セルスターター始動のバイクなら、大型車でも何とかなるはず!?などと思い込みで購入したのが旧車BMWのK75Sという、地味で不人気な直列3気筒エンジン搭載モデル。走る・曲がる・止まるの性能三要素に不満はありませんでしたが、何しろ「薄汚いままの旧車に乗る」のは気が引けます。シャキッと仕上げて楽しみたいものですが、何とかならないものか……。そこで考えたのが、外装関連パーツを取り外し、ローリングシャシーを美しく仕上げてみようと考えました。


外装を取り外したら「サビだらけ」のフレーム


初めてメンテナンス機会を得た旧車BMW。すでに旧車の部類に入る年式(1987年製)だが、国産80sモデルと同じ気分で外装部品を分解し始めたら、そりゃもう大変。カルチャーショックとはこのことだと感じました。細部を含めてリペイント=再塗装したいと思った外装パーツをすべて取り外したら、なんと20点以上になりました。国産フルカウルモデルと比べると、外装パーツの取り付けや建付けが全く違っていて、何より驚いたのが「木ネジ」締結部分の多さだった。これには驚きましたが、もちろんドノーマルでそのようです。そんな外装パーツを取り外して、やっぱりと思ったのがフレームのサビ。酷いサビは一切無かったが、おそらくメーカー出荷されてから、一度たりとも外装パーツを外されたことが無かったのではとも感じられた。フレームのステアリングヘッド周辺やシートレールは、思った通りの表面サビで覆われていたのでした。


ポリッシャー+手磨きでサビ除去に半日経過  

エアーポリッシャーにスポンジパッドを取り付け、その上に不織布ディスクをセットして、磨きやすい部分から磨き作業の開始。しかし、ポリッシャーディスクが入らない部分はリューター軸に取り付けた不織布シートで磨いたり、コツコツと手磨き作業でフレームを覆っているサビを除去していった。今回の作業は裸にした車両をバイク仲間が営む工房へ持ち込んだが、このサビ落とし磨きに要した時間が約半日。この程度のサビならコンプリート車での磨き込みも可能だが、ひどいサビなら完全分解してプロのフレームペインターへ依頼したと思うし、その方が確実に美しく仕上がるだろう。


BMW純正ペイントの風合いで調色開始 


時代時代でメーカー製ペイントには様々な違いがあるが、このKシリーズが生産された1980年代の中期以降のBMWの場合は、フレームペイントがブラックの艶ありではなく、フラットベースが入った半艶ブラックで仕上げられているのが特徴のようだ。ベースとなるブラック+硬化剤+希釈用シンナーでペイントすると、艶ありブラック仕上げになってしまうので、ここにフラットベースと呼ばれるつや消し剤を混ぜて風合いを演出した。つまりフラットベースの混合量次第でつや消し度が異なるため、磨かなかった純正フレーム部を色見本に、フラットベースのネタ作りを進めた。徐々にフラットベースの量を増やし、試し塗りを繰り返して色調を再現した。


「丸パターンノズル」の極細ガンで補修ペイント 



通常の色合わせとは異なり、フラットベースの場合は試し吹きして表面が乾かないとつや消し度の判断が難しい。テストピースに吹きながら調色完了したら、小型極細ノズルの丸パターンガンを利用して、磨いた患部を徐々に補修吹きしていった。タッチアップに使うペイントは「ウレタン樹脂塗料」なので、フラットベースを混ぜて作ったブラックに合わせて硬化剤を適量混ぜる。タッチアップ作業時は、必要最低限のみマスキングした。ここでは、エンジン本体のフレーム締結部分周辺のみマスキングを施し、片手にコピー用紙を持ちながら、臨機応変に簡易マスキングしつつ、タッチアップ補修を行っていった。  ペイントしたくない締結ボルトなどは、ペイント後にシンナーを浸した綿棒で拭き取ることで仕上げた。


見えない部分でも美しくあること。気持ちいいですね~♪ 



カウルに覆われて外側から見えない部分となるフレームは、想像以上にサビに覆われていたが。サビ落とし後のタッチアップペイントで、これほどまでキレイに仕上げることができた。いわゆる中古車仕上げの中には、このような方法もある。シートレールの上には、シートカウルやインナーカウルが複雑に組み合わさっているため、シールレール自体のワックス掛けなどは一度も行われていなかったと思われる。そのためサビが発生しているケースも多々あるが、ここまで仕上げることができて大満足である。


取材協力/モデルクリエイトマキシ


POINT
  • バイクを美しく仕上げるポイント・車体からエンジンを降ろし、車体部品をすべて分解し、個々に仕上げた後に再び組み立て、エンジンに関しても、完全オーバーホールした車両をフルレストア車と呼ぶ。もちろんエンジンの表面仕上げも重要なポイントになる。しかし、そんなフルレストアには、大変な努力と財力が必要なため、ここでは、外装関連部品を車体からすべて取り外し、ローリングシャシー状態にしてから磨き込み、タッチアップで仕上げ、可能な限り美しくしようと思う、言わば「手抜き仕上げ」を実践したようなもの。しかし、このような手段でも、心を込めて作業することで、バイクは驚くほど美しく変身するものだ。  

コンディションを気にせず普通にロングツーリングをこなせるような大型バイクが欲しい。最低条件は、「セルスターターでエンジン始動できる」ことだった。キック始動が厳しい年寄りライダーにとって、セルモーター装備は極めて重要なことだろう。そんな想いや条件確認しながら、車両探しをしていた時に、偶然、出先で出逢ったバイクがBMWのK100RSだった。2バルブ時代のKシリーズは、驚きに値する低速トルクのエンジンを搭載している。「ズ太く野太い」トルク感は、過去にぼくが経験したすべてのバイクを超越しているし、その後、試乗したバイクと比べても、特筆に値する太いトルク特性だった。個人的には、回転馬力型のエンジンは、サーキット走行でこそ楽しいものであって、ツーリングを楽しむのなら、トルク型エンジンの方が間違いなく楽しめると感じている。

そんなK100RSとの出逢いで、直列2バルブエンジンを搭載したBMWが気になって仕方ありませんでした。中古車相場を調べると、ディーラー系中古車で、かなり程度が良く見える車両でも、決して高値だとは思えない車両価格。不人気モデルはお財布に優しいです~。個人売買なら、それはもう別世界。ネットオークションで検索してみると、検付き、検切れ、部品取り車などなど、タイミングさえ合えばタマ数もある。大切に乗られていた様子を、一目で理解できる極上車から、車検は残っているものの、放置コンディション車などなど千差万別。数か月に及ぶ調査の中で、明確に理解できたのは、BMWのK100シリーズは、間違いなく「不人気車」だった。


本気で車両探しを始めた矢先に、仲良しのバイク仲間から、さらに不人気車の「K75Sならありますよ……」との連絡が入った。程度は並みの上で、お値段も市場価格を反映したものだった。現物車両の画像を何枚かメール送信して頂き、購入意思を伝えたのがK75Sでした。継続車検を取得したばかりで、初年度登録は昭和62年(1987年)。購入後、ガレージに運んでから半年以上はそのままだったが、意を決して本格的な作業に取り掛かることにした。外装パーツや電装パーツはすべて取り外し、エンジン周りの汚れはEZブラストでクリーンナップ(同Web連載のバックナンバーを是非ご覧ください)。裸になった車両をバイク仲間の工房へ持ち込み、ここでリポートしているように、「タッチアップ的フレームペイント」に挑み、納得の仕上がりを得ることができました。



不人気中古外車BMW!!☆磨きとペイントでどこまで仕上がる☆Vol.3 ギャラリーへ (11枚)

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