
レストア中のCBR1000F(SC21)はフルカウルのバイクなのですが、レーサーレプリカではなく、輸出専用車だったこともあり、2名乗車を長時間行っても問題のない構造の車体でした。当然シートもかなり大柄で、スポンジもしっかりしたもの。自分の車体のシートは幸いなことに破れがない非常に程度が良いものだったのですが、経年劣化もあり引っ張ると生地の表面が割れてしまう状態でした。
以前リフレッシュしたVFR800でもシート生地の張替えは行っていたので、今回も迷わずシート生地の張替えに挑戦することにしてみました。
前回の作業
シート生地の入手
CBRのシートの形状は立体的ではあるものの、一枚の生地で構成されていました。とはいえ、生地に柔軟性がないと皺になったりすることが予想されたため、フェイクレザーサンプルを取り寄せいろいろ確認し、結果的に縦横に伸縮する柔軟なシンコール社のオールマイティという生地(黒色)を取り寄せて使用することにしました。
(自分は張りやすさを重視してこの製品を選びました。耐久性、耐候性などはバイクのシート専用の生地よりも低い可能性がありますのでご注意ください。)
硬くなった純正シート生地をはがす
国産バイクのシートの多くはタッカーを使った張込みがほとんどです。マイナスドライバーとラジオベンチなどでタッカーの針を一本ずつ抜いていくだけで簡単にシート生地とスポンジとシートベースを分解することができます。ただ自分のCBRは針自体が錆びていてうまく引き抜けないことが多かったため、針が刺さっているベース部分をヒートガンで温めてから抜くようにしました。
スポンジとベースをクリーニングする
シートのベース部品は多少汚れているものの、素材の変質などはほとんどなかったため、オキシクリーンにつけて綺麗にしています。スポンジの端のほうは少し色が変わっていましたが加水分解は進行していませんでしたのでそのまま使うことにしました。
一応変色しているところを中心にカビキラーをスプレー、今後もカビが発生しないようにした後、中性洗剤で丸洗いをしました。スポンジ自体がとても大きいので丸洗いはお風呂の湯船の中で洗剤と一緒に足踏みをする形で行いました。
スポンジ乾燥~補修
今回の作業で最大の誤算はスポンジがなかなか乾かないことでした。過去のバイクのスポンジを丸洗いしたときは洗濯機に入れることができたので脱水を行うことができ、簡単に乾かすことが出来たのですが、CBRのスポンジは非常に厚みがある上に大きかったため、人力で絞った後は自然乾燥を行うことにしました。
しかし冬場だったこともあり1週間たってもスポンジを押すと水分が出てくる状態に…。水分が残ったまま張り込んでしまうとその後カビや腐りの温床になることが予想されたため、結果的に1か月以上乾燥させたのち、ヒーターで強制的に温めて水分を飛ばすことにしました。
またもともとスポンジの状態はよかったのですが、丸洗い後足踏み脱水とかを行っていたせいか?スポンジの一部に切れ目が入ってしまったため、ボンドで接着することに…。またしても、いじり壊しをしてしまいました。今回は大事に至らず良かったです。
シート生地の張込み
ようやく生地を貼れる状態になったので、シート生地を貼りこみます。生地を伸ばしたり一度打った針を抜いたりすることが多いため、温かい部屋で落ち着いて作業を進めました。
過去の経験を活かし(?)今回は通販で購入したエアタッカーを使用しました。手動のタッカーを長年使用してきたのですが、打ち込み時の姿勢やシートベースの固定が良くないと奥まで打ち込むことが出来ず、結局打ち込みを再度することになり、生地に無駄な穴をあけてしまうことが多くありました。特にバイクのシートの張り込みはかなり細かく針を打つことになるので思い切ってエアツールを購入しました。いつものことですが…人身御供覚悟の激安品ですが、機能的には全く問題なく使用することが出来ました。
シート生地は少し大きめのものを張込みながら少しずつ切っていくことになるのでよく切れる鋏をいつでも使えるように用意しておきます。
張込み作業の手順は完全に自己流ですので正解ではないかも?なのですが参考までに記述しておきます。
① 最初に前後の中心近くを固定
② シートの形状が変化する凹部にあたるところを集中的に固定
③ そこから少しずつ周辺を固定
④ 最初に固定した前後の針を抜き、縦を引っ張りなおし固定
⑤ 丁寧に生地を伸ばしながら曲線部分を固定していき一旦全体を確認。
⑥ 皺が寄ったり、ひずみが大きい部分は周辺の針を抜いて再度固定しなおす
といった流れで行っています。
以前のフェイクレザーは伸びる方向が一方向だったのですが、今回使用した生地は縦横方向に延びるので非常に楽に皺を取ることが出来ました。とはいえ強く引っ張った状態で張り込むとちょっとしたことでシートの表面が破けやすくなるのと、引っ張る力のせいでシートベースが変形してしまうことがあります。実際自分のCBRのシートは少し横方向に広がってしまい、装着するとき少しシートベースを左右から抑えるような力を加えないと正しい取付位置につかなくなってしまいました。大きな問題にはなりませんでしたが、こういったことは実際にやってみないと気付けないことですので良い経験になりました。
まとめ
今回は経年変化でかなり固くなってしまっていたCBRのシートの生地をはがし、部品を綺麗にしてからスポンジを丸洗い洗浄、補修を行ってから伸びの良いフェイクレザー生地で張込みを行いました。車種専用に裁断、縫製された生地であれば張込み時にあまり引っ張らなくてよいのでシートベースへの負担は軽く、傷にも強いと思います。自分は破けたらまた張りなおせばよいくらいに考えていますので今回のように一枚生地からの張り込みを行っています。
また、CBRにはもともとタンデム乗車時につかめるバンドがシートに付いているのですが、強度をちゃんと保証できるバンドを同じ生地で準備するのが難しいので、取り付けるのを諦めました。リアのタンデム時はリアシート後ろのグリップを握ってもらうようにしたいと考えています。こういったところはDIYならではの割り切りになりますのでご了承ください。今回は洗ったスポンジが乾かないといった想定外のことが起きて時間がかかってしまっていましたが、何とか公道復帰ができるよう地道に作業を続けていきたいと思います。
■使用した工具、備品■
マイナスドライバー
ラジオペンチ
ヒートガン
大型たらい
オキシクリーン
カビキラー
中性洗剤
電熱ヒーター
フェイクレザー(黒)1.5m×1m
エアタッカー
コンプレッサー
タッカー針
はさみ
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いつもながら素晴らしい出来ですね!