
外装部品を分解すると、意外なほどに様々な個所へ「直接的に手が届く」のが、BMWのK75シリーズの特徴であることを知った。想像した以上に、取り外したい部品へ、直接的にアクセスできるメンテナンス性だったのだ。外装パーツが取り外されたままのこのタイミングで、様々な対策やアップデート!?にもチャレンジしてみようと思う。
前回
ヤマハV-MAX用ラジエターファンを流用装着



SNSを通じて様々なアドバイスをくださる、BMWマイスターかつバイク仲間の知り合いがいます。1980年代には、ディーラーでボクサーツインや直列エンジンのKシリーズを、相当数メンテナンスしてきた経験があるそうで、トラブル対処経験も豊富。「具体的に教わった対策①」が水冷ラジエターのファン問題。BMW純正モーターは、突然故障して動かなくなることを何度か経験していたので、安定性能を誇る国産バイク用を「あらかじめ流用装着するのが良いですよ」と教わった。そこで、ネットオークションで画像を確認し、ぼくがチョイスしたのはヤマハの初代V-MAXシリーズ用。モーターハウジングステーを改造し、BMW K75シリーズ純正のラジエターへ、ボルトオン装着できるようにした。
トヨタ純正サーモスタットの流用


「BMWメカニックから教わった対策②」が、水温管理用サーモスタットの流用だ。BMWモーターサイクル初のフューエルインジェクション車であり「水冷量産車」であるのがKシリーズ。詳細温度は再確認が必要だが、何と「トヨタ純正部品」の中に、BMW純正サーモスタットと寸法関係が同じで、開放温度が3~4度低い商品があるらしい。その部品に交換するとエンジン冷却がより安定するそうだ。教わった部品を購入すると実に格安。BMW用サーモスタットからフランジゴムを移植して(トヨタ純正はフランジゴムが別売りでした)、ラジエターのサーモハウジングへ組み込んでみた。お話で聞いていたようにボルトオン。水温上昇するとこれまで以上、早めに開放するので、ファンが回り始めても、すぐに冷えてモーター停止するらしい。これは楽しみですね~
クラッチレリーズアームを延長した理由は……




ドゥカティのベベルLツインやワイドケース時代のドゥカティシングルは、クラッチレリーズアームをカットして「長く溶接し直す」ことで、テコの応用の位置関係を変更することで、クラッチレバーの操作感を軽する改造が知られている。それと同様で、やや重く感じた(ベベルドゥカティと比べればまだまだ軽い)、K75Sのクラッチ操作を軽くするため、BMW純正のアルミ鍛造クラッチレリーズアームを途中でカット(カットする箇所が重要なようです)して、アルミ削り出しのコマを溶接して延長した。コマの中央には突起を作り、圧入接続してから溶接固定することにした。クラッチレバーの操作感は、予定通り軽くなりました!! 伸ばした長さは30ミリが限界で(物理的にアームが干渉してしまう)、クラッチレリーズの押し込みストロークは確保できたようだ。ストロークが減るとクラッチの切れが悪くなってしまうからだ。
- バイクを美しく仕上げるポイント ・外装パーツをすべて取り外し、さらに電気系部品もすべて取り外すことで、完全なローリングシャシー状態になっている現在。そんな状況であれば、様々なパーツへ直接的に手が入りやすい=アクセスしやすくなるこんな絶好のタイミングを利用して、各部品の磨き込みや普段ではなかなかできない部品のメンテナンスを行うのがよい。そんな作業によってリフレッシュ度はさらに高まる。
「せっかくメンテ」と題したメンテナンス企画を、モトメカニック本誌では展開したことがある。クルマでもバイクでも、せっかくこの部品を取り外すのなら、こちらの部品も同タイミングで「メンテナンスしておこう」とか、予防措置で「何か起こる前に部品交換しておこう」といった状況になることが多い。そんな考え方でバイクメンテナンスに接することで、バイクは常に快調かつ美しさを保てる傾向になる。
例えば、ハンドル交換したいときには、ハンドル周りに取り付けられている部品をすべて取り外し、ハンドルを単品にしてから取り外すことになる。そんな作業時に、例えばスロットルパイプのワイヤー引っ掛け部分やハウジング側のグリスを拭き取ったり、洗い流して、新しいグリスを塗布するのも予防メンテナンス=せっかくメンテの精神だろう。さらに一歩踏み込むとしたら、例えば、ハンドルスイッチ内部のグリス汚れを綿棒で拭き取り除去して、新たに新品グリスを塗布するのも、せっかくメンテになるはずだ。せっかく分解したチャンスなのだと捉えて、無駄なく効率良くメンテナンスを楽しもう。
BMW K75Sのリフレッシュ企画では、数名の「経験者」から様々なアドバイスを頂くことができた。K100RSやK75Sを所有した経験がある元オーナーさん。元ディーラーメカニックだったバイク仲間の先輩からは「困った時には何でも聞いてくださいね」 と、心強いお言葉を掛けていただけもした。幸にも不幸にも、直列エンジンの水冷BMWが登場した当時、1980年代にBMWの取扱量が多いディーラーメカニックを務めていたそうだ。そんなBMWの先輩から、様々な具体的エピソードをお聴きすることもでき、自分が走らせ始める前から、なんだか色んなことを知ったような気がしたほどだ。
そんな中でも、特に「要注意ですよ!!」と注意喚起されたのがBMW初の水冷エンジンにまつわる様々な部品。それがラジエターの冷却ファンであり、サーモスタットでもある。試行錯誤で悩むのも嫌いではないが、ズバリ回答を頂けるのは、実に心強いものだ。
クラッチレリーズレバーの改造は、ぼくの個人的な感覚で実践してみた。仮に、思い通りに行かない時には、元通りにすれば良いと考え、改造ベースとなるレバーには別途調達した中古部品を利用することにした。幸いにも、BMWとは言え、大人気の空冷ボクサー系の旧車とは大きく違って「超」がつくほどの不人気モデルがKナナゴーシリーズである。そんな不人気車に興味があることを不思議に思われることが多くありますが、現代の超性能バイクとは違い、また1970年代以前の旧車とも違った、独特のフィーリングを持つのが2バルブエンジンのKシリーズなのであります。
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クラッチレリーズアーム延長の件、この方法だと高さが変わっただけでレバー比は変わっていないようにも見ますがもう少し解説をお願いいたします。