先日、サグ出しという言葉を知ったんですよ。サスのイニシャルセッティングをする上で基本となる考え方。オフでは常識らしいけど、オンではあまり聞きなじみのない言葉。乗り手の体重に合わせて、スプリングが一番良く仕事ができるように調整することでサスのポテンシャルを出しやすい状態にするってことらしい。サスセッティングって、自分みたいな初心者には、どう調整すればいいのかって正解がわからないけど、サグ出しなら明確に答えが出るわけで。というわけでサグ出しのやりかたをダートフリークに教えてもらいに行ったよ。

サグ出しとは

ハンターカブの前後サスをイニシャル調整をできるようにしたのは良いんだけど、サスセッティングってよくわからないんですよね。
乗って具合を見て良い案配に調整すれば良いんだろうけど、自分の判断にも自信がないわけで。
そこで知ったのがサグ出し。サグ(sag)ってのはたわみとかを表す英語。

バイクのサスってのは平均体重に合わせてセッティングされているけど、実際には人によって体重は違うわけで。メーカーの想定する体重よりも重かったり軽かったりするとベストなセッティングにはならないわけで。

そこで乗り手の体重に合わせてスプリングへの荷重を適切にすることで、スプリングが一番性能を発揮できるようにするのがサグ出し。
同時に、前後のスプリングへの荷重を合わせることで、感覚的に前後の高さが揃うような調整ができるらしい。
ライダーごとの好みや走行シーン、バイクの特性もあるから、サグ出しだけで完璧なサスセッティングが出るとは言い切れないけど、基本にしてサスセッティングの基準になってくれる手法なのよ。基本は大事。
サグ出しでイニシャルの基準を出して、あとは好みに合わせて前後のイニシャルを調整、減衰調整ができるサスなら、そこもバランスをとっていくっていう感じね。

ちなみにこのサグ出し。オフロードでは超定番らしい。オフ車の場合はリアのみサグ出しするのが定番だとか。
もちろんフロントもリアもやった方が良いに決まってる、というかせっかく前後イニシャル調整仕様にしたんだから両方やりたい。

というわけでオフロードパーツメーカー大手のダートフリークに行って、サグ出しのやり方を教えてもらうよ。

サグ出しのための準備

まずは必要工具なんだけど、工具は大して要らない。
メジャーとか物差しとかのサス長を測る道具と、イニシャル調整するための工具があればOK。

他に準備としては、前後タイヤを浮かす準備。バイクによってはそこの敷居が高いかも。サスが伸びた状態を計測するのでレーシングスタンドであげると正確な数値が出ないのよ。
ハンターカブならセンタースタンドがついてるから楽勝。アンダーガードついてるから、オフ用のスタンドに乗っけちゃっても良いけど、センタースタンドで十分いける。

さて、ここからが敷居の高いとこなんだけど、サグ出しって1人だと出来ないのよ。最低2人、可能なら3人いれば安心。

なんで人数が必要かというと、「ライダーが両足をステップの乗せた状態で乗車(1人目)」した状態で、「サスの長さを計測(2人目)」する必要があるから。そのときに「バイクを支える人(3人目)」がいると安心。
今回は2人でやったので、バイクを支えつつサスの長さを計測してもらったよ。正直ちょっと大変そうだったので3人推奨。

まずは前後タイヤが浮いた状態でサス長を測ろう

巻尺をもってダートフリークにやってきたよ。
教えてくれるのは、フロントフォークトップキャップ イニシャルアジャスターの開発担当でもあるダートフリークの石原さん。大手サスペンションメーカーでの開発経験もあるサスのプロ。今日は宜しくお願いします。

ダートフリーク 石原さん「よろしくおねがいします」

まずはサグ出しの流れを教えてください。

ダートフリーク 石原さん「サグ出しに必要なのは数値計測です。タイヤが浮いた状態でのサス長ライダーが乗車した状態でのサス長さを測ります。その数値の差がスプリングが一番縮んだ状態の長さ(ホイールトラベル)の1/3くらいになるように調整します」

なるほど、こういうことですね。

 

イニシャルをいじって「ライダーが乗車したときのスプリング長」を調整。それを繰り返してAの数字をBに近づける、という感じであってます?

ダートフリーク 石原さん「そういう感じです。今回は1/3でサグ出しをしますが、場合によっては、2/3とか50%に近づける場合もあります。ただ50%は越えないようにしてください」

色々考えるとややこしくなるので、1/3でお願いします!

ダートフリーク 石原さん「では、まず最初に前後タイヤを浮かせた状態でサスの長さを測りましょう」

かしこまりました! こうですね!

 

ところでスプリングの長さを測るって、リアはわかりやすいですがフロントはどこを測れば良いんですか?

ダートフリーク 石原さん「浮いた状態と乗車時の差を取るだけなので、一定の位置で測ればどこでも大丈夫ですよ。今回はトップブリッジ上端とフォークブーツ下端で計測しましょう」

 

ダートフリーク 石原さん「フロントはトップブリッジ上端からフォークブーツ下端で約446mmですね。リアはスプリング長で測って約218mmでした。フロントのホイールトラベルってわかりますか?」

フルストローク量を測ろう

 

公式サイトを見てたら「ストローク量110mm」って書いてあったので、きっと110mmだと思います。ただ、リアはキタコのサスなんですが公表値がなかったんですよ。

ダートフリーク 石原さん「フロントは110mmでいきましょう。リアはダンパーからバンプラバーがある程度縮んだ位置までの長さで良いと思います」

バンプラバーってのは、ここね。

 

ダートフリーク 石原さん「公道でのライディングでバンプラバーが完全につぶれ切ってしまうことはないので、バンプラバーが20mmくらい縮んだ程度で計測しましょう。およそ75mmですね」

 

スプリングの最大縮み量じゃなくて、ダンパーがバンプラバーに当たるまでの距離+バンプラバーが潰れるであろう量なんですね。

ダートフリーク 石原さん「リアサスの基本的な構造として、スプリングが縮み切る前にダンパーがバンプラバーに当たるように設計されているんですよ。スプリングが縮み切ってしまうとスプリングの性能が劣化してしまいます」

なるほど。これでほとんど数字埋まりましたね。

 

あとは乗車時の数値を測って、調整していけばいいんですね。

ダートフリーク 石原さん「いわゆるサグ出しの作業になりますね」

フロントのサグ出し

まずは乗車時での長さを測ってもらうよ。フォークトップイニシャルアジャスターのイニシャル量はめいっぱいソフトくらい。

ダートフリーク 石原さん「約387mmですね」

 

ということは、約446mm-約387mmで約59mmですね。目標は36.3mmだからだいぶ遠いですね。

 

ダートフリーク 石原さん「そうですね、若林さん、体重いくつですか?」

85kgくらいですね。こないだ健康診断でメタボにひっかかりました。

ダートフリーク 石原さん「なるほど。イニシャルを掛けましょう」

 

で、イニシャルを最強までかけて、再び乗車して計測。

ダートフリーク 石原さん「イニシャルをもっとも強く掛けた状態で約409mmですね」

計算してみるとこうですね。

 

37mmと36.3mmなので、ほぼ近似値といって良いんじゃないでしょうか。

これ以上イニシャル掛からないし、これより硬くするにはキタコのシングルレートスプリングとかにすれば良いんじゃないかな。

 

ダートフリーク 石原さん「そういえば純正スプリングは、不等ピッチ(スプリングの上下で巻き数が違うタイプ)なんですよね?」

たしかそのはずですよ。

ダートフリーク 石原さん「では、1/3ではなく2/5くらいで計測した方が良かったかもしれません。シングルレートスプリングであれば1/3で良いんですが、不等ピッチの場合は初期沈み込みが量が多いので、数値の目安が変わります」

なるほど! でももう1/3で揃える心持なので今回はこのままいきましょう。

リアのサグ出し

では、リアの計測。といっても自分は乗ってるだけ。石原さんに支えてもらいつつ、計測してもらうという、相変わらず申し訳ない状況。キタコ リアショックのイニシャルは最弱まであと3-4mmという感じ。

ダートフリーク 石原さん「約192mmですね」

 

計算してみると約26mm。目標が25mmだから結構近いですね。

 

ダートフリーク 石原さん「そうですね。バンプラバーの縮み量はおおよそですし、そこまでシビアにならなくても大丈夫ですよ」

ですよね、正直1mm程度の違いなら全然OKだと思いますが、調整してるシーンを載せたいんですよ。すいません、一応もう少し追及させてください。
というわけでピンスパナ2本を使ってイニシャル調整してもらった。

 

ダートフリーク石原さん「ほぼ最弱ですね。ネジ山でいうと2山くらいです」

 

ではあらためて計測。

ダートフリーク 石原さん「約193mmです」

リアはサスが短いだけあって割と数値変化も小さいんですね。
最終的な数値をまとめるとこんな感じ。

 

最終的なイニシャル調整はフロントが最強、リアがほぼ最弱。
自分の感覚やってたら前後でイニシャルがこんだけ違う極端なセッティングは怖くてできないかも。
サグ出しというか、数値って良いですね。安心感があります。

ダートフリーク 石原さん「フロントは純正スプリングですが、リアは社外なのでリアのスプリングレートが高いんじゃないでしょうか。フロントのスプリングも交換してサグ出しすると、よりバランスが向上するかもしれません」

なるほど、前後でスプリングが良い感じに仕事できるようになってるとはいえ、スプリングレート自体のバランスというんもあるんですね。とりあえず今月はもうお金がないのでこれで試運転してきます。ありがとうございました!

まとめ(試運転してみての感想)

ウキウキで走り回ってみたところ、めっちゃ乗りやすくなっててびっくりした。
ハンターカブってフロントがふにゃっとしがちなんだけど、それが解消されてる。交差点とかを低速で曲がるときも不安感ゼロ。
曲がり始めも素直に入っていくし、曲がってるときも自分の体重がバイクの中央にある感じ。イメージ通りの挙動をするというか。
スキーでいうと、エッジに体重が乗ってる感じというかうまく表現できないけどまじで凄く良い。

フロントイニシャルアジャスターや社外リアサスが必要だし、手伝ってもらう人も確保しないとだったりで敷居高いけど、一度やってみて損は無いよ。

サス調整の基本はサグ出し。バネ荷重を体重に合わせてサスを活かすのだ ギャラリーへ (17枚)

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