旧車や絶版車の「バイクらしさ」の演出に一役買っているのがクロームメッキです。クロームメッキは金属の重厚感をアピールするのに最適な表面処理ですが、手入れ次第ではサビが発生することもあります。根治には再メッキしかありませんが、軽度な点サビなら目立たなくすることもできます。そこで役立つのがキッチン用品としても馴染み深いスチールウールです。

装飾クロームメッキの中には想像以上に錆びやすい物もある

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クロームメッキ仕上げのリムとユニクロメッキ仕上げのスポークではサビの出方が異なる。50年以上昔のパーツだと思えば充分以上の状態だが、ずっと屋内保管を継続していればもっとサビが少なくコンディション良く保つことも可能。塗装にとってもメッキにとっても、水分や湿気は大敵だ。

 

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屋外保管によってリムとタイヤの隙間から雨水などが浸透して、リムの裏側が錆びることもある。リムバンドやチューブにサビが食い込んで接着したかのように一体化したり、裏側から進行したサビでリム自体に穴が開いてしまうこともある。

 

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裏側のサビは防錆潤滑剤をスプレーしながら真鍮製のワイヤーブラシでこすり落とす。サビの上から直接塗ることができるBAN-ZI製サビキラープロで塗装すれば、今後のサビを予防できるので効果的。

 

クロームメッキには塗装やバフ研磨とは異なる光沢と重厚感があり、絶版車や旧車らしさを演出する魅力となっています。クロームメッキには脱脂溶剤やクロム化合物、シアン化合物など環境汚染につながる物質を使用するため、世界的にはクロームメッキによる表面処理は縮小される傾向にあります。
塗装より硬度が高く耐摩耗性に優れ独特の光沢があるクロームメッキには、もちろん防錆処理としての役割もあります。ベースとなる金属パーツにニッケルメッキ、クロームメッキと二層の金属被膜(場合によっては最下地に銅メッキを施して三層被膜となることもあります)を形成することで、防錆能力はさぞかし高くなると思われがちですがそうともいえないのが現実です。

古いクロームメッキパーツにポツポツと赤い点サビが発生しているものを見ることがありますが、クロームメッキには想像以上に錆びやすいというウィークポイントがあるのです。その理由はマイクロメートル単位のピンホールです。肉眼では均一に見えるクロームメッキ表面には、実はきわめて小さな穴やクラックが無数に存在しています。
クローム自体が腐食することはありませんが、水分や湿気がこの穴から入ってクローム層の下に到達するとサビが発生します。このサビが成長してクローム層を突き破って表面に出てきたのが点サビとなるのです。

クロームメッキは相対的に厚いニッケルメッキの上に、極薄くクロームメッキを重ねています。メッキの厚みはまちまちですが、装飾メッキの一例として5~50㎛になるニッケルメッキに対して、クロームメッキは0.1~0.5㎛と圧倒的な差があります。
フロントフォークのインナーチューブやブレーキキャリパーピストン表面に施される硬質クロームメッキは、クローム被膜が1~50㎛と厚いためクラックや穴があっても水分が通過しづらく、結果として装飾クロームメッキに比べてサビが発生しづらいという特長があります。
しかしながらインナーチューブにも点サビが発生することがあるように、長期間にわたって水分が触れ続けることで穴の内部に浸透することは避けられません。

メッキのサビはクローム層の下で成長するので発生後の除去は不可能

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リム表面のサビは、クロームメッキ表面に存在する顕微鏡レベルの極小の穴やクラックから浸入した水分が原因となって発生する。したがって、メッキ表面に点サビが確認できた段階でその部分のメッキ被膜は破れており、完全に元の状態まで戻すことはできない。こうなる前の手入れが重要だが、ここからでも状況を改善できる可能性はある。

 

アルミキャストホイールの切削仕上げ部分が白く腐食した場合、アルミ研磨用のコンパウンドやケミカルで磨くことで回復することが可能です。しかしクロームメッキのサビは、先の通り地中に埋めた植物の種が成長して地表に出てくるように、クローム層の下から発生するため磨いて除去することはできません。
これは塗装の下でサビが進行して塗膜が浮き上がってしまうのと同様で、完全に修復するにはメッキを剥離して下地からやり直すしかありません。その場合、めっき専門業者の手でクローム、ニッケルメッキを剥離して、金属素材表面を露出させてサビ取りを行い、再びニッケルメッキ、クロームメッキを行います。ペイントショップに再塗装を依頼すると相応のコストが掛かるのと同様に、再メッキにも費用がかかります。
冒頭で触れたとおり、クロームメッキの市場自体が縮小している現状では再メッキを行う業者も少なくなっており、また再生メッキは素材のコンディションによって手間が大幅に異なり、素材の程度によって仕上がり状態も左右されるため敬遠されがちな傾向にあるようです。

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