
外装パーツが取り外されているからこそ、メンテナンスや仕上げの手を入れておきたい部分って、ありますよね!? 薄汚かったBMW K75Sをリフレッシュしている今回は、ブレーキパッドの影響でレコード盤のようになりかけていた、前後ブレーキローターを研磨依頼。また、フロントフォークはオイルシール交換を行うので、その作業と同時にボトムケースのリペイントを実践することにした。さらにブレーキキャリパーもオーバーホールの段取りを進めることにした。
前回
ディスクローターのパッド面はフラットに限る!!
ブレーキ系メンテナンスを実践するにあたり、極めて効果的なのがディスクローターの平面研磨だ。ピン部分で作動するフローティングディスクだと研磨は難しいが(鋳鉄ローターの旧ブレンボのような作りなら分解して依頼可能)、インナーローターとアウターディスクローターがリベット固定のリジッド仕様なら、平面研磨(ここでは旋盤利用のローター研磨)を施すことによって、ブレーキパッド摺動面が平面になり、ブレーキパッドの当たりがより一層効果的になる。一見では、摩耗段差が多く感じたBMW Kナナゴーのローターだったが、実際には片面で0.2~0.3ミリの研磨しろだった。裏表両面を研磨しても、ローターの厚さは0.5mmも減らなかった。研磨後のローターには新品パッドを組み合わせるが、単純な新品パッドへの交換とは大きく異なり、極初期のパッド馴染みが取れれば、驚くほど利くブレーキになる。このローター研磨はiB井上ボーリングさんへ依頼した。
撮影協力/iB井上ボーリング www.ibg.co.jp
分解ついでの「せっかくメンテ」
ここ数年、旧車のレストアばかり楽しんできたので、インナーチューブは再硬質クロームメッキ処理に依頼するパターンが多かった(いつも福岡の東洋硬化さんへお願いしてます)。このKナナゴーのフロントフォークは程度が良く、摺動部分に点サビが無かったので、分解洗浄とオイルシール交換を行い、そのタイミングでボトムケースをガンコートペイントのサテンブラックで仕上げることにした。真っ黒け外装で、華など一切無かったBMW K75Sを仕上げている今回は、美しさと輝きを求めるうえで、キーポイントになるのが「各パーツのペイント仕上げ」にあることは、作業開始当初から理解していた。外装パーツは、1972年に登場したBMWスポーツの象徴でもある「M」シリーズを意識した、パールホワイトベース+Mラインに決定。そうなると足周りパーツを、どのようなカラーコーディネートするか……センスが問われる部分でもある。ホイールやブレーキを魅せるために選んだペイントが、ガンコートのサテンブラックだった。通常のウレタンブラックでも良いのだが、ペイント道具と高温乾燥機器があれば、高い密着力のガンコートは、実に扱いやすく、仕上がりも歩留まりも良いペイントなのだ。ペイント後の組み立て時に使うオイルシールは、プロトが取り扱うARI製(アリート製)を使うことにした。
取材協力/プロト www.plotonline.com
ブレンボキャリパーも完全オーバーホール
左側フロントキャリパーから、僅かにブレーキフルードが滲んでいた分解前。ブレーキキャリパーは、分解オーバーホールと同時に、キャリパー本体をガンコートペイントのシルバーで仕上げることにした。当初は、ホイールと同じゴールド系カラーで仕上げようかと思ったが、ホイールの輝きを優先的に魅せようと考えると、一歩引いた印象となるカラーの方が相性は良いはず。そこで、ボトムケースと同じサテンブラック(半ツヤブラック)にしようと思ったが、ちょっとだけ主張感のあるガンコートシルバーでペイントすることにした。ペイント後にアンマッチな印象なら、再び塗り替えれば良いだけのことだ。エンジンの冷却を考え、機能ペイントとしてガンコートをチョイスする例が多い。実は、ブレーキキャリパーの仕上げペイントにこそ、ベストチョイスと言えるのがガンコートでもある。ブレーキキャリパーのメンテナンス時には、ブレーキクリーナーやパーツクリーナーなど、洗浄ケミカル溶剤を吹き付けて作業する場面が多々あるが、ケミカル溶剤に対しても圧倒的な耐性を誇るのがガンコートで、洗浄後にペイント膜がベト付くこともない。仮にベト付くとすれば、それは乾燥硬化不良だと考えられる。ブレーキキャリパーピストンからフルード滲みが起こる原因は、ピストンシール溝に堆積した僅かなスラッジによるものだった。溝クリーニングツールで、ホジホジクリーニングを行い、マスキング後にサンドブラストで表面クリーニングを行った。その後、600番の耐水ペーパーで足付けを行い、ガンコートシルバーで仕上げた。
乾燥オーブンがあればガンコートペイントもDIY可能
前後ホイールに施す予定のゴールドペイント(キャストホイールはパウダーコートで依頼します)に合わせて、ツインカムカバーの間に締め付けるBMWロゴ入りのプラグカバーやオイルパンは、ガンコートペイントの「ブライトブラス」と呼ばれるカラーを利用した。発色が鮮やかなのが大きな特徴で、ぼくが好んで使うゴールド系ガンコートである。しかし、色名称としてはカッパー系でもあるブライトブラスになる。エンジン前方のフロントカバー(カムチェーンのタイミングカバー)やタンデムポンプ(ウォーターポンプとオイルポンプのハウジングとカバー)のペイントには、サテンブラックを利用した。久しぶりに使ったサテンブラックは、容器から移すときにツブツブがあったので(ゴミが混入してしまった様子)、利用するタイミングにペイント用フィルターでろ過したら、ツブは気にならず美しい良い仕上がりを得ることができた。DIYペイントというと、吹き付ける作業にばかり気が向いてしまうが、ペイントは「周辺環境や塗料の取り扱いに」よっても仕上がりに差が出るので、素人ペイントだからこそこのような部分に気を付けて作業進行していこう。
ガンコート国内総発売元/カーベック www.carvek.jp
- バイクを美しく仕上げるポイント・細かな部品が薄汚れて汚いと、バイクは美しく見えないものだ。ガソリンタンクやサイドカバーなどの外装パーツや大物のフレームなどを塗り替えたいときにはプロへ依頼するのが賢明だが、小物パーツに関しては、DIYペイントでも塗れないことは無い。ペイントインフラを充実させることで、DIYバイクいじりは一気に高品位なものになる。
バイクを美しく仕上げる、また、本来の性能を引き出すためには、必要不可欠な作業があることを忘れてはいけない。「走る」「曲がる」「止まる」のバイク基本三要素の中でも、特に大切なのが「止まる=ブレーキ性能」だろう。不人気BMWのリフレッシュ計画では、美しい仕上がりを求めるだけではなく、機能的な性能向上も目指している。そのひとつにブレーキローターのリフレッシュ=ローター研磨がある。過去にフルレストアの経験があるホンダCB750やカワサキマッハ、カワサキZ2の時にも、ディスクローターの研磨は行ってきた。新車時や新品部品では、完全なフラット面だったはずのディスクブレーキローターが、走行時のハネ石やゴミの付着などによって、気が付いた時にはレコード盤のような小さなスジが入った凸凹面であることに気が付くことが多い。レコート盤程度ならまだしも、悪路の轍のように波打ったローター面になった車両もある。
原因は様々だが、意外と知られていないのが、雨天走行時に起こる摩耗だ。タイヤに巻き上げられた雨水は、空から降ってくる雨とは大きく異なっている。路面から巻き上げられた雨水には、砂利や小石が多く混ざっていて、それが走行中のブレーキローター面とブレーキパッドの間に挟まってしまい、ローターにキズを付けてしまうことが多いのだ。最悪なのは、小石がブレーキパッドに食い込んでしまい、小石が原因のローター摩耗が長時間続いてしまうことだ。雨天走行後のメンテナンス時には、ブレーキローターやキャリパー周囲をしっかり洗浄し、ブレーキパッドを取り外して、摩擦面のコンディションを確認するのが良いだろう。個人売買ページのうたい文句の中には「雨天時未使用」とカ「雨天走行していません」との記述があるが、それが本当ならブレーキローターのコンディションは、間違いなく良いはずだ。
内燃機加工のプロショップと言えば、エンジン部品の修理やボーリングなどがメイン業務だが、砥石による平面研磨機をもつiB井上ボーリングでは、ロータータイプによっては、シリンダーヘッドの面研磨と同じ要領で、ブレーキローターの研磨作業も引き受けてくださる。旧車に多い、インナーローターとアウターローターがリベット固定されたリジッドタイプの場合は、大型旋盤にブレ防止の専用面盤を段取りし、ローター研磨を行っている。しかし、ローター研磨にも限度があり、メーカー指定の厚さ以下に仕上がってしまうものは(MIN◎mmなどのミニマム数字が記されている)、研磨したところでブレーキ熱によって早々に変形してしまうため、摩耗が激しいものは新品ローターへの交換が賢明だろう。
部品仕上げのDIYペイントは、周辺インフラの充実が大きなカギを握るので、バイクいじりを徹底的に楽しみたいサンメカなら、増車や部品の購入ばかりではなく、工具や道具などのインフラ環境整備にも、気を配ることだろう。
次回
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K75S、とても乗りやすいバイクですよ。
加速する時は特に、独特なジェット機のようなエンジン音がして、
それが気に入って2台(どちらもK75Sスポーツ)乗り継ぎました。
(1台目はもらい事故で廃車、2台目は現在ナンバーを切ったまま所有)
1台目のアンダーカウルがまだ残してあったはず。。。
細かい傷等有りますが、案外探しても出てこないかも。
もし興味があればご連絡ください。