エンジン内では高熱かつハードな条件下で金属部品同士が激しく摺動作動している。当然に、摺動(擦れあっている)部分は、鉄部品同士であっても、少しずつ減ったり、変形したりしてしまうもの。だからこそ、潤滑が重要=エンジンオイルが重要な働きをするようになる。しっかりオイル管理しているつもりでも、長年の走り込みで、エンジンコンディションは低下してしまうもの。ここでは、分解したシリンダーヘッドを可能な限り再生=「現状最善コンディションへ復活」させるため、内燃機加工へ依頼することにした。そこで使われていた言葉が「シートカット」や「ヘッド面研」だった。それってどんな作業なの……!?

バルブシートとバルブフェースの当たり面は「幅」が重要


シリンダーヘッドの燃焼室にはバルブを受けるポートがあるが、バルブをダイレクトに受ける部分をバルブシート(リング状圧入部品)と呼び、傘型バルブがバルブシートに当たる部分を一般的にバルブフェースと呼ぶ。長年の走り込みによって、このバルブの当たりがベタ当たりに幅広くなってしまう。そんな幅広当たりを補正することで、吸排気ガスがキッチリ流れコンプレッションが高まり、エンジンパワーが確実に向上するようになる。シリンダーヘッドのバルブシートを形状再生する作業を「バルブシートカット」、バルブフェースの幅広当たりによる凹面を研磨再生するのが「バルブフェース加工」だ。 分解した吸入バルブは当たり幅がやや広かったので、アメリカKWIK-WAY社製のバルブ研磨機でフェース研磨を行った。精密で使いやすい機器ながらアメリカ製だけあって小径傘バルブに対応していない。そこでiB井上ボーリングでは、小径傘バルブでも使えるように改造利用している。

内燃機加工のプロショップで精密再生を依頼






撮影協力をいただいた埼玉県川越市のiB井上ボーリングでは、スイスMIRA社製「バルブシートリフェーサー」という機械を利用し、シリンダーヘッドを加工再生している。独特の芯だし機構で様々なバルブガイドに対しても素早く正確に「バルブ軸の芯を測定」してくれる。作業性が高く精密加工できるところが、この機械の優れたところだ。機上のバキュームテスト機器で圧漏れ検査も素早くできる。内カット、外カット、アタリ面カットのシートカッターは利用せず、1枚のカッター刃で最適のシートカット形状を実現できる時短と高精度、再現性を両立できる素晴らしい機械を導入している。

カワサキW650の4バルブ2気筒も高精度に再生


1気筒あたり4バルブのカワサキW650。新車購入以来、乗り続けているオーナーの中には、すでに5万キロ以上走り込んでいる方は少なくない。同じバイクに乗り続けていると、徐々に低下していくエンジンパワーに気が付かないことが多い。「始動性は良いし、マフラーから白煙は出ないし、アイドリングも安定しているから……」と言ったところで、エンジンパワーは5万キロの走れば確実に低下している。内燃機加工後の初走行時には「えっ、ボアアップしたかのようにトルクフル!!」そんな感覚になることが多い。吸排気バルブとバルブシートの密着が、4ストロークエンジンにとって「何よりも命」なのだ。

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