
ボルトのネジ山がナメてしまったり、サビが酷いときに交換したいのが、シリンダーやシリンダーヘッド、マフラーフランジなどを固定するスタッドボルト。
抜き取りに失敗すると最悪な状況になってしまうことも踏まえ、ここでは、スタッドボルトの取り外し方に注目してみよう。
目次
スタッドボルトの締め付け部分近くでトルクを掛けるのが理想
エキパイフランジのような短いボルトなら、抜き取り時にボルトがねじれてしまうことが少ないため問題にならないが、長いスタッドボルトでは、ボルト自体がねじれてしまうことがあるため、できる限り締め付け部分近くに工具を掛けてボルトを緩めたい。
スタッドボルトプーラーこそ様々な種類を所有したい
ベテランサンメカやプロメカニックの多くは様々なタイプの工具を所有し使い分けている。このディープソケットのようなこのタイプは、内部の3本ローラーがワンウェイクラッチのようにスタッドボルトに食い込み、ボルトを緩めて抜き取る作りだ
同じスタッドボルトリムーバー(ここではKTC製を利用)を利用しても、スタッドボルトの長さ違いによって使い方が変わる一例。ネジ山に直接ローラーを押し付けて取り外している。新品部品ならダブルナット式で緩むケースもあるが……。
周辺部品の「熱膨張」を利用するのが鉄則
常温でスタッドボルト抜き取り工具をセットし、いきなり作業開始するのではなく、スタッドボルト周辺を工業用ハンドヒーター(ヘアードライヤーのような強烈なヒーター)やガスバーナーを利用して周辺を温めて膨張させることで、ボルトが緩む可能性が高まる。
スタッドボルトを新品に交換してリフレッシュ
スタッドボルトを抜き取ることで邪魔なボルト柱が皆無になり、ガスケット面がフラットになる。ボルトをすべて抜き取ったことで、こびりついたガスケットをスクレパーで剥がし、オイルストーンを利用して、ガスケット面を美しく慣らすこともできる。内燃機加工でシリンダーベースの面研磨を実施する際にも、スタッドボルトの除去後に行われる。
クランクケースやシリンダーヘッドにはスタッドボルトが組み込まれている。シリンダーやシリンダーヘッドは、そのスタッドボルトを介してナットでクランクケースに締め付け固定されている。メンテナンスやチューニングの実践時には、このスタッドボルトを抜き取りたいことが多々ある。
シリンダーを組み込む際には、オイルの漏れ防止を目的に、ベースガスケットが組み込まれ、分解毎にガスケット交換するのが鉄則だ。このベースガスケットが固着すると、なかなか剥がすのが面倒になる。スタッドボルトが邪魔してスクレパーが入りづらく、ガスケットをスムーズに剥がせないことが多いのだ。こんな場面の段取りのひとつに、スタッドボルトをすべて抜き取るというのがある。スタッドボルトが無ければ、スクレパーを使ってスムーズにガスケットを剥がすことができるからだ。
また、エキゾーストフランジを固定するために、シリンダーヘッドの排気ポートにはスタッドボルトが使われているケースが多々ある。このスタッドボルトも繰り返しのマフラー脱着などでネジ山がナメてしまうケースも多い。新品や程度が良いスタッドボルトなら、ナットを2個使って互いに締め付け合い、ボルトを緩める「ダブルナット式」もあるが、なかなか簡単には抜けないのが現実だろう。
そんなときに必要不可欠なのが「スタッドボルトプーラー」とか「スタッドボルトリムーバー」と呼ばれる特殊工具である。ユーザーニーズがあるからこそ、様々な形状やタイプが異なる商品があるが、ベテランメカニックほど、様々なタイプの工具を所有している。
滑り止め加工が施された1本の偏芯棒をスタッドボルトに食い込ませてスタッドボルトを緩める商品。ディープソケットの内部に3本ローラーが組み込まれ、ワンウェイクラッチのようにスタッドボルトをホールドして緩める商品。また、スタッドボルトのネジ山をガッチリクランプして緩める商品もあるが、どのタイプが一番良い、一番使いやすいといった評価は難しく、部品形状や状況に応じて使い分けるのがベストだろう。
ただし、どんなスタッドボルトを抜き取る際にも、その段取りとして、ボルト周辺をしっかり温め、部品を「熱膨張させる」ことは重要であり、忘れてはいけないことだ。熱膨張促進後は、ネジ部に防錆浸透剤を吹き付け、ケミカルのチカラで緩み効果を高める策も、併用するのが良いだろう。
- ポイント1・様々なタイプ形状を状況に応じて使い分けよう。
- ポイント2・周辺を温めて周囲を熱膨張させてから作業に取りかかろう。
- ポイント3・防錆浸透スプレーなどのケミカルを併用しよう。
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