旧車いじりに限ったことではないが、傷んでしまったネジ山にとどめを刺して、完全な「山なしネジ穴」にしてしまった経験があるサンデーメカニックは数多いはず。ここでは、数多くのベテランプロメカニックにも愛用者が多い「リコイル」の使い方を、ネジ山が無くなってしまったキャブボディで実践してみよう。

繰り返しの脱着でネジ山が弱くなるのは当たり前

ボディ本体が固定フランジになっていて、M6サイズのボルト2本で締め付ける仕様が多いスーパーカブシリーズのキャブレター。この年代はもちろん、1980年代初頭でも、アルミダイキャストボディに直接ネジ山が立てられている。1980年代の途中から、フローティング固定されたスチール製角ナットをM6ボルトで固定するタイプへと変更対策されている。このネジ穴は完全にナメてしまっている!!

キャブは取り外す前にガソリンをストップさせよう

キャブレター分解時には燃料コックをOFFにしてガソリンの流れをシャットアウトしてからキャブ本体を取り外すが、スーパーカブは燃料コックがキャブ本体にあるので、ガソリンを遮断するのが実は大変。そんなときには、クランプ式のストッパーがあると実に便利。この工具は、ブレーキフルードなどの硬いホースを潰して遮断できる。ガソリンホースなら楽々使うことができる。

リコイルキットは圧倒的な使い易さで大人気

M6P1.00サイズのネジ山を再生するリコイルキット。リコイルには様々な組み合わせがあり、下穴加工用のキリ(ドリル)が同梱された商品もある。ナメてしまったネジ穴をドリルでもんで、ワンサイズ大きなネジを立て直し、その新たなネジに「リコイルを挿入」することで、従来通りのM6ボルトを使えるようにするのがこの修理手順。ネジ穴の恒久再生では、安定した信頼性を誇る商品なのだ。

リコイル挿入場所の厚さや深さを理解しよう

キャブボディが変形しないように、万力にやさしくクランプして作業した。ボディ内には各種通路があるため、マスキングテープで切り粉が入らないように封じた。下穴加工キリ(M6だとΦ6.3mm)を使って、電動ドリルで下穴を拡大したら、リコイルタップが斜めに入らないようにネジ山をゆっくり切り直す。貫通穴へのリコイル挿入は、お気楽作業とも言える。押し付け過ぎないようにリコイルをゆっくり挿入し、リーダーのタン部分が最適の位置に来ていることを確認しよう。タンが最適な位置に来たのを確認できたら、挿入側に入り込んでいない残りのリコイル巻き数をチェックしよう。これはフランジの厚さにネジ山を合わせる段取りだ。さらにタンを回して反対側からリコイルを抜き取ったら、リコイルエンドが下ネジ山に対して半回転程度入る位置でリコイルをカットする。同じリコイルを2個作って、この後に仕上げ挿入を行った。

有効ネジ部の深さで強度が変わる

一般的にネジ径をDとしたときに、1.5Dのネジ山寸法があれば、標準締め付けトルクは確保できる(今回の場合は6ミリ×1.5=9ミリ)のだが、このフランジの厚さは同程度なので、理論上では締め付けトルクは確保できる。しかし、何度も脱着を繰り返し行い、オーバートルクになってしまうとネジ山は傷みやすく、今回のように完全なナメ状態になってしまうこともある。リコイルがボルトを受けることで、こりまでのアルミダイキャスト部品と比べたら、圧倒的な強度アップを期待できる。リコイル作業時の注意点は、インサートの端がフランジ側やボルト側へ飛び出さないことだ。挿入作業は、慎重かつ丁寧に行おう。

POINT

  • スーパーカブ×メンテの世界・長年乗り続けられテイルバイクとなれば、同じ部品を何度か分解メンテナンスされたことがあるはずだ。鉄部品ならまだしも、相手がアルミ部品やアルミダイキャスト部品の場合は、ネジ山にダメージが及んでいるケースが多い。ネジ山周辺に最低限しか影響を及ぼさないリコイルならば、理想的な修理再生が可能になる

キャブボディの内部通路が詰まったことで、アイドリングが不調になってしまい、キャブの分解洗浄やオーバーホールを経験したことがあるサンメカは数多いと思う。また、抜けが良いマフラーへ交換したら、プラグが白く焼け気味になったので、メインジェットを交換して「ガスを濃くしてみた」などの「キャブセッティング」を経験したことがあるライダーも数多いはず。そんな作業を繰り返し行ううちに、ここでリポートしている状況と似たようなトラブルに見舞われてしまうことがある。旧車スーパーカブに限らず、1980年代前半以前に登場したキャブモデルの場合は、実は、こんなトラブルが数多かった。
キャブ本体を繰り返し脱着、しかもボルトを締め付ける相手がアルミダイキャストボディとなれば、ネジ山は間違いなく傷みやすい。一般的に、M8サイズ以下のボルトは「オーバートルクで締め付けてしまう」傾向もある。そんなネジ山トラブルが多かったことから、1980年代の後半以降、似たような構造のキャブレターは、フランジ固定のネジ山部分のみ鉄製のナットプレートをセットして、傷みにくい仕様へと変更されている。おそらくメーカー直系のディーラーメカニックから、改善の打ち上げがあり、対策部品へと変更されたのだろう。

旧車に触れる機会が多いと、スーパーカブに限らず「ネジとの戦い」になることが多い。ボルトが緩まないので、チカラづくで緩めた結果「ポキッ!!」と折れてしまった経験を持つメカニックも数多いと思う。様々な高性能ケミカルや熱膨張を駆使することで、固着したボルトを取り外すことができる場合もあるが、必ずしも思い通りにならないのがネジトラブルなのだ。ここで紹介するナメたネジ山の修理再生は、おそらく修理レベルでは決して難しい部類ではない。こんな部分がナメてしまったら、おそらく長いボルトに交換して、ボルト×ナットで挟み込むように締め付け固定するのが一般的な対策だと思うが、本来のネジ山が再生されて生き返ると、それはもう整備性が良くなり「ネジ山修理して良かった!!」となる。こんなトラブルは、修理チャレンジしてみよう。

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