
電気系アクセサリーの装着やメンテナンスで配線を分岐する際、純正配線を切断すると短くなってしまいます。そこで重宝するのが、配線を切断せず割り込ませることで分岐できる「エレクトロタップ」です。同様に「スプライス端子」を使っても切断せず分岐できます。ここではそれぞれの特徴と使い分けについて紹介します。
目次
プライヤーで挟むだけで分岐できるエレクトロタップ
エレクトロタップとスプライス端子はサイズが全く異なる。プライヤー1本で簡単に作業できるエレクトロタップか、手間は掛かるが分岐部分をスリムに仕上げられるスプライス端子か、適材適所で使い分けたい。
USB電源やドライブレコーダーなど、愛車の使い勝手を向上させる電気系アクセサリーを取り付ける際に必要な電源確保。最近では純正ハーネスのギボシ端子やコネクターから電源を分岐する用品もあります。それらを利用すれば、ニッパーや電工ペンチは不要です。
ただ、電源を取りたい場所に都合良く純正端子があるとは限らず、純正配線から直接分岐したい場合も多いもの。
一度配線を切断してギボシ端子を取り付け、そこから分岐する手段もありますが、もっと簡単に分岐したい。そのためにあるのが「エレクトロタップ」です。エレクトロタップ本体には配線を並べる2本の溝があり、その一方にはストッパーが付いています。このストッパー付きの溝に「分岐する配線」をセットし、ストッパーのない側に「純正配線」をセットします。
エレクトロタップの形状にはいくつかのタイプがありますが、どれも分岐する側にはストッパーがあります。これは分岐する配線の芯線を露出させず、ショートを防止するためです。
溝と配線の位置を確認してセットしたら、樹脂カバーをプライヤーで折り曲げます。この際にスリットが切られた金具(接触子)が配線の被覆に食い込み、芯線に接触します。2本並んだ配線の両方に接触子が食い込むことで導通し、新たな回路ができるのです。
被覆を剥いたり電工ペンチでかしめたりすることなく配線を分岐できるエレクトロタップは、間違いなく便利です。ただし、正しく使用するために注意すべき点もあります。
サイズ選びを間違えると接触不良や切断することも
分岐する配線をストッパーに当てる。ストッパーで芯線が隠れることで絶縁され、ショートを防止できる。
エレクトロタップを使用する際の要注意ポイントは「配線の太さに合ったサイズを選ぶ」ことです。電極となる接触子は配線の被覆に食い込み、裂け目を作りながら芯線と接触しています。
配線の太さに対して接触子のスリット幅が狭いと、被覆だけでなく芯線に食い込んで傷つける可能性があります。反対にスリット幅が広すぎると、接触子が芯線まで届かず導通不良になる場合もあります。そうしたトラブルを避け、さまざまな太さの配線に対応できるよう、接触子のスリットの幅にはバリエーションとサイズがあるのです。
サイズを見分けるカギとなるのが本体の色で、配線の太さでAVS0.5~0.85sq用を赤、AVS1.25~2.0sq用を青としているメーカーが多いようです。ちなみにバイク用配線として一般的なサイズがAVS0.75で、被覆に記載されていることもあるので確認しておくと良いでしょう。
一般的なエレクトロタップは純正配線と分岐配線を同じサイズで使用することを前提としていますが、消費電力が少ないアクセサリーのでは細い配線を使用している場合もあります。このような場面に対応できるよう、自動車用品メーカーのエーモンは異なる配線サイズに対応するエレクトロタップをラインナップしています。
こうした注意点があるものの、プライヤーでパチッと挟むだけで配線が構築できるエレクトロタップが便利なのは間違いありません。
分岐点がかさばらずスマートに仕上がるスプライス端子
純正配線と分岐配線の被覆は同じくらい剥いておく。スプライス端子ではなくハンダづけでも結線できるが、ハンダを使うと結線部分が硬くなるため振動に対して弱くなるという意見もある。
エレクトロタップによる分岐は手っ取り早く簡単ですが、後付け感がありありと分かる見た目や分岐部分がかさばるのがちょっと……という声もあります。
そんな場面で重宝するのが「スプライス端子」です。これはギボシ端子のカシメ部分だけを切り出したような形状で、配線の芯線だけをかしめるための配線小物です。
スプライス端子の使用方法は、純正配線の被覆を10mm程度カットして、追加するアクセサリーの配線も同様に10mm程度カットします。そして芯線同士を並べてスプライス端子でかしめれば接続完了となります。
純正配線の被覆を剥くために配線自体を切断すると全長が短くなってしまうので、芯線を傷つけず被覆だけを切除するのが作業上のキーポイントとなります。配線の被覆を剥く専用工具のワイヤーストリッパーの中には、配線の先端だけでなく中間部分の被覆が剥ける製品があり、それを使えば芯線を傷めることなく露出することが可能です。
ただ、端子をかしめるための電工ペンチや、被覆を剥くためのワイヤーストリッパーなど、プライヤー1本で接続できるエレクトロタップよりも必要な工具が増える分、準備や手間が掛かるのは確かです。
しかしスプライス端子には、そうしたマイナス面を上回るメリットがあります。まずはエレクトロタップに比べて分岐点が圧倒的にコンパクトです。これは隙間が狭い場所や配線をスマートに仕上げたい時に大きな魅力となります。
1対1ではなく、複数の配線を分岐できる点もスプライス端子の特長です。パイロットランプのようにプラス側の電源を一斉にランプに流して、二次側のセンサーやスイッチを通過してアースするような場合、複数に分岐できるのが強みになります。
反対に、複数のマイナス線をボディアースする時にも、スプライス端子で複数の配線をまとめた先に丸形端子を付ければ、アースポイントがきれいに仕上がります。
さらに車体配線と分岐配線のサイズが異なる場合でも、エレクトロタップのように接触子のサイズを気にすることなく芯線だけをかしめて結線することができます。
スプライス端子はどのように絶縁するかがポイント
スプライス端子を活用するには電気工作用の工具の他に、絶縁処理が必要という条件もあります。エレクトロタップは金属製の接触子の外側の樹脂ボディが絶縁体なので後処理は不要ですが、スプライス端子はカシメ金具が露出しているからです。
確実性を求めるなら、金具と配線に密着してスリムに仕上がる熱収縮チューブを使用するのがベストです。
ただしその場合、熱収縮チューブを車体配線に簡単に通せるか否かが問題です。配線を分岐した近くにコネクターがあって、一旦端子を抜いてチューブを通せるような理想的な展開になればラッキーですが、そうでなければ配線用のハーネステープをしっかり巻き付けます。
ハーネステープは一般的なビニールテープより伸びが良く、接着剤がべたつかず剥がれづらく、重ね合わせ部分に隙間ができづらいのが特長で、絶縁が必要な部分で能力を発揮します。
車体配線の端部が分岐部分の近くになく、それでも熱収縮チューブを使いたい場合には、分岐部分で車体配線を一度切断してチューブを通し、並列+突き合わせで芯線をかしめるという方法もあります。ただこの方法では、切断した分だけ車体配線が短くなってしまうので、束になったハーネスから分岐すると芯線が届かなくなる場合もあるので注意が必要です。
電気が苦手な人にとって、こうした工作はできれば避けたい作業かもしれませんが、せっかく取り付ける電気系アクセサリーが正しく機能するよう、確実な配線処理を行うことが重要です。
- ポイント1・エレクトロタップで配線を分岐する際は、配線の太さに応じたサイズのエレクトロタップを使用する
- ポイント2・スプライス端子を使用することで分岐部分がスマートになり、複数の配線を分岐させることも可能
- ポイント3・エレクトロタップは接続と同時に絶縁できるが、スプライス端子は熱収縮チューブなどで絶縁処理が必要
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