強い思い入れがすべての原動力なり、実践されることが多い旧車のレストア。せっかくフルレストアするのであれば、旧車のペイント経験が豊富なプロショップへ依頼することで、オーナー自身が知らなかった特徴を新たに知ることもある。パールホワイトにも、様々なタイプがあるそうなので、旧車に詳しいペイントのプロショップへ相談した。


旧車タンクは燃料キャップの口金クラックに要注意!!


ペイント依頼したガソリンタンクは、過去にリペイント歴があったのと、パールホワイトの色味が違っていた。また、キャップの口金部分からはガス漏れを起こしていたので、口金の隙間はしっかりクーリニングしてから板金ハンダで処理することにした。先が尖ったデザインカッターやPカッターを利用して、ゴミを除去した。


事前補修も含めてハンダ板金で修理しよう




鈑金ハンダを利用して口金周囲をハンダづけすることで、ガス漏れを封じ込める作戦。この方法ならガス滲みや漏れの心配は無用になる。以前は液体フラックスを使っていたが、サビに対して後処理が大変なので、最近はフラックスレスの鈑金用ハンダを利用するドリーム商會。ハンダゴテの熱量は200W 級。ハンダ後の表面は削って整えられる。


サフェーサーでペイント前下地を整える 


ハンダ板金によるガス漏れ修理が終了したら、タンク全体をサンドブラストで旧ペイントを剥離除去。口金周辺を再度脱脂洗浄してから乾燥させ、口金とコック穴周辺をマスキングしてからサフェーサーを吹き付ける。後々のさび止めと仕上げペイント前の下処理だ。サフが乾燥したら全体的にサンドペーパーで足付け研ぎを入れて、仕上げのペイント工程へ入る。


過去に塗ったパールホワイトの色見本とDT-1色

過去にもDT1の施工実績が何度もあるドリーム商會。パールホワイトでも初期型DT1やAT1に採用された、やや「青みがかったパールホワイト」で、再現して頂く。過去にペイントしたときの色見本も保管してあった。


当時物「初期型タンク」のストライプを見本にマスキング





ドリーム商會へ向かうと、色見本に合わせたパールホワイトの地色ペイントはすでに完了していた。やや「青みがかったパールホワイト」が再現されていてひと安心。いよいよストライプ入れに入るが、今回は、初期モデルのゴールドタンク(未再生部品)をバイク仲間からお借りして、ストライプを厳密に測定再現させていただくことに。ところが、これが実は微妙な結果で、当時のマスキング技術なのか、場所場所で太さが異なり左右でもバラツキがありました。そこで、ぼくの希望で若干ながら太さを修正して頂くことにした。たいへん面倒な作業を引き受けて下さり、本当にありがとうございました。ストライプ部分のマスキングを終えたら全体を覆い、いよいよ黒ストライプのペイント。乾燥後にマスキングを剥がすと、いい感じに仕上がっていました。乾燥後にストライプのバリとりを行い、極薄くクリアペイントを入れて完成!!


前後フェンダーは細かなシルバーメタリックで 

実は、パールホワイトと同じように気になっていたのが、安っぽい純正シルバーの再現だった。おそらく純正シルバーはクリアが入っていないと思うが、未再生部品のシルバーを色見本に再現して頂きつつ、最終的には、軽くというか極薄く、クリアを入れて頂いた。


取材協力/ドリーム商會 http://dream-shoukai.jp/ 



POINT
  • ポイント1・ペイント後にクラック亀裂などでガス漏れが発生すると2度手間になるので、気になる箇所はペイント前に修理しよう 
  • ポイント2・色味がわからない時には、経験豊富なペイント職人に相談するのが一番良い
  • ポイント3・当時物未再生部品を見本に利用できると安心感が増す 

60~70年代初頭までのガソリンタンクは、メーカーを問わずどれもみな似た感じの製作工程で作られていた。形状やデザインが違っていても、ガソリンの給油口はロウ付けで「口金」が固定されていた。生産当時は品質検査にパスできても、実は、バラつきが多く、走行振動で後々クラック=亀裂が入ってしまうケースが多々あった。それが原因で、ガソリン満タン近くまで入れると、口金周辺からガス漏れや滲みを起こしてしまう例が数多くあった。過去にぼくが所有したこの年代バイクは、この口金問題が特に多かった。最初は「パッキン不良?」なんて思ってキャップガスケットを単純交換してみたが、その後も同じようにガス漏れが発生。本当の原因は「口金のロウ付け不良」だったとわかった。

このDT1に付いてきたガソリンタンクは、以前にリペイントされた様子で美しかった。しかし、タンクキャップの口金付近だけは黄ばんでいた。それを見たときに「また同じトラブルかぁ……」と思った。このフルレストアでは、ガソリンタンクとライトケースはヤマハDT1の純正パールホワイト、フェンダーやライトステーはシルバー、オイルタンクはブラックでリペイントする。そこで、ペイント依頼の前に、タンクの口金周辺をクリーンナップ。口金付近のペイントを剥離してから隙間にPカッターの刃を差し込んでゴリゴリッと清掃。そこまで作業してから、埼玉県寄居町のドリーム商會さんへパーツ一式を持ち込んだ。鈑金ハンダ処理が得意なショップだから、安心してお任せすることができる。最近はフラックス入りの鈑金ハンダを利用しているそうで、これを使うと、ハンダ後のサビ発生の心配が少ないそうだ。


もうひとつ気になっていたのが「青みがかったパールホワイト」の再現だった。DT1のパールホワイトのお話を小島社長とから伺うと「確かに変わった色味のパールホワイトですよね?以前にDT1のペイント依頼があったときに、色見本を作りましたからありますよ」と気になる色見本を見せてくださった。思わず「ビンゴ!!」と叫んでしまいたくなるほどの色味。確認のために未再生で程度が良いライトケースをバイク仲間からお借りして持参したが、まったく同じ色だった。青みがかっている様子は、他のパールホワイトと比較しても大きく違っていた。「RZ250のパールホワイトは白が強いですが、DT1は確かに青っぽいですね」と。これで心配は御無用。あとはドリーム商會さんにお任せして、仕上げて頂こうと思います。ちなみにぼくがお願いした唯一の要望は、当時の純正部品のように「安っぽい輝き!?」にして頂ことでした。


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