配線の延長や短縮で切り接ぎしたり、コネクターや端子を使わず配線を恒久的に接続する際に用いるはんだ付け。はんだごてとはんだがあれば誰でも簡単にできるのが特長ですが、確実性とクオリティをアップするにはちょっとしたコツがあります。ここでははんだごての選び方から実際の作業に至るまで、はんだ付け成功のためのポイントを解説します。

こて先の温度管理ができればはんだ付けのクオリティが大幅にアップする

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goot(グット)ブランドで知られる太陽電機産業のセラミックヒーター式デジタル温度調整機能付きはんだこて。温度設定範囲は200~500℃で、コンセントにプラグを差し込めば約30秒で初期設定温度の350℃に到達する。このスピードは消費電力80Wのセラミックヒーター式ならでは。価格は同社のニクロムヒーター式はんだこて(80Wクラス)の4倍以上となるが、圧倒的な機能性の高さが魅力。

 

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温度調整機能なしのはんだごての温度は消費電力に応じた最高温度まで上昇するが、温度調整機能付きはんだごては設定温度以上には上がらない。またこの製品にはこて台に置いてから一定の時間が経過するとこて先の温度を下げるスリープ機能も付いている。

 

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初期設定は350℃で200~500℃の間で温度設定が可能。はんだ自体の融点は200℃台前半だが、こて先の温度は接合部分を加熱するため高めに設定してある。温度調整機能のないニクロムヒーター式の80W クラスだと、常に500℃以上まで温度が上昇する。

 

金属素材自体を溶かして接合する溶接に対して、はんだ付けは素材の隙間にはんだを浸透させて接合します。はんだ付けにははんだごてとはんだ(主に糸はんだ)が必須ですが、特にはんだごてはワット数や加熱方法の違いで多くの種類があり、何を基準に選べば良いのか迷ってしまいます。
一般的にワット数が大きければこて先の温度が高温になります。種類によって異なるものの、はんだの融点は200℃台なかばであることが多く、はんだごてのこて先の温度がそれ以上であればはんだを溶かすことができます。

しかしはんだ付けを行う際ははんだ付けする相手の温度も上昇させなくてはなりません。配線同士をつなぎ合わせる場合、配線にこて先を当てて温度を上昇させることではんだがスムーズに流れてしっかり接合できます。
つなぎ合わせる配線が細ければ熱はすぐに伝わりますが、アースケーブルのように配線が太くなると芯線に熱が奪われるため、熱量が必要です。はんだごてに20W、30W、40W、50W、100Wなどと消費電力の違いがあるのはそのためです。
一般的な電気系工作やメンテナンスでは30~40Wクラスのはんだごてが多用されます。大は小を兼ねるという意味で100Wクラスのこてを使うと、0.5~0.85sq級の細い配線だと芯線が過熱して被覆が溶け出すことがあるので注意が必要です。

こて先を加熱するヒーター方式による特性の違いもあります。リーズナブルなはんだごてに多いのがニクロムヒーター式で、温度が上昇して安定するまで2~3分掛かります。これに対してセラミックヒーター式は数秒~数十秒で設定温度に達する立ち上がりの速さが特長で、同じワット数ならニクロムヒーター式より高価になります。
安価に済ませたいのであればニクロムヒーター式一択ですが、はんだづけする部分にこて先を当てると熱が逃げて温度が下がるためはんだが流れにくくなります。その際の回復力の早さはセラミックヒーター式にかないません。そのため連続的にはんだ付けを行う際はニクロムヒーター式よりセラミックヒーター式の方が安定した作業が可能となります。

セラミックヒーター式はんだごての中には、温度調整機能が付加されたものもあります。一般的に消費電力が大きくなるほどこて先の温度も高くなりますが、先述の通り温度が高くなりすぎると配線や電気部品にダメージを与えることもあります。温度調整機能があれば、商品電力が大きくてもこて先の温度を適切に管理できるため、過熱による破損を防止できます。

ここで使用しているはんだごては、消費電力80Wで最高温度は500℃と高温まで上昇しますが、温度調整機能によって一般的なはんだ付け温度である350℃を安定的にキープします。またこて先の温度が低下しても80Wのパワーで短時間で温度が回復するため、連続的に作業を行う際もはんだ付けの品質が安定します。

はんだ付けする部分を加熱してからはんだを流し込む

はんだ付けははんだを溶かしながら配線や電子部品を接合しますが、その際に接合する部分も適度に加熱することが重要です。二百数十度で溶けたはんだを20℃の配線に付着させても温度差が大きすぎてうまく流れず、俗にイモはんだと呼ばれる状態になってしまいます。
それを避けるにははんだを溶かす前に接合部分にはんだごてを当てて加温しますが、はんだ付けする部分の面積や体積、はんだごての消費電力によって加温時間が左右されます。配線同士を接合する場面では、0.5~0.85sqクラスのであればこて先を当てた瞬間に細い芯線の温度が一気に上昇するので、こて先と同時にはんだを当てても毛細管現象でスッ~と流れるでしょう。

一方、1.25~2.00sqクラスの太い配線では熱が伝わりづらく逃げやすいので、はんだごての消費電力が小さい場合は長めに当てておかないと芯線の間に染みこまずはんだが転げ落ちてしまうかもしれません。
このあたりは実際にはんだ付けする材料によって調整が必要なので、配線同士をつなぐ場合は被覆部分への熱の伝わり方をチェックして加熱時間を変えると良いでしょう。被覆が収縮したり常温時より著しく柔らかくなったら過熱状態です。乾いた砂に水が染みこむように、加熱した芯線にはんだが吸い込まれるように流れるのが理想です。

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