
HONDA Trail CT110(型式CT110B) 1981年型のセミレストア物語 Vol.04
完全分解+パーツの磨き作業を行うために、フレーム単品になったCT110ハンターカブ。フレーム単体だからと言って、塗り直し=オールペン仕上げにする予定は無い。ここでは、せっかくのタイミングを利用し、コンパウンドを使ってフレームを磨き出し、必要に応じて、タッチアップ=筆入れ補修で仕上げることにした。
前回
磨けば必ずきれいになるのが部品
この年代のホンダ製赤フレームモデル(FTR250なんども同様)は、赤色塗装がたいへん薄く、決して硬くない塗膜なのが特徴だ。一生懸命磨き込んでしまうと、下地に施されているプライマーのグレーがすぐに露出してしまうので要注意。ガソリンタンク下やシート下のフレームペイントコンディションは、露出していた部分と比べてさすがに良い。部分的に、サビ止め用として知られる赤塗料が塗られていた。
やり過ぎ、磨き過ぎには要注意
工具ショップのストレートで購入できるポリッシャーとコンパウンドを利用して、単品になったフレームを磨き込むが、チカラ強く回転バフを押し付け過ぎないように要注意。コンパウンドには中目、微粒子、超微粒子の3種類あるが、塗膜がやわらかい赤ペイントなので、最初は超微粒子コンパウンドを使って、磨き過ぎにならないか確認してから作業進行するのが良いだろう。回転パフを強く押し付けるのではなく、回転させながら滑らせるように磨き進めるのが良いようだ。バフスポンジに付着した汚れからも理解できるが、赤色塗膜は相当に柔らかく、削れやすい。その分、磨き易くはあるようだが……。
慌てず焦らずのんびり磨こう
黒ずみ汚れが目立ったメインパイプ付近の磨きには、敢えて中目コンパウンドを利用してみた。しかし、やはり削れやすいので微粒子コンパウンドを利用したほうが気楽に作業進行できる。中目で磨いたことで汚れはすぐに取れたが、ペイント膜は明らかに薄くなってしまったように見える。一般の黒フレームは、塗膜がカチッと硬く、そこそこの力を入れて磨いても大丈夫なことが多いが……。強く押し付けようが優しく磨こうが、フレームが固定されていないと作業性は今ひとつ良くないので、誰かに押さえてもらうのも良い。
あちこちにある補修タッチアップ痕は指先磨きで除去
スイングアームやバッテリーケース周辺は、バッテリー液がオーバーフローしたのか、塗膜が剥がれ落ちて地肌からサビが出ている部分もあった。そんな部分には、近似の赤色塗料やサビ止めの赤塗料が塗られていた。ウエスにコンパウンドを塗布して指先で擦るだけで、ウエスはすぐに赤く染まってしまった。近似色の赤色ウレタン塗料を準備して、重ね塗りでタッチアップ対処してみようと思う。
- スーパーカブ×メンテの世界・ペイント剥げやサビが出ている時には、筆入れタッチアップペイントで対処するのが良い。同色ペイントでタッチアップする際には、缶スプレーの場合はフタの裏側へ塗料を吹き付け、その塗料を筆にとってタッチアップするのが良い。汚れを落として部分的なペイントハゲをタッチアップするだけでも、好印象な仕上がりになる。くれぐれも慌てずに、じっくりの作業進行しよう。
せっかくここまで分解したのだから、純正ペイントよりも高品質な塗料を使って、フレームはオールペンしてしまった方が手っ取り早く美しくすることができる。もはやフルレストアに近い作業内容だが、磨き込みとタッチアップペイントだけで、どれほど見違える仕上がりになるのかも興味津々なところだった。
CT110のフレームを磨いて感じたのは、一般の黒フレームの塗膜強度とは違って、ペイント膜がやわらかく削れやすいことだった。例えば、ワイヤーケーブルの取り回しでケーブルアウターとフレームが擦れる部分は、下塗りのグレープライマーが露出していたし、メインハーネスが擦れた部分も塗膜が薄くなっていた。赤色塗料は発色が今ひとつ良くなく色ムラになりやすい傾向もあるので、下塗りとして明るいプライマーを吹いてから赤塗料を吹いて仕上げている。このペイント工程は同年代に発売されたFTR250も同じだった。
強く磨き過ぎると簡単に塗膜が薄くムラになってしまうので、最初からウエスにコンパウンドを塗布して、手磨きで仕上げてもよいだろう。最終的には筆入れタッチアップで仕上げたが、この時にありがたいのが「ノンシリコン」のコンパウンドである。ここで利用しているストレートのコンパウンドは、ペイントショップや自動車鈑金工場でも使われている、ワックス成分が入っていないコンパウンドだ。ワックス入りコンパウンドで磨くとツヤは出るが、重ね塗りでクリアを吹き付けると、クリア塗膜が弾いて最悪な結果となってしまうからだ。また、過去にポリッシングで使ったスポンジバフやウールバフの中古品を再利用する際には、新たなコンパウンドで作業する前に、必ず、中性洗剤を利用してバフをしっかりもみ洗いしよう。汚れの中に粒度の異なるコンパウンオドが残っていると、狙った粒度での磨き作業を出来なくなってしまうからだ。
ペイントは前後工程を含めて神経を使う作業だが、ポリッシングも同じなので、作業進行する際には、間髪入れずに一気に作業進行するのが良いそうだ。
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