
しっかり調整管理してさえいれば、不都合無く気持ち良く走ってくれるのがポイント点火車である。現代的には、トランジスタ点火やCDI点火が当たり前だが、まだまだフラマグポイント点火方式やバッテリー点火方式を愛するファンは数多い。何よりも心強いのは、その単純なメカニズムと言える。旧車に多いポイント制御の点火システムだが、実は、好調不調のカギを握っているのはポイントではなく「コンデンサ」にあることも認識しておこう。
目次
バッテリーとは違った蓄電装置がコンデンサ
コンデンサとは、電圧を安定させてノイズを取り除くなどの機能を持っている。点火用エキサイターコイルから出力された電気はIGコイルの一次側に流れ、同時にその電気をコンデンサがバックアップする。コンデンサはポイントと並列で接続されていて、ポイントの断続時にボディ内に溜めていた電気が一気にIGコイルへ流れるため、その作用によってスパークプラグが着火する仕組みとなっている。これが原付などの小排気量モデルに多いフライホイールマグネトー点火方式=フラマグ点火方式の原理だ。つまりコンデンサ機能が低下すると、着火性能が著しく低下してしまうことを知っておこう。
コンデンサテストモードで容量を確認してみよう
コンデンサテスターもしくは一般の電気テスターの「μF」モード(コンデンサテストモード)で、コンデンサ容量を測定してみよう。ここでは、新品部品のコンデンサとエンジン不調のコンデンサを比較してみた。内部破壊によってコンデンサ容量数値が設定値と異なっていることがわかる。コンデンサ数値は、ボディに刻印などで明示されていることも多いので確認してみよう。
アウターローターモデルはローター内側へのレイアウトが多い
フラマグポイント点火方式を採用した単気筒エンジンの場合は、2ストエンジン、4ストエンジンを問わずアウターローター仕様車が多い。このマグネットローターを取り外すためには、モデルごとに専用プーラーが必要になる。プーラー利用時には、ローターの回転を固定するためのホルダーも必要になる。ベルトをローター外周に回すタイプとローターサイドの穴に棒を差し込み固定するタイプなどがある。ここでは、自転車用の専用ツールを流用している。フライホイールを取り外すと、ローター外周の内部にはS⇒N⇒S⇒N⇒の順で磁石が組み込まれている。向かって右上のコイルが6V制御の充電用チャージコイル(発電コイル)で、細い皮膜銅線で巻かれた左下のコイルが、点火用のエキサイターコイル(点火コイル)である。中間にセットされる筒状、タイゴ状の部品が「コンデンサ」だ。大型モデルの中にはギボシ端子を接続するだけで結線完了になるタイプもあるが、アウターローター仕様の場合、その多くがハンダづけによる結線になる。
ハンダ結線時のコツは「素早く確実な作業」に尽きる
ここでは100Wサイズのハンダごてを利用したが、もう少し小さな熱容量でも作業はできる。旧コンデンサにてんこ盛りされたハンダの山を温めることで、ハンダが溶けて配線を抜き取ることができる。100W級のハンダなら、このようなテンコ盛りでも容易に溶かすことができた。重要なことは、無駄な熱を加え過ぎて部品にダメージを与えないことである。コンデンサのタイプや各モデルによっても異なると思うが、このコンデンサには配線を束ねる金具と配線を全体的に抑え込む金具が2つ取り付けられていた。ハンダを溶かしながら金具を起こし配線を外した。
ホンダ4ミニなら旧コンデンサからオイルフェルトを移植
旧コンデンサには、ポイントカムを潤滑するグリス保持部=オイルフェルトが取り付けられている。このフェルトは取り外して新しいコンデンサへ移植した。フェルトの油分は完全に抜けていて、乾燥状態となっていた。これではポイントカムへの潤滑はできないだろう。オイルフェルトを新しいコンデンサへ移植したら、フェルトが外れないように固定金具をプライヤーでつまんで閉じる。配線の結線とコンデンサボディをエンジンへマウントしたら、このフェルトにグリスを塗布して染み込ませよう。
素早い作業でハンダ結線を終えよう
旧コンデンサから外した配線。写真では左からエキサイターコイルの被覆銅線、ポイントへのリード線、IGコイルの一次側へつながるリード線の3本になる。これらの3線を新コンデンサへハンダづけし復元しよう。新コンデンサを仮止めしてから3本のリード線をハンダづけした。いきなりハンダを盛らないで、各配線の先端5mmくらいまであらかじめハンダを付けておく作業性は確実に向上する。コンデンサの接続部分や固定金具部分にもハンダをあらかじめ盛っておき、3本の配線束ねて接続したら、金具を曲げて配線をホールドしよう。その上からハンダごてで温めながら、新たなハンダを盛り付ければ良い。ハンダづけ作業は、素早く手早く行なうのが鉄則である。
- ポイント1・代替え部品が無い時にはコンデンサ容量に注目。同一の点火方式で同一容量なら、他モデル用のコンデンサでも流用可能
- ポイント2・大型車のバッテリー点火モデルでは、コンデンサの冷却を目的に車体側へレイアウトしてある例が多い
- ポイント3・ハンダ結線は手際良く進行し、リード線やコンデンサへ無駄な熱を与えないように作業進行しよう。無駄な熱はトラブルのもとになる
1970年代以前に登場したモデルに数多く採用されていたのが、ポイント制御式の点火システム車。通称で「ポイント点火」と呼ばれているのがこのタイプ。シンプルな構造と回路によって、故障が少ないことで知られているのと同時に、容易に修理することができる点でも、今尚、数多くのファンに支持されている。ここでは、フライホイールマグネトーによる交流電源で点火制御される「フラマグポイント点火車」に注目するが(中型モデル以下の単気筒エンジン車が数多く採用)、大型モデル、具体的にはホンダCB750KシリーズやCB400FOUR、カワサキ750RS/Z2や900/Z1などは、バッテリー電源による点火方式を採用している。それが「バッテリーポイント点火車」と呼ばれている。
ポイント制御車の場合は、ポイント接点のコンディション不良(焼けやゴミ付着による絶縁など)によって、プラグに火が飛ばなかったり、点火タイミングが狂ってしまい、エンジン性能を発揮し切れないことがある。アウターローター式フラマグポイント車の場合は、ポイントギャップ(接点全開状態時のポイント幅=ギャップ)を規定値(例えば0.3mmなど)に調整することで、点火タイミングがおおむね正しくなる設計となっているが、長年乗り続けられてきたことで、ポイントカムに乗り上げるポイントヒールが磨耗してしまうと、正確なギャップ調整ができなくなってしまうこともある。そんな状況にならないためにも、ポイントカムとポイントヒールがスムーズに摺動するために、オイルフェルトの存在がある。付着したゴミを吸い寄せつつ、ポイントカムにグリスを薄っすら塗ることで、ポイントヒールの摩耗を抑制しているのがオイルフェルトの役割だ。
走行中に息つき症状が起こり、バックファイアが発生するなどのトラブルを起こしたのがこのダックスだった。当初は、その症状からキャブレターが原因!?低速域が薄い……!?などなど考えたが、実は、キャブが原因ではなかった。しばらく休憩した直後の走りは調子が良いのに、しばらく走ると再び不調になる事象も現れた。つまり「エンジンが温まると何らかの変化が起こる」ことに気が付いた。不調になったときに、エンジンカバーを外してアウターローター内にレイアウトされるポイントの様子をアイドリング中に覗き見ると、ポイント接点ではバチバチッと火花が飛んでいた。その状況を目視した段階で「コンデンサ」がエンジン不調の原因なのだと判断できた。
ポイント車のコンデンサは、もちろん機種によっても異なるが、概ね0.25~0.30μF(マイクロファラット)前後の容量である。トラブル内容としては導通不良(断線)と経年変化による容量変化の2タイプがあるが、不調エンジンのコンデンサをテスターで測定したら0.99μFだった。おそらくエンジン暖機後にコンデンサが温まると容量維持ができなくなってしまい、点火不良となったようだ。ポイント車で不調に陥ったときには、ポイント接点のコンディション確認も重要だが、同時にコンデンサのコンディションも疑ってみると良い。
ポイント点火車の着火不良やエンジン不調は「コンデンサ」に要注目!! ギャラリーへ (17枚)この記事にいいねする