愛車にUSB電源やフォグランプなどのアクセサリーを追加する際、バッテリーターミナルに直結する以外は純正の電気配線を分岐して電源を確保するのが一般的です。手段はいくつかありますが、なるべく簡素かつスマートで、必要十分な機能を持たせたいものです。ここでは、ある程度の工具とテクニックを要しますが後付け感が少なく、組み付け後にも着脱が可能な分岐方法を紹介します。

簡単なのはエレクトロタップだけど……

電気系アクセサリー取り付け時の配線分岐方法としてもっとも簡単なのは、エレクトロタップを使った分岐です。金具部分に配線をセットしてプライヤーで掴むだけで、配線の被覆をカットして芯線に食い込んで導通するため、被覆剥がしやはんだ付け、絶縁用のビニールテープも不要です。

ただ、エレクトロタップはそれ自体がけっこうかさばり、ヘッドライトケース内で分岐させるような場合は邪魔になることもあります。また、分岐が複数になりエレクトロタップがいくつか並ぶと、あまり見栄えが良くないという問題もあります。
分岐部分をスリムに仕上げるには、スプライスを使用するのが有効です。スプライスについては過去の記事で紹介していますが、ギボシ端子のカシメ部分に似たU字状の金具で配線の芯線をかしめて使用します。これならエレクトロタップより格段にコンパクトに分岐できます。ただし被覆を剥がす作業や金具をかしめるための電工ペンチが必要になります。またスプライスは金属素材が露出するので、ビニールテープや熱収縮チューブを使った絶縁作業も不可欠です。

電源の分岐を前提とすると、エレクトロタップもスプライスも恒久的な分岐となり抜き差しできない点には注意が必要です。分岐した配線がそのままスイッチやアクセサリーまで一直線につながるのが都合が悪い場合、配線の途中にギボシ端子を取り付けます。

サブハーネスを自作すれば純正配線のギボシ部分から分岐できる

既存配線の途中から分岐線を取り出したい場合、エレクトロタップを使うのが最も簡単です。また被覆を部分的に剥がすことができ、電工ペンチを持っているならスプライスで分岐するのがスマートです。
これらに対して、既存配線の途中にあるギボシ端子接続部分から分岐する方法もあります。この場合、電工ペンチとギボシ端子が必要ですが、必要に応じてスマートに分岐できるのが特長で、分岐のための新規配線をサブハーネスと呼ぶ場合もあります。
サブハーネスはそれ自体をあらかじめY字状の二股にしておき、一方を車体配線のギボシを外して割り込ませて、もう一方からアクセサリーの電源を取り出します。USB電源の取り付けであれば、イグニッションキーONで通電するアクセサリー回路のプラス側のギボシ端子を抜いて、サブハーネスを割り込ませるイメージです。

先に説明したように、エレクトロタップやスプライスで配線を分岐しても、分岐した先のにギボシ端子を付けないとスイッチやアクセサリーまで配線は一本道になってしまいます。Y字状に分岐するサブハーネスはそもそも配線端部をギボシ端子でまとめるのが一般的なので、サブハーネスとアクセサリーの配線は任意に抜き差しできます。またサブハーネス自体がギボシ端子による接続なので、不要になればいつでも取り外してノーマル仕様に戻すこともできます。

ちなみに、市販の電気系アクセサリーの中にもエレクトロタップとサブハーネスが付属する製品もあります。デイトナが販売しているUSB電源の場合、ブレーキスイッチから分岐するサブハーネスが付属しています。前後のブレーキスイッチは単純なオン/オフスイッチで、イグニッションキーをオンにするとスイッチ部分にまでプラス電流が流れ、ブレーキレバーやブレーキペダルを操作するとスイッチ接点が閉じてブレーキランプに電流が流れて点灯します。

この場合、サブハーネスを接続するのはスイッチに入力する配線側になります。スイッチ後に割り込ませると、ブレーキを操作している=ブレーキランプが点灯する時しか電気が流れないので注意が必要です。

「行って来い」でかしめれば端子抜け防止に効果がある

電源を取り出すサブハーネスを自作する場合、2本の配線を並べて片側の芯線をより合わせてギボシ端子をかしめ、もう一方の端部は2本それぞれにギボシ端子を取り付けてY字状にします。
ここではギボシ端子を使用したサブハーネスの製作を紹介していますが、ギボシ端子を使用する際は電気の流れを意識することが重要です。バッテリーからスイッチに電流が流れている配線にサブハーネスを割り込ませる場合、電気の上流であるバッテリープラス側のギボシは必ずメスを使用しているはずです。

ギボシにはオス/メス両方に絶縁スリーブが取り付けられていますが、メス端子の絶縁スリーブは端子金具全体をカバーしています。一方オス端子の絶縁スリーブはカシメ部分だけで、金具の先端は露出しています。
端子が接続されている状態では、オス端子金具の露出部分はメス端子の絶縁スリーブ内に収まっているため、フレームやエンジンなどの金属部分に接触しても問題はありません。しかしもし端子接続部分のプラス側にオス端子を使用した場合、何かの拍子にギボシが抜けてオス端子の金具部分が車体金属部分に接触するとショート状態となり大変危険です。

セオリー通りプラス側にメス端子を使用していれば、ギボシが抜けても絶縁スリーブの働きによってショートは発生せず、オス端子には電流が流れていないので問題ありません。
この法則に従えば、サブハーネスのバッテリーに近い入り口側はオス端子となり、スイッチやアクセサリーはメス端子となります。

1本の配線を2本に分岐する際、ギボシ端子のカシメ部分で2本の配線を同時にかしめたいと考えるのは誰しも同じでしょう。しかしこの作業には注意が必要です。
通常、1本の配線をかしめる際は、カシメの金具部分が被覆に食い込んで抜けを防止します。しかし2本の配線を並べて電工ペンチでかしめると、金具の爪が被覆を巻き込むだけで食い込みません。そのため、配線を強く引っぱると爪をすり抜けてしまうことがあるのです。しかしせっかくY字状に分岐させるなら、すっきりとギボシ部分から2本並列に分岐させたい。

そんな時にヒントになるかもしれないのが、分岐に使用する配線の被覆を剥がしたら、芯線を切断せずにギボシ端子でかしめるやり方です。ワイヤーストリッパーの中には、配線の先端部分だけでなく中間部分の被覆を剥がせるものもあることは以前の記事でも紹介しましたが、Y字分岐の根元部分の被覆を剥がしたら芯線をU字に折り曲げて、ループ部分を跨ぐように端子の爪でかしめるのです。

こうすることで、被覆部分のかしめが抜けるようなことがあっても、芯線のU字部分が爪に掛かって外れないことが期待できます。もちろんこれも、引く力が強く芯線が切断すれば抜けてしまうので、絶対安全というわけではありません。しかしながら、Uターン部分があることで2本の配線の芯線が切りっぱなしで並ぶより、耐久性では有利だと考えられます。

このように電気系アクセサリー取り付け時の電源確保において、サブハーネスの製作はとても有効です。ギボシ端子をかしめる際は、Y字分岐の根元の処理に注意して作業を進めましょう。

POINT

  • ポイント1・アクセサリー取り付け時の電源確保には、エレクトロタップやスプライスの他にサブハーネスを使用する方法もある
  • ポイント2・純正配線のギボシ接続部にサブハーネスを割り込ませることで、車体側配線に加工することなく電源が取り出せる
  • ポイント3・サブハーネスを自作する際は電気の流れる向きや極性を考慮してギボシ端子を選択する
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