
現在レストア中のCBR1000F(SC21)のエンジンのリフレッシュ報告の後編です。
前編ではエンジンブロックの研磨を中心に綺麗にしてきたのですが、センサー類や電装系の部品のハーネスのゴムなどが劣化しているため印象が悪いことと、一部の部品は塗装をしないと、すぐに錆びてしまうことがわかってきたため、エンジンに装着されている部品の塗装や補修を細かく行い、トータルの印象をよくすることに挑戦してみました。
今回も初めての作業が多く、結構失敗していますのでそのあたりも含めてご報告していきます。
目次
エンジンヘッドの絞り塗装
VFR800でも挑戦していたのですが、CBRのエンジンヘッドにも赤い絞り塗装を施します。
カバーの中をのぞいた時に、しっかり手入れをしてあげた証のようなもので、完全に趣味の領域です。
絞り塗装用の塗料は結構透けるのでアルミのヘッドの黒い部分を目立たなくしてからマスキング、脱脂をして吊り下げ用の針金を仕込んでから専用の塗料を何回かに分けて塗ります。

エンジンヘッドカバー塗装中
少し乾燥させてから簡易オーブンに吊り下げて80℃で約1時間ほど焼き付けます。
今回から赤外線ヒーターを導入して加熱効率を上げてみました。加熱すると塗料にしわが寄って固まります。

エンジンヘッドカバー焼付中
かなり厚めに塗らないとしわにならないので今回も普通に厚塗りをしたのですが、吊り下げで乾燥させてしまった結果塗料の厚みに偏りが出てしまい……よく見るとちょっと残念な仕上がりになってしまいました。
形状が複雑でしわもあり、ぱっと見は悪くないのと、普段は見えない……ということで、DIYならではの“味”にすることにしました。

エンジンヘッドカバー焼付後
オイルパン、クラッチカバー、冷却水パイプの洗浄、塗装
ヘッドカバー以外にも面積が大きく汚れが目立ちやすいオイルパン、クラッチカバー、冷却水パイプはガンコートで塗装します。
オイルパンとクラッチカバーの外側は金属ブラシで研磨したのち内側はソーダブラストをかけています。
その後ガンコート塗装を施し、温度調節機能付きトースターで焼き付けています。

塗装後のクラッチカバー
冷却パイプは穴が開いてしまっていた上に廃番、国内では部品が見つからなかったので初めての海外のオークションに挑戦。幸い(?)不人気で小さな部品でしたので安価に入手ができて助かりました。
届いた部品はサンドブラストでできるだけ錆を落としガンコート塗装を施しました。

朽ちて使えなかったパイプと塗装まで行った中古のパイプ
オイルパンガスケットの制作
今回オイルパンガスケットが廃番になっていることがわかっていたので、廃番ガスケットを制作してくれるお店に依頼をするか、オイルパンは外さずに済ますか悩みました。
ガスケットは今後も必要となるので自作できるようになることも必要かも……と考え20年前から欲しかったフィルムカッターをネットオークションで入手。
汎用のガスケットシートから切り出すことに挑戦しました。

型紙の切り出し
手順的にはガスケット接着面を写し取った紙を切り出し、フィルムカッターでスキャン。

スキャンして修正中
取り込んだ画像をパソコンで微修正し、切り出し用のデータとします。貼りなおし可能な両面テープで専用の台紙に貼り付けた汎用ガスケットシートを深めの刃先設定でカット……したのですが、刃先の設定が甘かったせいか切れておらず……結局アートナイフと6mmポンチで切り抜きました。
(ほとんどフィルムカッターが切ってくれていましたので圧倒的に楽だったとは思います。)

汎用ガスケットシートをカット中
オイルパンのガスケット取付部の面を砥石で研ぎ、液体ガスケットと組み合わせて装着。
ボルトを規定トルクで締めれば一旦完了です。多少失敗はしましたが、これで様々なガスケットやステッカーを自作できるようになりましたので今後が楽しみです。

オイルパン装着
エンジンには様々なセンサーやスイッチ類がつながっており、そのケーブルがくたびれているとせっかく綺麗にしたエンジンがもったいない……またゴムパーツが劣化して水が入るのもよくないため可能な限り保護カバーを作り直すことにしました。
くたびれているハーネス類
とはいえ、たいていの部品はコネクタがつながっているため適切なサイズの熱圧縮チューブで保護するために、一度配線を切ってチューブをセットしてからはんだを行う……という……治しているのか?壊しているのか?わからない方法でリフレッシュを行いました。 綺麗になったハーネス類
CBR1000F(SC21)の発電装置はエンジン内に組み込まれたジェネレーターではなく、車についているような普通のオルタネーターが使われています。
研磨前のオルタネーター
比較的目立つ部品なので塗ったらかっこよいのでは?と考えて80℃焼き付け可能にするプライマーを混ぜたガンコート塗装を行ないました。 ガンコート塗装が剥げてしまったオルタネーター
その後、鉄の部品のところだけを亜鉛メッキ塗料を塗って錆を防ぐようにしました。
鉄の部分を亜鉛メッキ塗装したオルタネーター
ガンコートは焼き付け時の温度管理が大事なことを再確認した一件でした。
ガレージにおいてあるだけでため息が出るほどくたびれていたエンジン。一応機関部分はひどくないことを確認したのちに、洗って、磨いて、研いで、塗って、焼いて、切って、つないで……。 作業後エンジン
すぐに汚れたり錆たり剥げたり……しそうな気もしますが、それはそれで経験値UPにつながります。 次回はこのバイクが不動になってしまった原因だと思っている冷却系の再生です。
金属研磨環境一式 汎用ガスケットシート
(毎回申し訳ございませんが完全自己責任です。新しいバイクの信号線やETCのアンテナなどは切って接続をし直すことで本来の性能が発揮できなくなることもありますのでご注意ください。)
今回は熱圧縮チューブのほかに編み上げ型のナイロン保護チューブも使用しています。
オルタネーターリフレッシュ
しかしながら……2週間程度で塗装が浮いてきてしまい失敗……エンジンに装着したまま焼き付けたので、熱が逃げてしまっていたようです……。
エンジンリフレッシュ作業まとめ
初めての作業ばかりで悪戦苦闘。有識者の方から見たらもっと良い方法があるよ……と突っ込まれそうな作業の数々ではありましたが、できるだけお金をかけずに、DIYで綺麗にしてみました。
ピカピカな仕上がりにはしませんでしたが、個人的には大満足の仕上がりになりました。
20年前だったら絶対あきらめていたような作業も、今はWEBにたくさんの情報があり、中古の部品があり、何でも買える通販があるおかげで、何とか進めることができました。
まだまだやることは山済みなのですが、コツコツ続ければいつかは完成する……と信じてこの後も作業を続けていきたいと思います。使用した工具、備品
サンドブラスト一式
ウェットブラスト一式
ガンコート一式
簡易オーブン
赤外線ヒーター
温度調整機能付きトースター(※編集部注:キッチン用)
工作用紙
フィルムカッター(ブラザー スキャンカット)
PC
アートナイフ
6mmポンチ
ハンマー
砥石
トルクレンチ
ヒートガン
はんだ付け環境一式
電工ペンチ
液体ガスケット
絞り塗装スプレー(赤)
亜鉛メッキスプレー
熱圧縮チューブ
伸縮性ナイロン保護チューブ
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