ブレーキパッドの減りに気が付き部品交換する際には、単純に新旧部品を入れ換えるだけではなく、ブレーキキャリパーとローター周辺の洗浄と同時に、ブレーキキャリパーピストンのクリーニング、通称「もみ出しクリーニング」を実践することで、ブレーキレバーのタッチや操作フィーリング、ブレーキの効き具合が向上するので、チャレンジしてみよう。

バックプレートの有無とコンディションに要注意

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ブレーキパッドが擦り減ってしまい、レバーを握った時に「キーッキキーッ」といった音に気が付くことがある。パッドの残量を確認したところ、すでにパッドは無くベースの鉄板に至っていた……。といった経験を持つライダーもいることだろう。ブレーキパッドの賞味期限は、ギリギリ一杯までではなく、新品パッドの厚さに対して2~3割程度の残量と考えよう。常にギリギリ一杯まで使ったり、過去に通称「鉄板ブレーキ」を経験している車両の場合は、ディスクローターの摺動面にもダメージがおよび、レコード盤のようなキズを超えて、もはや波打ちディスクになっているケースも多い。最低限の厚さ以内(MIN◎mmとの表示がある)なら、ディスクローター研磨も可能だが(リジッドデザインのローターのみ研磨可能な例が多い)、ローターの減りが激しい時には、新品部品に交換するしか方法は無い。ブレーキパッドとローターには相性があり、良く効くコンビネーションがある一方で、効きが今ひとつのわりにはローター面への攻撃性が高くキズ付きやすく摩耗しやすい組み合わせもある。ブレーキの効き具合とローター摩耗を鑑み、好みのブレーキパッド見つけて選ぶようにするのが良い。バックプレートが入るモデルの場合は、パッド交換時に取り外してしっかり洗浄して再利用しよう。このバックプレートは、パッドの鳴き防止や熱の遮断用として組み込まれている。

ケースバイケースで特殊工具は使い分けよう

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キャリパーピストンをクリーニングするときに、あると便利な各種ブレーキピストンツール。ピストンの内側から広げるようにしっかりクランプして、ピストンを回転させるプライヤータイプにも複数のタイプがある。また、ピストンクリーニング時には、ピストンを押し込むツールを逆利用することもできる。ピストンの「出の量」をこのツールで調整することで、クリーニング時のピストンの飛び出し過ぎを抑えることもできる。もみ出しクリーニング時には、必需品と言える特殊工具だ。

 

 

ピストンを露出させて外周の汚れをクリーニング 

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1980年代の初頭から採用され始めた並行2ピストンキャリパーをクリーニングしてみた。キャリパーブラケットにはスライドピンが取り付けられている。パッドの押し付けに対して、このピンに沿ってキャリパー本体が移動するフローティング式を採用している。ブレーキレバーを何度か握るとピストンが出てくるが、必ずしも2個のピストンが同時かつ同じだけ出てくることはまず無いので、ピストン押し込みツールで片側のピストンを出ないように抑えたり、ツール爪幅を広げてキャリパー外側とピストンをタガのように挟んで出てこないように利用することもできる。ポロッと落とさないようにピストンを露出させ、ブレーキクリーナーを吹き付けてから小型ブラシでピストン外周の汚れを洗い流そう。

 

ブレーキピストンツールを上手に利用する方法

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このピストンクリーニング作業で大切なことは、露出させ過ぎてピストンを落としてしまわないことだ。ブレーキフルードを交換するにしても、キャリパー本体内にピストンが収まっていた方が作業性は明らかに良い。単純にピストンの押し込みだけではなく、ツールを広げてボディとピストンを挟むように利用することで、ボディ形状によってはピストンクリーニングしやすくなる。

 

 

スライドピンのコンディションにも要注意

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並行ピストンキャリパーには、デザイン形状こそ違ってもスライドピンが必ずあるので、分解したらピンの汚れを拭き取り、ボディ側のピン孔には綿棒を差し込んで古いグリスを除去しよう。脱脂洗浄後はグリスを塗らず、ボディにスライドピンを差し込むことで、摺動部の摩耗具合を確認しやすくなる。スライドピンを組み込むときには、適量のグリスを必ず塗布して作動時のカジリを防止しよう。この際に利用するグリスと、パッド背面やバックプレートに塗布する鳴き止めグリスは、種類が異なるので間違わないようにしよう。

 

新品パッドは面取り、バックプレートは洗浄後に専用グリスを塗布 

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新品ローターに新品パッドの組み合わせなら、パッドエッジを面取りする必要は無いが、既存ローターに新品パッドを組み合わせる時には、パッドエッジを平ヤスリで面取りすることで、パッドの馴染みを良くすることができる。パッド背面にバックプレートを組み合わせる際には、パッドグリスや鳴き止めグリスと呼ばれるシリコン系で硬めのグリスを塗布。パッド背面とバックプレート間、ピストン前面とバックプレートの接触部に薄く塗り伸ばすことで、パッドのビビリやブレーキング時のパッド鳴りを抑制することができる。

 

POINT
  • ポイント1・単純な部品交換、パッド交換で終わらせずに周辺部品をクリーニングすることでブレーキ性能とフィーリングは向上する 
  • ポイント2・ブレーキピストン周りだけでも複数の特殊工具がある。使い易い工具を揃えよう
  • ポイント3・スライドピンタイプはカジリ固着やピンの摩耗も要チェック。不具合発見時は部品交換しよう 

 

ブレーキは「効けば良い」というものではなく、良く効いて尚且つ「コントロール性が良い」ものが理想的である。パッド残量が十分あったとしても、パッドの材質とローターの相性がいまひとつ良くない場合は、効き具合やコントロール性に関しても、今ひとつな結果となっていることが多い。各メーカーから様々なブレーキパッドが発売されている理由には、そんな相性の違いや制動フィーリングの違いが、ライダー個々の好みとなり現れることがあるからだ。とにかくパッドの減りが早くても、良く効くブレーキを求めるライダーがいると思えば、効き具合よりもコントロール性を重視するライダーもいる。また、キャリパーやローター周辺が「汚れにくい」ことをうたい文句にした商品もある。どんな商品、どんなブレーキパッドが良いのかは、ライダー自身の好みを反映するものなので、一概に「この組み合わせがベスト」だと決めつけることができないのも、ブレーキパッドのチョイスなのだ。 同一モデルに乗る仲間が、自分の車両とは違ったブレーキパッドを組み込んだ時には、試乗を申し出て、実際に操作フィーリングや効き具合を体感してみるのも良いだろう。ブレーキパッドひとつの違いで、ブレーキフィーリングは相当に変わるものでもある。

 

単純にパッド残量うんぬんではなく、定期的なクリーンナップによっても、ブレーキ性能やレバータッチには違いが出るものだ。ここでリポートしたブレーキキャリパーピストンのもみ出しクリーニングのビフォー・アフターでは、顕著な違いを体感できた。さらにお手軽なメンテナンス実例を紹介しよう。ブレーキレバーの作動性がいまひとつ良くないときには、ピボットボルト周辺のクリーニングとグリスアップ、マスターシリンダーピストンを押し込む部分へのグリスアップ、さらには、マスターシリンダーピストンを180度回転させるなど、ピストン位置のローテーションを行うだけでも、ビフォー・アフターの違いに驚くことがある。次のメンテナンスタイミングには、これらの作業を実践してみよう。きっとその違いには誰もが驚くはずだ。

 

ブレーキパッド交換時にはブレーキピストン「もみ出し」磨きが効く!! ギャラリーへ (15枚)

 

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