
バイクメンテナンスの領域では、ほぼアンタッチャブルといえる「メーター修理の世界」。機能的な修理はできないとしても、その一歩も二歩も手前の作業なら、チャレンジできないものか!?チャレンジしたくなってしまうのがサンデーメカニックだろう。凹へこみが目立つスピードメーターのリムを修理してみた。
目次
実は一般的なハンドツール+応用で分解できる!!
メーターリムのカシメ部分を起こし、鈑金修理するために必要だった各種工具類。最初に行うカシメ部分の起こし作業が仕上がりの良し悪しを大きく左右する。オイルシール脱着用のドライバーが使いやすかった。カシメのヨレヨレを戻すときに使った当て金は、ベアリングドライバーの外周。
チカラが加わりやすいバンド固定がいい!!
この手のメーターデザインは70年代のモデルに数多い。バイクメーカーを問わず日本精機製なら内部パーツは共用部品も多い。メーターリムの分解はバンド固定から始める。ホースバンドを使ってリム外周を軽く締める。強く締め過ぎるとキズの原因になるので要注意。キズ付けが心配なときにはマスキングテープやビニールテープを2周くらい巻くのが良い。カシメリムは、この外周固定バンドがあるとチカラを加えやすく楽に起こせるようになる。メーターボディーへのキズ付けにも要注意。ボディに保護テープは巻かなかったが、これもテープで代用できる。カシメを起こすまでに約10分、費やした。
メーターレンズ=ガラスを割らないように分割
ホースパンドを緩めて外し、カシメを起こした部分をさらに起こしてマイナスドライバーを差し込む。ボディをグイット返すとステンレス製レンズリムはするっと抜き取れた。この作業時にはガラスレンズを割らないように注意。外リム、ガラス、ダンパーパッキン、内リムの順で組み込まれている。1970年代後半から80年代のメーターは日本精機製が多く、その作りはほぼ同じ。文字盤のデザインだけ異なるモデルも数多い。
アイデア優先で板金作業実践!! うまく行けばラッキー!!
リムが外れたところで早速リムの鈑金に取り掛かりたいが、まずは、カシメを起こした部分のヨレヨレを直すために、ベアリングドライバーを固定して鈑金作業用の当て金代わりにする。軽く叩くだけでヨレヨレはなだらかに直っていくが、円弧形状に合わせて叩かないとリムが変形してしまうので、叩き過ぎにも要注意。当て金の柄は、クイックグリップで作業板に固定した。カシメを起こして再びカシメ直す前にヨレヨレを鈑金修理しておこう。そうすれば後々復元した後の仕上がりも良くなる。円弧で鈑金したので、リムが変形することは無かった。
レンズリムがステンレス製なら気楽に磨ける
いよいよエクボ凹の修理開始。ここは当て金ではなく作業台を当て板とした。面部分を板に当て、内側に凸っている部分を平ポンチと小型ハンマーで軽く叩く。一気に叩かないで様子を確認しながら作業進行。ステンレス製でサビないリムが、この時代の日本精機製メーターの特徴だ。凹部分を内側から叩くことで、ほぼ平面を回復することができた。
凹が想像以上に鋭角だったため、小さな亀裂が入ってしまった。作業前に温めれば良かったのか? 少々残念。600番の耐水ペーパーで凹患部の歪みを削って平面にし、その後に1000番、1500番で仕上げた。ステンレス製なので削って磨けばもともとの凹部分は目立たなくなる。メタルポリッシュをウエスに塗布して指先で磨く。まずはペーパーで仕上げた部分から開始。表面がなだらかになっていれば簡単に輝くはず。そして、全体を磨いて風合いを揃えよう。リムの内側にセットされていたダンパーかつ防水効果を持つゴムが想像以上に汚れていたので、マイペットなどのクリーナーを吹きつけてからしばらく待ち、ウエスで拭きとった。ガラスレンズも汚れていたので、家庭用洗剤のマイペットを吹き付けてから歯ブラシでゴシゴシ汚れ落としを行なった。エッジには防振ゴムが喰い付いていたのでしっかり除去。
組み立て復元は湿気を飛ばしてから開始
ステンレス製の外リム、ゴムダンパー、内リムがキレイになっても即復元してはいけない。洗浄時の水分が残っているとレンズ曇りの原因になるからだ。ここでは、作業灯を利用してやわらかい光の熱で部品を乾燥させた。ダンパーゴムにガラスレンズをハメてから外リムにセットし、ガラスレンズに汚れや指紋などが残っていないか確認しよう。
汚れは乾いたウエスで乾拭き。メーター本体にリムを被せるのではなく「裏返したリムにメーターを差し込む」ように作業するのが良いようだ。作業台の板にメーターを逆さまに置き、板を挟み込みながら大きめなウォーターポンプブライヤーでカシメ部分を押し込み再びカシメ直す。使い易い工具を見つけることで作業性が高まる。ある程度カシメ終えたら、メーターリムに再びホースバンドを巻きつけて締め、リムが真円になるように調整するのが良い。さらに手早くカシメて仕上げよう。
- ポイント1・チャレンジ精神でトライあるのみ!!自信が無い時には手出ししないのも勇気!!
- ポイント2・普段は使わなくなって余っているマイナスドライバーでメーター修理専用工具を作ってみよう
- ポイント3・肝心のガラスレンズはしっかり洗浄と乾燥。復元前にめがね用の曇り止めやヘルメットシールドの曇り止めケミカルをシュッと吹き付けることでガラスレンズは曇りにくくなり効果的
自己責任に於いてスピードメーターを分解し(今回はレンズとリムの分解だけです)、内部の要所に少量のグリスアップを行なうことで、メーター本体から発生するノイズや微振動は、想像以上に減るものだ。つまりスピードメーターにも、定期的なメンテナンスが必要不可欠!!単純なグリスアップや注油が効果的だとわかってはいても、パッケージされたアナログメーターの修理は難しい。重要なのは場数と経験。やるかやらないかは、状況次第になりますね。
ギャラリーへ (15枚)この記事にいいねする