2気筒以上のキャブレターやフューエルインジェクションのスロットルボディのメンテナンス作業において、バルブ開度を合わせる同調調整はデリケートさが求められます。そもそも同調調整にどのような意味があるのか、バキュームゲージを使って同調を合わせるとエンジンがどう変化するのかを考えてみましょう。
同調調整を行う際はエンジンコンディションが整っていることが前提

同調調整に限らず、キャブレターのメンテナンスやオーバーホールを行う際は、エンジンコンディションを把握しておくことも重要だ。シリンダーの圧縮圧力やリークダウンテストを行うことで、キャブの不調だと思い込んでいた原因がエンジン本体だったと分かることもある。

4連キャブを分解して復元する際は同調調整が必須だが、それ以前に4個のボディをズレなく連結することも重要。リンクプレートを固定する際は、平らな場所にキャブを押しつけながらビスを均等に締め付ける。
2気筒以上のエンジンでは、各シリンダーのコンディションが揃っていることが調子の良し悪しを判断する基準となります。経年劣化や走行距離の増加によって性能低下が全体的に均等に現れるのは仕方がありませんが、吸排気バルブにカーボンが噛みこんでいたりピストンリングの張力が低下して、特定のシリンダーの圧縮圧力だけが極端に低いような場合、キャブレターやインジェクションをどう調整してもアンバランスは解消しないかもしれません。
カーボンやワニスが付着して汚れたキャブやスロットルボディを洗浄する際、スロットルバルブの同調調整を行うのは有効ですが、その前提としてエンジン本体の状態に注目し、現状を知ることは重要です。
簡単なチェック方法としては、コンプレッションゲージで圧縮圧力を測定したり、リークダウンテスターで燃焼室の気密性を測定する方法があります。どちらも専用の測定機器が必要ですが、それらのチェックによってエンジン本体の状態を知らなければ、スロットルバルブの同調調整も真価は得られません。
バキュームゲージを使用した同調調整では、ゲージの指針を合わせることに注力しがちですが、前提としてはシリンダーごとの吸う力、圧縮する力、燃焼する能力が揃っていることが重要であるということを理解しておくことが大切です。
スロットルバルブの開度がバラバラだとどんな不具合がある?

向かって右のボディのスロットルバルブが左に比べて僅かに開いており(ベンチュリー上部とバルブ外縁に隙間がある)、これが吸入空気量のバラつきの原因になる。スロットル開度が大きくなれば影響が小さくなるが、吸入負圧が最も高いアイドリング領域では僅かな開度の違いが大きく影響する。

隣り合うキャブレターのスロットルバルブを連動させるリンクは固定状態ではなく、アジャストスクリューによって相対的に開度を変更できる。スクリューの回り止めとリンクプレートの位置決め用に2個のスプリングが組み込まれている。
シリンダーごとのコンディションが揃っていることを前提として、キャブレターやフューエルインジェクションのスロットルバルブの同調が不揃いだとどのような不具合が発生することが考えられるでしょうか。
キャブレターでもインジェクションでも、スロットル開度にバラツキがあるとシリンダーごとに吸入できる空気に増減が生じます。4気筒エンジンでひとつのスロットルバルブだけが他より開度が小さいと、ベンチュリーを通過できる空気量が少なくなります。
スロットル開度が1/4以上になればバラツキによる影響は小さくなりますが、スロットルバルブが全閉領域では混合気不足によるアイドリング不整が生じる可能性があります。その状態からスロットルを開けていくと4気筒の燃焼状態が揃わないためきれいに吹け上がらず、回転を上げ気味にして半クラッチを長く使わないとスムーズに発進できない症状が出ることもあります。
アイドリング時に4気筒がしっかり燃焼していないように感じたり、走り始めがギクシャクするような時は、スロットルバルブの同調ズレを確認してみると良いでしょう。ただし前言の通り、エンジン側のコンディションが揃っていることが前提となります。
同調調整には静的調整と動的調整の2パターンがある

4連キャブの中央、2番と3番キャブの間にスロットルドラムがある場合、1番と2番、3番と4番の同調を合わせてからこのスクリューを調整することで4つの同調が合う。

静的調整では、ボディの奥に置いた光源で裏側からベンチュリーを照らし、バルブの隙間から漏れる光の量を頼りにスクリューを回すのも有効。経年劣化によってバルブのスラスト方向(スロットルシャフト方向)が摩耗することがあり、その場合は開度調整を行っても横から吸ってしまうため吸入負圧が揃わない場合もある。スロットルバルブ単品は部品で入手できないので、そうなった場合はキャブ自体の寿命と判断せざるを得ない。
スロットルバルブの同調は、一般的な乗り方をしているうちに勝手にズレてしまうことはあまりありません。しかし経年変化によってスロットルバルブが摩耗して、ベンチュリーとの間の隙間が増えた場合、その限りではありません。
また、連結していたキャブレターボディをオーバーホールする際に分割した際には、スロットルバルブの連結リンクも外すため、同調はズレると考えた方が良いでしょう。リンクのアジャストスクリューを動かさなければ同調は変わらないという意見もありますが、実際にはリンクとスクリューの位置関係の微妙な変化によってバルブ開度にバラツキが生じることが多いようです。
スロットルバルブの動きを合わせるには、静的調整と動的調整の2つの方法があります。静的調整とは、エンジンに取り付ける前のキャブレターのバルブ開度を目視で確認して調整します。あるいはベンチュリーの底とスロットルバルブの間に同じ太さの針金を挟み、スロットルを僅かに開いた時の針金の動き方を比較しながら同調を合わせる方法もあります。
目視調整では正確に合わせられないと思われがちですが、入念に調整を繰り返すことで相当ハイレベルに同調を合わせることができます。静的調整をシビアに行うメリットとしては、スロットルバルブの開度を揃えた上で吹け上がりなどが良くない場合、コンプレッション測定やリークダウンチェックができなくてもエンジン本体に不具合があると判断できることが挙げられます。
一方バキュームゲージを使って行う動的調整は、エンジンが発生する吸入負圧を基準に行い、実際にシリンダーが吸入できる能力に応じた調整ができるのが特長です。そのため、ゲージで同調を合わせた後にキャブレターを取り外してのスロットルバルブを見ると、実は開度が揃っていないということもあります。
静的調整によってキャブ単体のバルブ開度を完全に同調させるのか、エンジンの状態に応じて動的に調整するのかについては、プロのメカニックの中でも意見が分かれますが、エンジンコンディションがよほど悪くない限りは、対症療法的に動的調整を行うのが一般的なようです。
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