
チェーン交換やドリブンスプロケット交換でリヤホイールを取り外した際には、目的の作業だけではなく、周辺部品も点検し、必要に応じたメンテナンスを実践しておきたいものだ。ここでは、リヤホイールの取り外しに伴い、ドリブンスプロケットのカップリングダンパーとローター締め付け座面のクリーニングを実践してみた。
目次
ダンパーにガタが多いとチェーンが伸びやすい傾向

リヤホイールを取り外したら、普段はなかなか点検洗浄することができないドリブンスプロケットの裏側の汚れを除去しよう。その際には、ホイールに対してドリブンスプロケットのカップリングにガタが無いか?ドリブンスプロケットを鷲掴みにして回転方向に揺すって、ガタの有無を確認しよう。このアナログ的なガタ確認が、実は重要な予防メンテナンスでもある。
ダンパーハウジング内の汚れ進行でダンパー摩耗も確認できる



旧車の中にはサークリップを使ってスプロケットの抜け止めをしているモデルもあるが、このホイールはカップリングダンパーフランジを手で引き抜けるタイプ。仮に、回転方向のガタに気が付いたら、ダンパーラバーは新品に交換しよう。応急処置としては、ダンパー室の縦壁部分に、壁の厚さに合わせてコの字型に曲げて作った飲料水のアルミ缶をセットして(ハサミでカット&自作)、その上からダンパーラバーを組み込むことで、回転方向のガタを抑制することができる。ガタが無ければ発進時のドライブチェーンへの衝撃が減り、無用なチェーン伸びは無くなる。汚れはパーツクリーナーを吹き付けたウエスで拭き取ろう。
意外と忘れがちな回転摺動部の作動状況


ダンパーラバーを取り外した状態でホイールハブにカップリングを組み込んでみよう、ハブベアリングホルダーの外周には鉄製リングが圧入されていて、そのリングとカップリングが摺動している様子を確認できる。スムーズに作動していれば問題ないが、ゴミの噛み込みや摺動部をマスキングせずにホイールペイントしてしまうと、スムーズに回転摺動していないこともある。そんなときには、ゴミ混入防止のOリングを取り外し、回転摺動部をサンドペーパーや不織布シートで擦り合わせ、スムーズに作動するようになってからOリングを復元してグリスを塗布しよう。この部分の回転摺動が悪いと、やはりドライブチェーンが無駄に伸びてしまうのだ。
リヤローターを外したときには締め付け座面とネジ部を洗浄



ローター裏側の減り具合を目視点検するために取り外されたリヤローター。このタイミングでローター締め付け座面をオイルストーンで磨き、面出しクリーニングを行った。締め付けボルトには専用部品が使われていて、ローター締結孔径とホイール側のネジ座面には同一Φ径のザグリがある。これは、専用ボルトを締め付けることで、ローターとホイールがインローで位置決めされつつ固定される構造となっている。80年代以降のメーカー純正ホイールは、ブレーキローター締め付け座がこのような構造になっている例が多い。ボルト締め付け時にはネジ穴とインロー孔をしっかりクリーニングし、ボルトのネジ部分にはロック剤を適量塗布しよう。
- ポイント1・スプロケットを固定するフランジはダンパーカップリングとなっていて、ダンパーは駆動力を受け止める。ダンパー摩耗が進むとガタが出て、ドライブチェーンが伸びやすくなってしまう
- ポイント2・ カップリングの回転摺動部がカジッて作動不良になるとダンパーレスと同じになってしまうので要注意
- ポイント3・リヤディスクローターの締結ボルトは段付きのリーマボルトと呼ばれる。一般のボルトとは異なる構造なので間違えて使わないようにしよう
リヤホイールハブのスプロケットフランジがカップリング構造になっているモデルには、駆動力を受け止めるダンパーユニットが組み込まれている。ダンパーユニットにガタがあるときには新品ダンパーに交換するが、時折、新品部品に交換したのに、何らかの理由でガタが解消されないケースもある。そのような時には、アルミの空き缶で作るスペーサーが効果的なこともあるので、知っておくと良いだろう。
ダンパーラバーをカップリングユニットから取り外したときには、ホイールとカップリングを単品部品で組み合わせることで、また違ったトラブルに気が付くこともあるので必ず実践してみよう。以前に経験したことだが、純正流用でホイール交換を行う際にホイールペイントを行った。その際に、ホイールハブとカップリング摺動部分のマスキングが甘く、摺動部が部分的にペイントされてしまった。そんな状況に気が付かず、カッブリングを組み合わせたことで、摺動部にはペイント膜が噛み込み、スムーズな作動性が得られなくなってしまった。
試運転に出掛けると、発進時やギヤチェンジの際にショックが大きく、ドライブチェーンからはカシャカシャと音が発生していた。再度リヤホイールを取り外して確認したところ、カップリングがスポッと抜けず、ペイント膜が摺動部に噛み込み、作動せずカジッていることに気が付いた。スクレパーでペイント膜を除去してからサンドペーパーで磨いたことで、カップリングの作動性は正常になり、ドライブチェーンの駆動力によるショックも無くなった。
80年代以前に登場した2ストモデル用レーシングホイールには、カップリング機能が無く、ホイールハブへダイレクトにトリブンスプロケットを締め付けるタイプが多かった。そんなホイールを4ストシングルレース用に流用する際には、スプロケット側にダンパーラバーを組み込む構造に改造しなくてはいけないケースもあったが、そのまま利用してしまい、ドライブチェーンの伸びが早かったり、最悪でチェーンが切れてしまうトラブルも発生した。ドライブチェーンのダンパーユニットは極めて重要な部品なので、その機能を理解した上で、メンテナンスに取り組もう。
分解時はスプロケダンパーのヘタリ点検、リヤローターは締め付け座確認 ギャラリーへ (9枚)この記事にいいねする