硬すぎないメディアがめっき部品の表面サビの除去に適した重曹ブラスト

ホース先端のノズルのレバーによって、ドライブラストとウェットブラストを任意に使い分けできる。ドライブラストでは重曹の粉じんが舞うため、ウェットブラスト仕様の方が周囲に気兼ねすることなく作業できる。水道水は通常の水流だが、タンクのエアー圧によって圧力が高まった状態で噴射される。もちろんここに重曹メディアも混ざっている。

 

純粋な研削力に注目した場合、重曹メディアはアルミナやガラス系メディアに対して硬度が低いです。メディアの硬度を示す単位であるモース硬度を比較すると、アルミナが12程度、ガラスビーズが6.5程度に対して重曹は2.5程度なので、その差は明らかです。
したがって、塗装の剥離やサビの除去を重曹ブラストで行う場合、塗膜の厚さやサビの深さによっては充分な効果が得られない懸念があります。コンプレッサーのエアー圧を上げて噴射力を高めても、そもそもメディア自体の硬度が低いので致し方ありません。

 

しかしながら、重曹ブラストは作業目的を変えることで大きな効果を発揮します。顕著な例がめっきの清掃やサビ取りで、ウェット状態で施工することでめっき自体に傷を付けることなく汚れや表面の点サビをきれいに取り除くことができます(サビの程度によります)。
また重曹自体が弱アルカリ性の性質を持つため、施工後はアルカリ被膜によって防錆効果を得られるのも、サビ取り作業に用いる際の利点となります。

水溶性の重曹メディアはエンジン内部パーツのクリーニングに最適

重曹の研削力によってカーボンやオイル汚れを除去しつつ、素材には傷を付けず洗浄できるのが重曹ブラストの特徴。バルブガイドやバルブシートに当てても悪影響はないので、吸排気ポートのクリーニングにも有効だ。

 

カーボンリムーバーとワイヤーブラシを使ったクリーニングでは、バルブシートリングやバルブガイドとヘッドの圧入部分の境界に付着したカーボンが取り切れない場合もあるが、エアー圧でメディアをぶつける重曹ブラストは細かい隙間部分の汚れまできれいに除去できるの。ワイヤーブラシで擦った時に残りがちなスクラッチがまったく残らないのも気分が良い。

 

不溶性メディアでブラストすると、相当念入りに洗浄したつもりでもザラついた感触が残り続けることもあるが、重曹メディアは水洗いだけで溶解して流れるのでエンジン内部を傷つける心配がないのが大きな利点となる。

 

重曹ブラストがその特性を最も発揮できるシーンとして注目されているのが、エンジンのオーバーホールやカスタム、チューニングを行う際のパーツ洗浄です。
カーボンやオイルで汚れたエンジン内部はアルカリ性の洗浄液で洗うのが一般的ですが、燃焼室にこびり付いたカーボン汚れやクランクケース内面のオイルはブラシを使ってもなかなかきれいに落ちません。特に燃焼室やバルブに付着したカーボンは、真鍮製のワイヤーブラシではきれいに落ちず、硬いスチール製ブラシでは燃焼室表面やバルブシートを傷つけてしまう懸念もあります。
ドライブラストやウェットブラストでアルミナやガラスビーズを使用することで汚れ落としが可能ですが、エンジン内部に残ったメディアの除去を徹底的に行わなくてはなりません。エアーブローを何度繰り返してもサラサラとメディアがこぼれてきたり、部品の向きを変えながら超音波洗浄機をかけても、これで絶対安心と断言できない不安感が残りがちです。

重曹ブラストは硬い塗膜やサビを剥離するには硬度不足ですが、カーボンやオイル汚れの除去には充分な硬度があります。なにより水やお湯で溶解してメディアが残留しないため、エンジン内部を傷つけるリスクがなく、それゆえマスキング不要で燃焼室やカムホルダー、クランクケース内部やオイルラインに噴射できます。

 

サンドブラストやウェットブラスの経験があるユーザーほど、マスキングなしでシリンダーヘッド丸ごと重曹ブラストを当てている光景に衝撃を受けるでしょうが、これが重曹ブラスト最大のメリットといっても過言ではありません。
水道水と重曹メディアをミックスして吹き付けると、重曹の粒子が燃焼室のカーボンを叩きながら取り除き水道水で洗い流すことで、シリンダーヘッドのアルミ素材や吸排気バルブのバルブフェイスやバルブステム、バルブガイド内面に傷を付けることなく表面の汚れを取り除くことができます。
噴射直後はパーツ表面に重曹のザラツキが残りますが、水を掛け続けることで重曹は溶解してしまいます。水ではなくお湯で洗浄すればさらに迅速に溶解します。

 

キャビネットが必要なサンドブラストやウェットブラストに対して、水で溶解する重曹ブラストは露天で使用できるため施工物のサイズに制限がありません。重曹ブラストを快適に使用するには大馬力のコンプレッサーが必要になるなど、環境を整えるために相応のコストが掛かるため誰もが気軽に導入できるとは限りません。しかし重曹を研磨材とすることでデリケートな素材の洗浄やサビ取りを気兼ねなくできるようになることを知っておくと良いでしょう。

 

POINT

  • ポイント1・重曹を研磨材として使用する重曹ブラストは、サンドブラストやウェットブラスト用の研磨材と比較して硬度が低いため研削力は劣るが、素材を傷つけず洗浄できる利点がある
  • ポイント2・重曹は水溶性のためブラスト後のメディア除去が容易で、エンジン内部のクリーニングにも安心して使用できる

ブラストマシンを使ったメンテナンス

この記事にいいねする

今回紹介した製品はこちら

コメントを残す

今回紹介したブランドはこちら