カスタム前にチェック。高級なリヤショックを装着する前にスイングアームピボットを見直そう
GPz400F/F2
5,300
0
2
共有
リンクをコピー
X
Facebook
保存
前後のサスペンションがしっかり仕事をすると、乗り心地は良くなるしコーナリングもスムーズになるし良いことばかりです。リヤサスペンションのモディファイの近道はショックユニット交換ですが、リヤショックの作動性を左右するのがスイングアームピボットやリンク可動部の潤滑状況です。リヤショックを取り外してスイングアームをストロークさせて、動きの渋さやガタを感じたらメンテナンスが必要です。
スイングアームピボットのフリクションがリヤショックの仕事の邪魔をする
スイングアームピボットは規定トルクで締め付けた状態でスムーズにストロークすることが重要。トルクを上げていくと動きが悪くなる場合は、ピボット部分のブッシュとスイングアーム内部のスペーサーの摩耗が原因となっている場合がある。
メンテ不足によってスイングアームピボットシャフトとスイングアーム内のスペーサーが錆び付いてしまうと、ナットを外しても簡単に抜けなくなる。シャフト端部の雄ネジが潰れるとナットが締まらなくなるので、ネジを傷めない木片などを介してハンマーで叩く。
スイングアームを取り外したらピボット部分のスペーサーがスムーズに回転するか、引き抜くことができるかを確認する。
フロントフォークに比べてアッセンブリー交換が容易なリヤショックは、カスタムやモディファイで注目されがちなパーツです。純正部品でもスーパースポーツモデル用はプリロード調整はもちろん、伸び側や圧側の減衰力調整も可能なことも多いですが、調整機能を持たない機種や旧車、絶版車では高性能ショックに交換するだけで乗り心地や走行性能の変化が実感できるのも魅力のひとつです。
スポーティなリヤショックというと、硬いスプリングを使用したコシの強い乗り心地を想像しがちですが、実は小さな路面変化やショックにもリニアに反応する動きだしの良さも重要です。サスペンションに加わる荷重に対するリヤショックのストロークは直線的であるのが理想ですが、これが階段状だと一定の荷重まではサスが動かず、それを超えると突然ストロークするような動きになり、乗り心地は悪く車体の挙動も不安定になります。
サスペンションが荷重に対してスムーズに動くか否かは、リヤショックの性能もさることながら、スイングアームピボットやリンクの潤滑状態に掛かっています。
車重＋ライダーの体重によって、グリスが乾ききった状態でもスイングアームはストロークします。しかしこれではリヤショックを高性能品に交換しても、ピボットやリンクがグリス切れでガチガチだったとしたら性能は発揮できません。
ピボットがブッシュでもベアリングでも清掃とグリスアップは必須
スイングアームピボットにベアリングやブッシュが圧入されて画像のスペーサーが貫通し、スペーサーの内部をピボットシャフトが貫通する。スペーサーとベアリングやブッシュが接するのは両端部分だけだが、中間部分がサビで太るとスペーサーやベアリングに引っかかって抜けなくなることがある。組み立て時は両端だけでなく、防錆目的で中間部分にもグリスを塗布しておく。
画像のピボットはニードルローラーベアリング仕様で、メンテナンス時は古いグリスを洗浄してから新しいグリスを塗布することが重要。
ベアリングと接するスペーサーにもグリスを塗布する。強い力が加わる部分なので、極圧性が高いスーパーゾイルグリースや二硫化モリブデングリスが適している。
２本ショックでもモノショックでも、ショックを取り外した状態でスイングアームをストロークさせれば、ピボットやリンクのコンディションはすぐに分かります。センタースタンドを掛けるかエンジン下をジャッキで支えてリヤタイヤを取り外し、リヤショックを取り外した時に、潤滑状態が正常ならスイングアームは自重でストンと垂れ下がるはずです。
動きが渋かったり、下がる気配もないようならピボットやリンクはかなり重症です。ただし原付バイクの中にはスイングアームピボットにゴムブッシュが圧入されている機種もあり、その場合はピボットシャフトの締め付けトルクによってゴムのねじれによって動きの悪さをを感じることもあります。
スイングアームの動きが渋い時は、ピボットシャフトを引き抜いてベアリングまたはブッシュを清掃してグリスアップを行います。この時、ベアリングと接するブッシュやスリーブがスムーズに回るか、ブッシュやピボットシャフトの接触部分に偏摩耗がないかを確認します。
スイングアームの揺動（ストローク範囲）は限定的なので、潤滑不足であってもブッシュやピボットシャフトが全周にわたって摩耗することはありません。その代わり、車重を支える部分なので限られた範囲がえぐられるように摩耗することがあり、場合によってはブッシュ表面の硬質クロームメッキが摩滅することもあります。そのようは場合は新品部品に交換するのが大原則ですが、絶版車など部品の入手が難しい場合は組み込む位置や接触部分を変更することで状況を改善できることもあります。
