排気量アップによって圧倒的な走りの違いを体感できるホンダ横型OHCエンジンの世界。同一のクランクケースでボアアップすれば、当然ながら、大きくなったピストンによるポンピングロスが増えてしまい、それを受ける「クランクケース内圧」は高まってしまうものだ。そんなクランクケース内圧の過剰な高まりを抑制するパーツとして、考案されたのが「クランクケース内圧コントロールバルブ」である。実際に装着することで、どのような変化を体感できるのだろう!?
目次
削り出し部品とコントロールバルブを組み合わせて理想形追求
これまではホンダ横型エンジンのブリーザー機能へ内圧コンシロールバルブを組み込む際に、一番多かったのは、オイルフィラーへ取り付けたブリーザーホースへの組み込みや、タペットキャップから取の出すブリーザーホースへの組み込みだった。この新型は、カムスプロケットカバーから圧抜きし、しかもカムシャフト軸の延長上からホースを取り出すため、エンジンオイルが吹き出しにくい理想的な構造となっている。シュパーブと命名されたクランクケース内圧コントロールバルブ本体内には、エマルジョン(乳化したオイル)が堆積してしまうものなので、それを外部へ排出し、常にスムーズなバルブ作動を実現している。
通称「角目カスタムC90」にて取り付け実践
内圧コントロールバルブを取り付けたモデルは、1991年頃に生産された角形ヘッドライトのC90カスタム。通称、角目カスタムの90だ。トルクフルなエンジン特性で50や70のノーマルエンジンとは明らかに走りが異なる。果たしてどのような結果を得られるのか楽しみだ。コントロールバルブ内に堆積する僅かなエマルジョン(乳化した汚れ)は、インマニに吸われて排出。四輪車のPCVコントロールと同じ環境回路を採用している。
エアークリーナーケース戻しのブローバイ回路に組み込む
純正エアークリーナーケース内にブリーザーガスを戻す還元仕様なので、その途中に内圧コントロールバルブをセットした。エアーエレメントが汚れていたら交換しよう。指定された太さのキリを使ってエアークリーナーケースのドレン穴を拡大加工。ここでは、ボール盤を使っているが、ハンドドリルで穴を拡大加工しても良い。エアークリーナーボックスのドレン穴は、パイプ形状の排出になっているので、そのパイプにキット部品のアルミ削りだしフィッティングを締め込みプライヤーで固定。ドレン穴が大きくなり、ブローバイガスのブリーザーの通気が良くなった。加工時に出た樹脂の切り粉はしっかりの除去し、忘れずにエアーブローしておこう。これが取り付けに当たって第1の追加工になる。クランクケースの後方から地面へ向けて、純正のクランクケースブリーザーチューブが取り回されているが、このチューブにアルミ削り出しの栓を押し込み、結束バンドで抜け止めをして機能不全にする。すべてのケースブリーザー機能は、シリンダーヘッドへ集約される。
エマルジョン吸い込みポートをインマニフランジへ追加工
キャブレターのインテークマニホールドを取り外し、取り付け説明書に従い決められた部分にエマルジョン抜きチューブのフィッティング取付穴を加工した。これが第2の追加工ポイントである。エマルジョンチューブ用のフィッティングネジサイズはM6P1.0。Φ5.1mmのキリで下穴加工を行ったら、斜めにならないようにタップ加工を施した。この加工は、経験者でないと難しい。ガソリン対応の液体ガスケットをフィッティングのネジ部分に塗布してマニホールドへ締め付け、バルブ本体から出ている細いウレタンチューブを差し込む。あとは復元してキットパーツレイアウトを構築しよう。
見た目はこの違い。モンキーカスタムでも人気パーツ
キットパーツを取り付けたことが一見でわかる。純正標準レッグシールドなら、ほとんど目立たないレイアウトになりそうだ。取り付け時間は概ね1時間半程度だった。メンテナンス経験者で内圧コントロールバルブの働きを理解しないと、バルブの向きなど間違ってしまう可能性もあるので、まずは部品の機能を理解することから始めよう。
撮影協力/NAG SED http://nag-sed.com/
- スーパーカブ×メンテの世界・メンテナンスではなく、ある意味「チューニング」リポートだが、ボアアップなど排気量アップしたエンジンには大きな効果を得られると評判のパーツを装着した。ここではスーパーカブに取り付けたが、機種専用のキットパーツから汎用パーツまで、様々なラインナップがある。
バイク仲間がスーパーカブC90カスタムをベースに、バイクいじりとチューニングを楽しんでいると聴いたので、その車両に取り付けることで「インプレッション」をお願いしたのが、この内圧コントロールバルブ。今では複数のメーカーから発売されているクランクケースの内圧コントロールパーツだが、その元祖考案者がNAG SED。ホンダ横型OHCエンジン専用のキットパーツがあると聴き、仲間のスーパーカブC90に取り付けてみた。同商品が登場して20年を超えるが、現在では、その効果が各方面で認められ、違った形態で同じ働きを担うパーツが複数登場しているが、こちらが元祖商品だ。
製造元のNAG SEDでは、様々なテストと改良を繰り返し、「内圧コントロールバルブ」メーカーとして、レースシーンやカスタムシーンに君臨している。同社製品最大の特徴は、耐久性が高く壊れにくい「円筒型」ワンウェイバルブを採用しているところにある。冷間エンジンから暖機運転するときには、水分とエンジンオイルが混ざることで発生するエマルジョンが邪魔な存在となるが、そのエマルジョン対策にも取り組んだ商品をラインナップ。具体的には、暖機時に発生するエマルジョンやブローバイガスに混じったエンジンオイルを引き抜く仕組みを開発。バルブ本来の機能が低下しないような回路を、具現化しているのだ。
ホンダ横型OHCエンジン用のキットパーツは、カムスプロケットの中央付近に排出通路を設けることで、エンジンオイルがブリーザーホースに混入しにくい構造としている(台風の目をご想像ください)。部品点数が多く、決して安価なパーツではないが、ホンダ横型エンジン用クランクケース内圧コントロールバルブとしては、理想的なメカニズムを追求しているのだ。
キットパーツ装着後のC90試運転から戻ったマシンオーナーによれば「高回転域の伸びが良くなり、振動が減った印象です。あとは走り込んで燃費を測定してみたいです」とお話しして下さった。後日、通常走行での燃費は45km/リッターだったそう。今回はマフラー交換のみ行われているノーマルエンジンのC90カスタムで取り付けインプレッションを行ったが、仮に、ボアアップやハイコンプビストンなどなどを組み込んだエンジンに取り付けとしたら、また違った印象になるとおもう。また、カスタムパーツを魅せるハイパフォーマンス系モンキーカスタムには、印象が強いパーツになりそうだ。
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