あけてビックリ!!真っ黒グリスがてんこ盛り!?
現代のバイクは、昔のバイクのようにフロントホイールからスピードメーターケーブルもしくはセンサーを取らず、リヤホイールの回転もしくは駆動系のいずれかに、メータードライブギヤもしくはスピードセンサーを設けている例が多い。撮影車両のカワサキW650は、ドライブスプロケットの回転軸にスピードセンサーがあるのと、スプロケットの近所にはクラッチレリーズユニットがレイアウトされているため、飛び散ったチェーングリスがドライブスプロケット周辺へ堆積してしまうことが多い。W650に限らず、日々の走行でドライブスプロケット室内には飛び散ったグリスやドロが堆積し、酷い状況になっていることが実は多い。ドライブチェーン周辺がシンプル構造の旧車の場合も、同じように汚れていることが多いので、定期的なクリーニングが必要不可欠だ。
チェーン交換時は先に洗浄作業から始めよう
機種によってドライブスプロケットの固定方法には違いがある。現代の大型車の場合は、センターロック式の固定法が多いが、小排気量モデルや大型車でも旧車の場合は、スプロケットに抜け止め固定プレートを組み合わせ、ボルトで締め付固定するタイプが多い。W650の場合は、センターナットを締め付けた後に、折り曲げ固定式のロックワッシャーで緩み止めしているので、曲げてあるロックワッシャーをタガネで起こしてからロックナットをインパクトレンチで緩める手順になる。取り外したロックワッシャーの折り曲げてあった部分は、万力に挟んで曲がりを戻しておくのが良い。
滅多に摩耗状況を確認できないドライブスプロケット
インパクトレンチでセンターナットを緩める際には、チェーンが欠けられた状態の方が作業性は良い。インパクトレンチが無く、ブレーカーバーを利用して腕力で緩める際には、誰かにリヤブレーキペダルを踏み込み保持してもらうか、ブレーキペダルを踏み込んだ状態で木っ端を差し込み、リヤブレーキを効かせた状態を維持するのが良い。リヤホイールが回らなければ、ドライブスプロケットのセンターナットは緩めやすい。スプロケット周辺の干渉物を取り外したら、チェーンを掛けたままでスプロケットを引き抜こう。
「目には目を」「油には油を」が、合言葉
汚れたグリスやドロの堆積に向けてパーツクリーナーを吹き付けたところで、簡単に洗浄などできるものではない。まずは不要な汚れウエス越しに指先を使って、汚れのかたまりをこそぎ落とし、次に、防錆浸透系のスプレーを吹き付け、刷毛型の縦ブラシで汚れを擦って解かすのか良い。汚れが柔らかくなったらパーツクリーナーで洗い流し、ウエスで拭き取れば完了だ。この手の洗浄時に効果的なのがCRC556などの防錆潤滑剤。驚くほど素早く、真っ黒な油汚れを分解してくれる。
- ポイント1・新品ドライブチェーンに交換しても、ドライブスプロケット室に旧汚れグリスが堆積していると、その汚れをチェーンが巻き込み飛散させてしまうことがある
- ポイント2・摩耗確認の機会が少ないドライブチェーンも、洗浄ついでに目視点検しよう
- ポイント3・あまりに酷い油汚れにはパーツクリーナーが効かない。まずは油を使って汚れの分解から始めよう。「油には油を」なのだ
ドライブチェーンメンテナンスを嫌がるライダーにお話しを伺うと、チェーングリスが飛散してしまい「リヤホイールが汚れから……」といったお話しを聞くことが多い。高性能チェーングリスが登場する以前は、確かに、専用グリスを塗布しても、ホイールの回転でグリスが飛散してしまうことが多かった。しかし、現代の商品は、吹き付けメンテナンス後にグリスがチェーンへしっかり付着し、飛散しにくい商品が多い。バイクにとってドライブチェーンは過酷に働くナンバー1部品なので、定期的な洗浄とグリスアップは必ず行いたいものなのだ。 チェーングリスを吹き付ける際には、その段取りで「ドライブチェーンの暖機運転」を行うことが重要だ。10分程度走れば、冷間時と比べれば相当に温まっていることを確認できるはずだ。温まったドライブチェーンにスプレーグリスを吹き付けることで、チェーンの隙間にグリスが浸透し、効果的な潤滑が可能になる。冷えたチェーンにグリスを吹き付けても、走ったチェーンが温まった時には、走行遠心力によって、本来潤滑したい部分ではない場所へグリスが移動してしまい、その効果を得られなくなってしまうのだ。
定期的なグリスアップを繰り返し行っているライダーなら、尚更、注目してほしいのが、この「ドライブスプロケット室のクリーニング」である。塗布したグリスがリヤホイールに飛び散らなくても、実は、回転周速が速いドライブスプロケットの周辺へ飛び散ってしまうことが多い。そんな飛び散ったグリスに雨水や泥が混ざり、ドライブスプロケット周りには、想像以上に油汚れが堆積しているものだ。ここでは、そんな汚れ落としに的を絞り込んだリポートを展開しよう。
そんな油汚れの洗浄時に威力を発揮するのが、実は、防錆浸透剤として知られるオイルスプレーなどだ。ここではCRC556を利用したが、堆積していた油の固まりをウエスで除去した後にスプレーし、縦型のブラシで汚れを擦ってみた。すると、真っ黒でこびりついていた油汚れが溶けて流れ出す様子を確認できた。そのようにドライブスプロケット室内の汚れを分解してから、パーツクリーナーを吹き付けることで、圧倒的な作業性の良さを得ることで素早くクリーニングできる。また、ドライブスプロケットを取り外して同じように洗浄することで、歯先の摩耗状況をクリーンな環境下で目視確認することができる。 完全洗浄後は周辺パーツの復元だが、周辺パーツも同じ手順でクリーニングしてみよう。W650の場合は、スピードセンサーブラケットやクラッチレリーズ周辺、そして、ドライブスプロケットカバーの裏側、などなどが汚れていた。作業完了後は、部品の美しさ、その輝きを見て、充実感、満足感を得られるはずだ。
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