
何年も動かしていない不動車ならまだしも、僅か数か月間、乗っていなかっただけなのに、エンジンの始動性が低下し、アイドリングが安定しないことがある。そんなときに疑うべきは、ほぼ間違いなくキャブレターやインジェクションシステムだが、ここでは軽度な不調を想定したケア手順を紐解いていこう。
スプレーケミカルの使い方あれこれ
キャブレターの汚れには、見た目でわかる外側の汚れと、見た目ではわからない内側の汚れがある。外が汚いから中も同じように汚いとは限らず、その逆も、もちろんある。キャブ内部の汚れ=通路が詰まっているケースでも、軽症ならここで紹介するようなスプレーケミカルによる改善方法がある。例えば、インレットパイプを取り外して、キャブのインテイク側からスプレーを吹き付けよう。その際は、スロットルを閉じてスロットルバルブにひと吹き、スロットルを全開にしてメイン通路内にひと吹き、そして、キャプの吸い込み口付近の下側にある孔通路(メインエアー通路とパイロット通路)に、スプレーノズルを取り付けて吹き込もう。
数分待ってから、キーをONにして通常のエンジン始動を試みてみよう。いわゆる「初爆」が無い場合は、スロットル全開を保って、引火性が高いスプレー式のパーツクリーナーをベンチュリ=メイン通路内に軽く吹き付け、スロットルを閉じて再びキックしてみよう。パーツクリーナーによる初爆で吸入負圧が生まれ、エンジン始動のきっかけをつかむことができるケースもある。タンク内のガソリンは信用せず、フレッシュなガソリンをオイラーに入れて、そこからキャブへガソリンを流し込みエンジン始動にトライするのも良いだろう。必ずしもタンク内のガソリンコンディションが良いとは限らないからだ。
キャブ内のガソリンは抜いたとしても、ガソリンタンク内の残ガスはなかなか抜り切れないもの。そんなときに素晴らしい働きをしてくれるのが、デイトナから発売されている「ガソリン劣化防止剤だ。我々スタッフが利用したところ、一年程度の放置ならガソリンは腐ることが無く、しかも普通にエンジン始動でき走ることができた。高性能ケミカルに頼るのも一考だが、長期保管時時にはタンク内のガソリンをすべて抜き取り乾燥させるのが良い。
意外と多いスターター固着による始動不良
2スト、4ストエンジンを問わず使われているのがスターター機能。吸入エアーをメイン通路の入口に設けたバタフライバルブの開閉で行う「チョーク」に対して、エンジン始動時のみ大量のガソリンを吸い込ませるのが「スターター」機能。それがチョークとスターターの違いだ。ここでは、スターターバルブ周辺のコンディションに注目してみた。完全冷間エンジンの場合は、夏場でもスターター機能が無いと始動性は良くない。
このスターターバルブが汚れたり、残ガスが劣化してスターターバルブの作動性を悪くしているケースも実は多い。スターターレバーを引いても動かない場合や、動きが重い場合は、スターターバルブの固定を緩めてバルブを抜き取り、バルブ本体やキャブ側スターターバルブホルダーケミカルスプレーを利用してクリーニングしてみよう。スターターバルブが固着していることが原因で、始動性が著しく低下しているケースも実は多い。
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