ドライブチェーンはたわみすぎでも張りすぎでもダメで、常に適正なたわみを維持しておくことが重要です。リヤアクスルを後方に引くこと自体は機種を問わず共通していますが、チェーンアジャスターの仕組みや構造によって具体的な工程が異なる場合もあります。またリヤブレーキがドラム式の場合、トルクロッドの取り扱いにも注意が必要です。

機種ごとで異なるチェーンのたわみ量は取扱説明書やコーションラベルで確認する

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チェーンのたわみ量は、サスペンションのストロークやホイールトラベル量に基づいてメーカーで適正値が設定されている。同時に測定位置や測定条件(スタンドはメインかサイドかなど)も指示されているので、取扱説明書などで確認してから測定する。加減速時のトルクによってピンとブッシュの摩耗にムラが生じて偏伸びしていることもあるので、一箇所だけでなく複数箇所で測定すると良い。

 

走行距離が伸びるほどドライブチェーンのたわみ量は増加します。加速と減速を繰り返すことでチェーンのブッシュとリンクをつなぐピンが擦れて摩耗し、ピン間の距離が徐々に広くなる=ピッチが広がるためです。
するとチェーンと噛み合うスプロケットも、ピッチが広がったチェーンのローラーと接触し続けることで谷の部分が削られて摩耗が進行します。
ピッチが広がったドライブチェーンも谷の部分が摩耗したスプロケットも、その原因は金属の摩耗によるものなので、元に戻ることはありません。しかしながら、たわみが増える状況を放置すればダラダラになったチェーンは加減速時に波打つようになり、加減速時のトルクがムチのように伝達されるため摩擦が更に進行するため、バイクが指定するたわみ量を超えたら適切に調整することが必要です。
「バイクが指定する」と断りを入れるのは、チェーンのたわみ量は機種によって実に多種多様だからです。ホイールトラベル量の多いオフロードモデルでは50~60mm(ヤマハYZ250Fの場合)というものもあれば、オンロードモデルでは5~15mm(ヤマハMT-09の場合)という例もあります。
オンロードとオフロードではサスペンションストロークもホイールトラベル量も大きく異なるため、ドライブチェーンの適切なたわみ量が異なるのは誰もが想像できるでしょう。しかし具体的な数値はバイクメーカーが開発時点で設定しているので、取扱説明書や車体のコーションラベルで確認することが重要です。

チェーンアジャスターを引くか押すかでアジャストナット/ボルトの回転方向が異なることがある

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スイングアーム後部から引くタイプのチェーンアジャスター。2個のナットが重なり合って緩み止めとするダブルナット式の場合、先に上側のナットを緩めてから下側のナットを回す。その前にリヤアクスルシャフトのナットを緩めておくこと。

 

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スイングアームに雌ねじがあり、そこにねじ込まれたボルトの頭でアジャスターを押して調整するタイプ。この場合、ボルトを緩め方向に回すとボルトが伸びてアジャスターを押すためリヤアクスルシャフトが後方に動いてチェーンのたわみが減少する。調整後はロックナットをスイングーアームに締め付けて回り止めとする。

 

ドライブチェーンのたわみ量を調整する際は、リヤアクスルシャフトの締め付けを緩めてからチェーンアジャスターでアクスルシャフトを後方に引きますが、チェーンアジャスター部分のタイプによって具体的な作業方法が若干異なります。
各パイプでも丸パイプでも、中空タイプのスイングアームの内部にチェーンアジャスターが収まっている機種や、スイングアーム後端にコの字型のアジャスターが被さっている機種は、スイングアーム後部のアジャストナットまたはボルトを締め方向に回すことでアジャスターが後方に引かれてチェーンのたわみが少なくなります。
一方でアクスルシャフトの前側にアジャストボルトが付く機種の場合、ボルトを緩め方向に回すことでアクスルシャフトが貫通した調整用ブロックが後方に押されてたわみが減少します。
ボルトやナットの回転方向とたわみ量の増減は、頭で考えるより実際に回してみれば一目瞭然で理解できます。ただしメインスタンドやメンテナンススタンドではなく、サイドスタンドでバイクを立てた状態では、リヤタイヤに車重が加わっているためチェーンアジャスターの調整量が反映されづらく、特に作業中に緩め方向(たわみが多くなる方向)にアジャスターを動かすと余計な遊びが生じることもあります。
その場合はドライブチェーンとスプロケットの間にウエスやドライバーの軸などを挟んだ状態でバイクを少し押し歩いて食い込ませることで、アジャスターの遊びを取り除くことができます。
これはメインスタンドやメンテナンススタンドでリヤタイヤを浮かせた状態でも通用するテクニックですが、リヤタイヤを強く回転させるとチェーンやスプロケットにダメージを与える原因にもなるので注意が必要です。

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