バイクにとって見栄えやスタイルは重要ですが、それ以上に捨てがたいのが利便性です。USB電源やドライブレコーダーなどの電気アクセサリーは、便利で安全性を高めるパーツとして人気があります。装着時には欠かせない電源取り出しにおいて、絶版車や旧車ユーザーが心配なのが純正配線への負荷や負担です。それを解決する一助となるのが、「アクセサリー電源ユニット」です。
ヒューズが少ない絶版車や旧車は、電源の取り出しが難しい
バイクはノーマルのスタイルが一番で、ゴチャゴチャと余計なアクセサリーやパーツを追加したくない。絶版車や旧車ユーザーの中にはそうした考えの人もいますが、スマホナビやスマートモニターなどの電子機器のありがたみを知ってしまうと、見た目はともかく便利さは失いたくないと変節するパターンも少なくありません。
便利グッズだけでなく、ドライブレコーダーやETC、さらにはグリップヒーターや電熱ベストなど、かつては存在しなかった安全性や快適性を向上させるアイテムも身近にたくさんあって、それらを活用することでバイクライフが一層充実するのは確かです。
こうした電気アクセサリーの電源は車体の配線から分岐して取り出すのが一般的です。その際、どの回路から電源を確保するかを考えることが重要です。現行モデルの車体配線は、一例を挙げると「イグニッション」「燃料ポンプ/ECU」「ヘッドライト」「ウインカー/ブレーキ」「電動ファン」というように、電気系統ごとに数多くのヒューズを使用しているのが一般的です。
このように細分化することで、どこか一カ所で問題が発生してヒューズが切断しても、その影響を最小限に留めることができます。これを利用すれば、電気アクセサリーを装着する際にどのヒューズの下にある配線を分岐すれば良いか想定できます。
もちろん、追加するアクセサリーの電源を取り出しても車体配線のヒューズは切れないのがベストですが、万が一切れた際に「イグニッション」や「燃料ポンプ/ECU」用ヒューズより、「ウインカー/ブレーキ」系統のヒューズの方が被害が少ない=即座に走行不能になることはないのは確かです。
ところが、こうした常識が当てはまらないことが多いのが絶版車や旧車です。
インジェクションもABSもない1970年代のバイクは各部の構造がシンプルなのが魅力のひとつですが、電装系に関してもシンプルというか大雑把な作りを採用しています。
例えば絶版車最強の人気モデルであるカワサキZ1には、なんと20Aのガラス管ヒューズが1本しかありません。イグニッションもヘッドライトもテールランプ回路も、すべて1本のヒューズで守られています。
裏を返せば、車体のどこで異常が発生してヒューズが切断しても、イグニッションに電気が流れなくなるため、いきなり走行できなくなります。
そのため、USB電源やドライブレコーダーの電源をヘッドライトから分岐しようが、ウインカー配線から取り出そうが、何かのきっかけで「パチッ」とショートしたらエンジンも止まります。
これでは使い勝手が悪いと判断したのか、Z1の後継モデルであるKZ900では「メイン」「ヘッドライト」「テールランプ」の3系統ヒューズとなりましたが、ブレーキランプやウインカーリレーの電源はメインから取り出しています。
このため、ブレーキスイッチやウインカーリレーの電源を分岐して取り付けたアクセサリーがショートすると、メインヒューズが切れてエンジンが停止します。だからといってヘッドライトもテールランプも切れて良いわけはないので、電気いじりに興味があるライダーにとって、絶版車や旧車は厄介な相手となるのです。
車体配線とは別に電源を取り出せる「アクセサリー電源ユニット」
絶版車や旧車のように元々ヒューズの数が少ない車種は当然のこと、多系統ヒューズを採用している現行モデルにとっても、さまざまな電気部品を追加する際に重宝するのが「アクセサリー電源ユニット」です。ここではデイトナ製のD-UNITを例に説明します。
この製品の特徴は、電気パーツの電源を車体配線に依存することなくD-UNITから直接取り出せる点にあります。
具体的には、D-UNITの電源コードをバッテリーに直結して、アクセサリー電源ハーネスをメインキーをONにした時に通電する車体配線に接続します。D-UNITの本体内部にはリレーがあり、アクセサリー電源ハーネスに電圧が加わると4つの電気パーツに電源を出力することができます。
そして各電源には低背ヒューズが組み込まれているので、取り付けた電気パーツでトラブルが発生してもD-UNIT内でとどまり、車体配線に影響を及ぼすことはありません。この製品の場合、合計で最大20Aまで対応できるので、消費電力の大きい電熱ベストを使用する際も安心です(製品の消費電力を確認する必要があります)。
新たに追加する電気パーツ=負荷に対して、リレーを介して電気を出力するのはバッテリー直結リレー、いわゆる「バッ直」と同じですが、D-UNITは4系統の出力を1個のリレーでまかない、さらにコンパクトなケースにスマートにまとめているのが特長です。このケースは結束バンドや両面テープで車体の空いているスペースに簡単に取り付けられまる。なにより、電気いじりが苦手なライダーにとっても、アクセサリー電源を見つけられれば取り付けできる簡便さは魅力です。
車体配線と別にヒューズを設けることで、電気トラブル時に車体の電気系統を保護する
D-UNITで電源を取り出す最大のメリットは、先に述べた通り車体配線に負荷を掛けず、内蔵されたヒューズで不測のトラブルを吸収できることです。
車体配線に新たな電気パーツを追加接続すると、元々の回路に負荷が掛かるとともに、何かが起こった時にその系統全体が使えなくなる不安があります。
また、ヒューズ切れに至らなくても、電気的な負荷が増すことで車体配線のギボシ端子やコネクターが過熱する場合もあります。これは、場合によっては一発でヒューズが切れるより、ボディブローのようにダメージが蓄積されて車両火災の原因になることもあります。
実際、自動車火災の主たる原因のひとつとして、電気アクセサリーの自家配線の不具合が挙げられています。既存の端子や配線を分岐する際の電気工作技術の巧拙も、信頼性を左右する要件となります。
ヒュースが切れずに配線が熱を持つ危険性を認識することが大切です。特に製造から数十年を経た絶版車や旧車はなおさら注意が必要です。
ここで取り付けたデイトナ製ホットグリップの最大消費電力は約32Wで、3A近くの電流が流れることになります。ブレーキランプやウインカーの消費電力もそれなりに多いですが、電流がずっと流れ続けることはありません。それに対してグリップヒーターは、継続的に電気を消費するため、それらの回路に割り込ませるのは若干不安があります。こうした時こそ、アクセサリー電源ユニットが活躍します。
快適で便利な装備に慣れてしまうと、それ以前の状態に戻るのは難しいものです。充電系統やバッテリーに問題はなくても、電気の血管である車体配線の経年劣化が懸念される絶版車や旧車に現代的な電気装備を追加するのであれば、安全で安定的な電源確保に配慮することが重要です。
- ポイント1・絶版車や旧車は現行車に比べてヒューズの数が少ないことが多く、後付けの電気部品を取り付ける際の電源取り出しに注意が必要
- ポイント2・アクセサリー電源ユニットを使用することで、車体配線とは別の回路から電源を出力することができる
- ポイント3・バッテリー直結のアクセサリー電源ユニットにより、消費電力の大きな電気パーツにも安定した電気を供給できる
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