新たなサビの原因になる可能性もあります。
そこで、ゲージユニットをできる限り分解して、灯油やガソリンにつけ込んでブラシで洗浄します。
- ポイント1・タンクのサビ取り時には燃料コックの洗浄が必要
- ポイント2・燃料計付きの機種は燃料ゲージも要確認
分解できるところまで開けて丁寧に洗浄
タンク内にガソリンがたっぷり入っているとフロート位置が高くなる。この時摺動抵抗の抵抗値は小さく燃料計のコイルに多くの電流が流れるため、燃料計の針は満タン状態を指す。
タンク内のガソリンが減ってフロートが下がると抵抗値は大きくなる。すると燃料計に流れる電流が減少するため針の振れが小さくなり残量が少なく示される。
泥の中から掘り出したかのようなカワサキゼファー用の燃料ゲージは、ガソリン量を示す要である摺動式抵抗部分に保護カバーがかぶっていて、ツメを起こすことでカバーが外れます。腐敗したガソリン特有の強烈な悪臭に耐えながらガソリンに浸して歯ブラシで優しくこすっていくと、やがて汚れの下から銅線が巻かれた抵抗が見えてくるので、すべての汚れを丁寧に取り除きます。
どこまで分解するかはゲージの構造や仕組みにもよりますが、ボルトオンパーツは外せるだけ外して洗浄した方が良いでしょう。
洗浄してすすぎ終わったらゲージの機能も確認しておきます。手順は簡単で、ゲージ配線の抵抗値を測定します。満タンとガス欠位置で抵抗値がどんな値を示すかは、機種によって異なるため一概には言えませんが、少なくともフロートの位置によって変化すれば、ゲージとしての機能は働いているといえます。
燃料ゲージとガソリンタンクに挟まれて柔軟性が失われてカチカチになったガスケットも復元時に新品するのが必須です。ガソリンタンクのサビ取りを行った際には、周辺部品のメンテナンスも必ず行うようにしましょう。
- ポイント1・ガソリンや灯油に浸してブラシで汚れを落とす
- ポイント2・フロート位置によって抵抗値が変化することを確認
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