大きくて重い4気筒と違って、両手で抱えて持ち運べる原付クラスのエンジンは、バイクいじりを学ぶための格好の題材です。フレームから外したエンジンは不安定でボルトを緩める際も力を加えづらいのが難点ですが、エンジンを固定できるスタンドがあればそんな悩みも一気に解消します。ここではエンジンいじりの題材として長年に渡って愛されている、ホンダ横型エンジンを題材としてエンジンスタンドの効能を紹介します。
エンジンいじりを学ぶのに最適なホンダ横型エンジン
1958年に登場した初代スーパーカブに搭載されて以降、ホンダを代表するエンジンであり続けているのが、シリンダーが大きく前傾しているのが特長で俗に「横型」と呼ばれている形式の4ストロークエンジンです。
スーパーカブをはじめモンキー、ダックス、シャリィなど歴代の原付モデルに搭載されてきた横型エンジンは、当初はOHVだった弁機構がOHCとなり、キャブレターだった吸気系がフューエルインジェクションとなり、半世紀以上に渡って基本構造を大きく変えることなく製造され続けたことが大きな特長です。
構造がシンプルでタフな横型エンジンはまた、ボアアップやカムシャフト交換を初めとしたカスタムやチューニングの素材として多くのファンに愛されてきました。1000ccで200馬力のバイクが210馬力になったとしても、その違いを体感できる場所や条件は限られますが、50cc 5馬力のエンジンがボアアップで簡単に10馬力になった時の変貌ぶりは明らかで、パーツコンストラクターやチューニングメーカーがこぞって横型向けのカスタムパーツをリリースしてきたという歴史もあります。
軽いエンジンだから単体でゴロゴロ転がりがち
重い4気筒エンジンの場合、フレームから取り外したり搭載する作業が大きなハードルになりますが、ホンダ横型は簡単に着脱できるのも魅力です。スーパーカブもモンキーも、エンジンはフレームにぶら下がるように搭載されているので、マフラーやキャブレターや電装系のカプラーを取り外して2本のハンガーボルトを抜くだけで単体にできます。
そしてエンジン単体になれば、シリンダーヘッド周りもクラッチ周りの整備やカスタムも車載状態より容易にできるようになります。
ただし単体になったエンジンは、車体に搭載されていた時よりも不安定でビスやボルトを回す際に力を加えづらいという欠点もあります。大きくて重たい4気筒エンジンはフレームへの積み下ろしが大変な分、単体で鎮座するエンジンのボルトナットを緩める際に力を加えてもビクともしない安定感があります。しかし軽い横型はエンジンは、工具を介して押せばエンジン自体が動いてしまうことも少なくありません。
途中でフランジボルトに切り替わりましたが、かつてクラッチカバーを固定するビスは十字頭のパンスクリューで、回す際にはカムアウトを防ぐためドライバーを押しつけなくてはなりませんでした。しかし作業台の上に直接置いたエンジンに付いたビスを押せば、エンジンが滑って後退するため力が加わりません。
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