
ステアリングヘッドパイプと呼ばれる「ステアリングの要」には、ハンドルをスムーズに動かすためのベアリングが組み込まれている。旧車に多いのが、何個ものスチールボールを規則正しく並べて組み込む、通称、コーンレースタイプ。70年代末にはテーパーローラーベアリングのアウターレースをフレーム側ヘッドパイプへ組み込むタイプが登場。旧車と同じタイプながら、スチールポールがバラバラにならず、ケージと呼ばれるワクに組み込まれて一体化されているタイプもある。時代時代の設計思想で、数種類の中からベアリングがチョイスされ、組み込まれてきた歴史がある。このベアリングがダメージを受けると、ステアリング操作がままならない状況になり、例えば、直進走行中に前輪がわだちを乗り越えると、ハンドルが突然取られるなどの体感を受けるようなこともある。ステアリング操作に違和感があるときには、このステムベアリングの作動性を必ず確認するように心掛けよう。
滅多に分解しないから最悪の状態に……
何十年も乗り続けられ、クタクタになったモデルのメンテナンスを実践した際に、預かったバイクを押し歩きすると違和感があった。ステアリング操作感が変なので、ステアリングヘッドパイプ周辺を分解したところ、肝心のベアリングは無残な状況になっていた。ノーメンテナンスで乗り続けると、まさに「こうなってしまう!!」といった典型だろう。スチールボールにはグリスの潤いが無く、もはや苔むしたかのような状況だ。このバイクの場合は、迷うことなく上下アウターとインナーのボールレース、すべてのスチールボールを新品部品に交換した。ステアリング操作時の引っ掛かり感覚は、アウターレースに刻まれたスチールボールの打痕からも理解することができる。この打痕が引っ掛かり感覚を生むのだ。
タガネとハンマーで叩いて抜くことも
フレーム側アウターレースもステムパイプに圧入されたインナーレースも、スチールパイプやタガネを利用することで叩き抜くことができる。しかし、各パーツを抜き取る際には共通した注意点がある。それは、一か所ばかり叩いて部品を傾かせないこと。平均的かつ平行に抜き取るように気を配りつつ作業進行しよう。失敗すると、部品が抜けなくなり、ベアリングホルダーにダメージを与えるなど、最悪の結果を招いてしまうケースもある。本来ならメーカー純正特殊工具で脱着するように指示されているが、自己責任に於いて上記のような方法で作業進行した。
ステムベアリングはグリスが命
現代のモデルにはゴミの侵入を防ぐダストカバーやダストシールが組み込まれているが、旧車の多くにそのような部品は無く、あったとしてもステムシャフトの下側にゴムワッシャー状のカバーが取り付けられる程度だった。新品アウターレースを組み込む際には寸法が一致したベアリングドライバーや叩き金を利用し、アウターレースが平均的にホルダー側の奥まで圧入されていることを確認しよう。スチールボールを並べる際には、上側はフレーム側のアウターレース、下側はステムシャフト側のインナーレースにグリスを盛り付け、そのグリスにスチールボールを接着するように必要個数を並べよう。
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