
20世紀に誕生した多くのバイクには、キャブレターが装備されているが、このキャブが不調でエンストしたり、気持ち良く走れないケースが多々ある。最悪なのは、キャブの外にガソリンが溢れ、流れ出てしまうオーバーフロー問題。単なる不調では済まなく、オーバーフローは、実に危険なトラブルでもあるので、即刻修理したいのが本音だろう。そんなキャブトラブルのひとつ=オーバーフローの原因の多くが、実は、ガソリンタンク内部に発生した「サビ」にある。ここでは、ガソリンタンク内に発生した、うっすらサビの除去にチャレンジしてみよう。
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1液で済むガソリンタンクのサビ取りケミカル
タンク内部のサビを除去した後に鉄板表面を樹脂コーティングするケミカル商品もあるが、サビの除去を徹底的に行わない限り、数年後には再びサビが発生してしまい、結果的には、樹脂コーティングを持ち上げるようにサビが再び侵食し、樹脂コーティングの破片がガソリン通路を詰まらせてしまうトラブルもある。そんな失敗例は数多くあるので、旧車のサビタンクには、まずは「1液」でサビの除去と防錆被膜を形成するケミカルの利用がお勧めだ、そんな一液ケミカルのパイオニア的存在が、花咲かGタンククリーナーだ。
燃料コック無しバイクはこのように接続
花咲かGタンククリーナー原液が600ccほど余っていたので処理実践。タンク内のサビ進行度は軽度で、タンク内壁の表面に粉のようなサビが発生していた程度なので、これならピカピカに仕上げることも可能。スーパーカブやダックスのようにキャブ本体に燃料コックがあるモデルの場合は、ONとRESのガソリンホースで直結すれば、液漏れを防ぐことができる。
お湯で処理するとサビ取り効果は一気に高まる
タンク容量が2.5リットル弱なので、今回は約200ccのタンククリーナーを利用した。やかんで沸かしたお湯と花咲かGタンククリーナーをバケツの中で混ぜてサビ取り溶液を作る。お湯でヤケドしないようにするのと、熱湯ではなくて大丈夫。ケミカル溶液はジョウゴを使ってタンク給油口の「口切り満タン」まで注入。口切りまで入れないとタンク内に空気室ができ、そこにサビが残ってしまうからだ。口切り満タンになるようにしつこくエアー抜きしながら注ぎ入れた。理想的には60℃前後のケミカル溶液が良いようだが、常温以上なら間違いなく効果が高まる。
時々タンクを揺すってケミカル液を移動
ガソリンタンク口切り満タンまで注いだら、キャップを閉じてレバーをOFFにする。車載を考慮した時代のホンダ4ミニ、1970年代前半以前のモンキーやダックスにはこのような通気レバーの装備があった。通常のタンクキャップだと通気孔からケミカル溶液が流れ出てしまうため、厚手のビニール袋を利用するのも良い。口金の上にビニールを載せて、その上からキャップを慎重に閉じると良い。ビニールが破けないように注意しよう。数時間おきにタンクを揺すって動かし、夜間は毛布に包んで保温しながら放置した。
「リンス処理」の効果は絶大
翌朝、タンクを揺すってから1時間程度待ち、その後、タンク内のケミカル溶液をバケツに流しだした。溶液にクリア度は残っていたものの、紅茶のような色になっていた。紅茶程度の濁りなら、サビ取り溶液は「繰り返し利用」可能なので、ポリタンクへ保管し次の機会にも利用することにした。今回は原液に対して12倍程度で利用したが、酷いサビでも8~10倍で相当反応する。ケミカル溶液を排出したらタンク内を水道ホースでしっかり洗浄し、仕上げに「リンス処理」を行う。このリンス処理とは、サビ取りに使ったケミカル+お湯の新品溶液を流し入れ(作業前に少量を別分けしておく)、キャップを閉じ、タンク内全体に行き渡るように揺すってから抜き取り、そのまま乾燥させる処理の通称名がリンス処理だ。この作業によって改めて新品溶液でタンク内面全体をコーティングして乾燥させるのだ。大型モデルのタンクでも、リンス液は1リットルもあれば十分。このダックス用サイズならばコップ一杯程度で良いだろう。
- ポイント1・ガソリン給油する前に口金から指先を差し入れ、タンク内壁を直接触れてザラザラ感が無いか確認しよう。そのザラザラがサビなのだ
- ポイント2・口金先下に筒があるタンクは指先確認ができないので、LED懐中電灯のスポット光でタンク内を目視確認しよう
- ポイント3・タンクを取り外す機会がある際には、ガソリンをすべて抜き取り、タンク内のコンディションを確認するのも良い
ガレージ内で毛布を掛けられ、 20年以上乗られていなかったダックス号。ガソリンタンク内には薄っすらサビが発生し、タンクの底には残留劣化したガソリンがワニスのようになって溜まっていた。ネチョネチョした劣化ガソリンは、タンクキャップ穴から見える位置(燃料パイプ周辺)に堆積していたので、ハンディヒーターでタンクの底を温めてから、長いマイナスドライバーを口金から差し込み、こそぎ取ることで、ほぼすべてを除去することができた。
次に、200ccの花咲かGンククリーナー原液とやかんで温めたお湯をバケツに入れて混ぜた。計算的には12倍程度のケミカル溶液になる。いつもの感覚で温度測定はしなかったが、風呂のお湯よりも熱く、指でなんとか触れられる60℃前後の溶液から作業するのが効果的だ。処理溶液で満たしたガソリンタンクは、できる限り温度を下げないように、毛布などでグルグル巻きにしておくのが良い。溶液温度が常温以上あるとサビ取りの活性化が良く、ケミカル能力が増すようだ。冷水溶液との能力差は、雲泥の差とも言えるので、ガソリンタンクのサビ取りを実践する際には、事前にお湯を作って不要になった毛布などを準備してから作業に取り掛かることをお勧めします。
一晩放置してから翌朝に処理液を流し出したが、毛布を巻いていたため処理液はまだまだ温かかった。液汚れが少ないので、かなり程度が良い仕上がりになったのは想像できたが、内部を覗き込んでビックリ!! 新品タンクじゃないの!? と思える雰囲気に仕上がっていた。鉄板の輝きが美しく、如何にも「サビ取りしましたよ~」といった灰色的かつ輝きが無い仕上がりにはならなかった。程度が良いタンクって、こんないい感じの仕上がりになるから素晴らしいですね!! 重症化する前の一手が大切だと思い知った作業だった。
キャブ不調の原因はタンク内のサビにあり!!タンクのサビは徹底除去!! ギャラリーへ (6枚)この記事にいいねする