もはや絶滅危惧種に認定されている2ストロークエンジンモデル。なかでも2ストスポーツ車になると、旧車ブームの影響を受けて、今では再注目=大人気モデルとなっている例が多い。意外と知られていないのが、ミッション付きスポーツモデルのギヤオイルの存在。そもそも汚れにくいことから、オイル交換せずに走らせ続けているオーナーが実は多い。ここでは、大型2ストロークスポーツモデルのギヤオイル交換を行いながら、各種オイル類の大切さを再認識してみよう。
2ストエンジンのギヤオイルとエンジンオイルの違い
現代のバイク用エンジンはその多くが4ストローク仕様。エンジンオイルは、エンジン内を潤滑する「エンジンオイル1種類」のみ使用している。中には、ハーレーダビッドソンのように、各ユニット(エンジン本体・プライマリー駆動・トランスミッションギヤボックス)が独立レイアウトされていることから、それぞれのユニットに最善のオイルをチョイスし注入している例もあるが(スポーツスター系はエンジンユニットとプライマリーwithトランスミッションギヤなので2種類のオイル仕様)、国産車のような完全なるユニットエンジン(一体型エンジン)の場合は、1種類のエンジンオイルですべての潤滑をまかなっているから、エンジンオイル選びが慎重になってしまうことが多い。一方、絶滅危惧種の2ストロークエンジンの場合は、シリンダーとピストンとクランクシャフトベアリングを潤滑するためのエンジンオイルと、トランスミッションとプライマリー+クラッチユニットを潤滑するためのギヤオイルの2種類を利用している。2ストエンジンのエンジンオイルに求められる要件は、高い潤滑性と燃焼性。ガソリンにエンジンオイルを混ぜて潤滑するため(分離潤滑方式の場合はオイルポンプが規定量のエンジンオイルを吸入混合気に混ぜる。60年代前半以前の2スト車の場合は、スポーツモデルでも実用ビジネスモデルでも、ガソリン給油時にエンジンオイルをガソリンタンクへ注入する、混合ガソリン仕様を採用していた)、爆発燃焼と同時にしっかり燃えて、燃え残しのカーボンスラッジどを排出&マフラー内も汚さないのが、高性能2ストエンジンオイルの証だった。その一方で、クラッチやミッションギヤを潤滑するのがギヤオイル。「入っていれば大丈夫だよ!!」とは、昔のライダーの合言葉!? だったが、決してそうではなく、しっかりオイル交換してこそ、クラッチやミッションのコンディションを保つ上で、極めて重要なのは言うまでもない。
作業環境を汚さずにきれいにオイル交換実践
4ストロークエンジンのドレンボルトと違い、2ストロークエンジンのドレンボルトは抜き取りにくく、レンチを掛けにくい箇所にレイアウトされているケースが多々ある。オイル交換すると、エンジン周りや作業場を汚してしまうから面倒……では本末転倒だ。ギヤオイルを交換する際には、ドレンボルト周辺の汚れをパーツクリーナーやウエスで拭き取り、例えばめくり取った後のカレンダー紙などをガイドにしてギヤオイルを抜き取るのが良いだろう。もちろん4ストロークエンジンのように、勢いよく大量に出る場合も、オイル避けのガイドを取り付けるのが良い。「急がば回れ」とはまさにこのことだ。具体例では、ヤマハSRのエンジンオイルは、ドライサンプシステムのためオイルタンクがフレームのダウンチューブとなっている。ドレンボルトはフレームパイプ前方に締め付けられているが、なにも考えずに緩めて抜き取ってしまうと、飛び出したエンジンオイルで前タイヤはオイルまみれになってしまうことがある。そんな際にもガイドが良い仕事をしてくれるのだ。
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